2021年12月15日水曜日

“駅前ねぐら”ではないムクドリのねぐら・2 東京・池袋西口公園の事例+ウグイスも都市鳥化?

  

   夕方の「池袋西口公園」はけっこう薄暗く、帰りを急ぐ通勤客が通り抜けていました。イベントが予定されていないためか名物の大型ビジョンなどは点灯されず、観光客もいないようで、静かに暗くなっていきました。池袋駅西口ですので“駅前”ですが、これまでとはあまりにも違う状況なのでこのタイトルで紹介します。 

12月1日の夕方、研究部に所属する川内桂子さんが買い物を終えた1640分ごろ、西口五差路の交差点で、近くの「住友不動産 池袋西口ビル」などの屋上のアンテナをムクドリの群れが点々と飛び交っているのを発見。その情報をもとに、翌2日に調べに行き、16時半前からムクドリの群れを探し、池袋駅周辺を一周して、1642分に西口公園に着いたとき、バス停前のクスノキの大木からムクドリの群れの声が聞こえてきました。五差路交差点からは50mのところです。声のボリュームからすると100羽前後と思われましたが常緑樹なので、その姿は確認できませんでした。

そこで、125日に再挑戦したところ、1649分に近くのビルの屋上に止まっていた100羽以上の群れが、一斉にクスノキに入り、しばし鳴き騒いでいました。【写真】 しかし、5分後にはその声は小さくなり、周辺の車の騒音で聞こえなくなり、付近はなにもなかったような状態になりました。公園内は通勤客とバスを待つ人が並んでいるくらいで人出はありませんでした。

 群れが小さいこと、木の下はバスや車が通る道路ということもあってか、ムクドリたちはすぐに落ち着いたようです。ねぐらの木は常緑樹なので冬を通してねぐらをとる可能性があり、今後も見続ける予定です。 

ところで、このクスノキの周辺では2回の調査の際、ウグイス2羽の地鳴きがずっと聞こえていました。“ウグイスも都市鳥化?”こんなところでねぐらをとるのだろうか興味あるところです。                                                                                      〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年11月27日土曜日

“駅前ねぐら”でないムクドリのねぐら・ 東京都江戸川区の事例

  


   駅前や繁華な場所に集まる「ムクドリのねぐら」は、全国各地で迷惑がられています。そんな環境でない“街のムクドリのねぐら”を東京圏で探していますが、最近、江戸川区清新町で見つけました。東京メトロ東西線・西葛西駅から徒歩圏内で、高層マンションが建ち並ぶ住宅街です。 

11251625分、2回目の調査で西葛西駅南口に降り立つと、ムクドリの大群はここ2年ばかり来ていないのに、クスノキの大木に取り付けられた対策用の機器が、彼らの嫌うという電子音を鳴らし続けていました。駅前から幹線道路を越え、住宅街に入り、スーパー・マルエツの前を通り過ぎると、目指す高圧鉄塔の上には、すでに多数のムクドリが集まっていました。1635分、照度計は190ルクスと表示し、100羽、50羽の群れが飛んできて終結は終わり、薄暗くなった中で、ムクドリたちは鳴き騒ぎ、オナガの群れが飛び交っていました。そして照度計が30ルクスを示した1650分、ムクドリの大群は次々と斜め下の森へ降りていきました。【写真上】 全体が移動する時間は3分ほどで、数は目算で1000羽を超えていました。前回117日の調査の時は1657分、40ルクスで降りはじめ、数は1000羽以下でしたので、すこし増えたようでした。7日の日没は1641分、25日が1630分と早まっていますので、ねぐら入りもそれに連動しているようです。 

彼らのねぐらは交差点わきの樹高10mのクスノキが数10本林立する緑地。樹冠からは鳴き騒ぐ声が響いていました。【写真下】 隣接する10階建てのマンションの住民には迷惑がられていると思いますが、駅前などの繁華な場所と違うのは、鳴き騒ぐ時間で、降り立って15分後の175分には、ときどきギュルルという声が聞こえるような静けさとなりました。繁華な場所との違いは糞の問題も解消。生い茂る木々の下には歩道がなく、常緑広葉樹の葉に受け止められるためか、林床にはほとんど糞跡が見られませんでした。これらのパターンは2回の調査とも同じで、これならば我慢できるのではと思いました。 

「西葛西駅前のムクドリ」の話題は、このブログの2018226日付と20201128日付でアップしています。その概略は「3000羽以上が駅前でねぐらを取っている・そのムクドリがここのところ見かけない」ということを紹介しています。清新町のムクドリはそのムクドリの一部が新しいねぐらを見つけて移動したのかと、興味を持って調べているところです。                                               〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年10月31日日曜日

フラッグ付きのミヤコドリのゆくえ!「T6」の無事を祈る

  


  カムチャツカ半島で生まれ、脚にナンバーT6と記された足環をつけたミヤコドリが、東京湾の三番瀬(千葉県船橋市)で2019925日に発見されたことは、当ブログの同年1024日付けで紹介しました。2日後の927日には、同じ場所でいっしょに装着されたT7が伊勢湾の安濃川河口(三重県津市)で発見されています。この2羽の動きは追跡され、その年の冬にはどちらもその場に定住していることがわかりました。
 

T6は三番瀬や葛西海浜公園(東京都江戸川区)一帯を生活の場とし、2020年は越夏し、115日までは同地で観察されていましたが、1225日に、伊勢湾で野鳥を観察している久野正博さんから、「T6」が安濃川河口に来ているとの情報が寄せられました。東京湾と伊勢湾との距離は約260㎞。数千㎞の渡りをするこの鳥にとってはたいしたことではないかもしれません。2021年125日には三番瀬に戻ってきていることが確認されました。

一方T7は、翌年の春からのゆくえがわかりませんでしたが、2020715日~19日の間、北海道の道南、渡島半島の八雲町で観察されています(日本野鳥の会三重・『しろちどり』107号)。その「T7」が、20211023日に伊勢湾の雲出川河口に帰ってきたとのメールが、久野さんから寄せられました。【写真・「T7」の足環をつけたミヤコドリ・久野正博氏撮影】 

しかし「T6」の方は、125日に確認されて以来“ゆくえ不明”。「T6」発見者の田久保晴孝さんによると、ことし越夏した40羽の中にはいず、1025日に調査した時も、約400羽の群れの中に「足環付」の個体は見つけられなかったとのことでした。今回、久野さんからの続報に、この春「T6」が伊勢湾にいたと記されていました。

フラッグ(足環)個体の観察情報が集まる山階鳥類研究所に問い合わせたところ、「T6」は2月~5月まで伊勢湾で複数の観察者により確認されていて、5月に釣り糸で負傷をしたとの報告が最後とのことでした。詳細はわかりませんが、無事に再発見されることを祈っています。                                                                          〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年10月19日火曜日

知りたいことが記されていた報告書『新砂貯木場の鳥類調査報告』

  

   “新木場”は東京メトロ有楽町線・JR京葉線・りんかい線の駅が一か所につながった鉄路の要所です。かつて深川にあった“木場”が埋め立てられ、新しく造られた貯木場がある場所ということで東京港沿いに造られ、いくつもの貯木場があります。周囲を堤防で囲まれ、人が近づけない「貯木場」という水辺は、水鳥たちにとって楽園で、以前から休息・採餌・繁殖の地として、彼らは利用しています。それらの貯木場には、かつては輸入されてきた大きな材木が水面いっぱいに浮かべられていましたが、いまは輸出先で「木材」とされ日本に運ばれてきますので、“貯木場”の役割は小さくなっています。そのなかで、荒川につながっている「新砂貯木場」は、1990年代初めから、“ヨット・ボートの基地”「夢の島マリーナ」として、新しい展開をしています。 

 この貯木場には、たくさんの水鳥が生息していて、研究部は「カワウの新営巣地」として注目していた場所です。しかし、他の貯木場と同じように外部から全体を見通せるような場所はなく、かつては小船で水路から調べたこともありました。しかし、2010年代の調査はマリーナ側の岸辺から双眼鏡や望遠鏡で覗くことしかできていませんでした。今回送られてきた報告書には、これまで情報が不足していた2010年代の状況が満載されていますので、これからその内容を読み取る予定です。

 『新砂貯木場の鳥類調査報告(201410月~20175月)』〔A4判・60ページ+資料編73ページ・20216月刊〕【表紙写真】は、東京都下水道局砂町水再生センターの協力を得て、敷地内からの調査が行われ、より正確な情報が多数掲載されています。報告書は、「NPO法人 ネーチャーリーダー江東」のホームページからダウンロードして、全容を知ることができます。

担当された荒川洋一さんは、当会会員で、区内の「仙台堀川公園」の保全活動でも活動され、当会の会誌『ユリカモメ』にも寄稿されたことがあります。                                  [日本野鳥の会東京・研究部]

 

    

2021年9月26日日曜日

報告書『多摩川鳥類カウント再現』の発刊によせて

  

 私たち、多摩川鳥類カウントグループは、東急財団の援助を受けて実施した調査の報告書を、同財団の援助を活用した印刷物『多摩川鳥類カウント再現』として作成しました。 

『多摩川鳥類カウント再現』は、19766月から1年間、また19869月から1年間、当時の建設省京浜工事事務所の委託で行われた河口から青梅市万年橋までの61.8㎞間の鳥類カウントを、できるだけ同じやり方で再現し、現状把握と過去との比較をしてみようという試みです。20196月から1年間の予定でしたが、コロナ禍の緊急事態宣言を受けて、2020年の45月の調査は先送りとなり、20215月に足掛け3年にわたった調査を終えました。10代から70代までの幅広い世代65名が調査に参加し、メーリングリストで密に連絡を取り合って、順調に調査を行うことができました。 

結果は予想以上に面白いものでした。コロナ禍や台風19号による台風被害といったトラブルを含めて、40年を超える長期間での鳥類の生息状況の変動、その傾向が浮き彫りになってきました。私たちは現時点でのステップを刻みました。今後、これらの結果が先へ、また周囲へと展開し、活用されて行くことがあればうれしいです。 

                           〔多摩川鳥類カウントグループ会長・蓮尾純子 

『多摩川鳥類カウント再現』(A4判・259ページ):頒価2,000(送料込)

【連絡先】272-0137 千葉県市川市福栄4-26-1  

                 Emailzvm11117@nifty.com



2021年9月11日土曜日

“檻の中のオオタカ”から東京都のカラス対策を考える

  

  朝、代々木公園にカラスの行動調査に出かけた際、園内に入るとオオタカの若鳥の悲鳴のような大きな鳴き声が何度も聞こえてきました。すぐに見当はつきました。“カラストラップに入ったな!” 檻のなかのその姿は望遠レンズで捉えることができました【写真】。

  東京都内各地の緑地に設置されている“カラストラップ”。激増した都内のカラスを捕獲し数を減らそうとする施設で、2001(平成13)年来20年を経ようとしています。4羽のおとりのカラスを入れて、週に2回生肉を補給し、その際4羽以上かかったカラスを捕殺するという形です。都の発表によると約40か所のトラップで処分されたカラスは、昨年度約5100羽とのこと。おいしそうな食べ物につられて捉えられるカラスの多くは若鳥で、これまでの累計捕獲数は233,000羽と記されています。

  都は「カラス対策成果」を知るため、2001(平成13)年度から、毎冬都内の約40か所の集団ねぐら()でその数をかぞえていますが、初年度の36,400羽を頂点にそのグラフは急激な右肩下がりで、昨年度(2020・令和2)には11,000羽となっています。同じような傾向は都市鳥研究会が都心部3か所で5年ごとに行っているねぐら調査でも示されています。 

  農村部のように作物への加害問題がある環境と違い、市街地でのカラスの生息に大きく影響しているのは、家庭や企業から出される「生ごみ」です。ごみの管理は区市町村で行われ、多くのところでそれなりの成果が得られています。 [本ブログの前号で銀座の例を紹介しています] 最近の傾向は、都の同じページに挙げられている「都庁によせられた苦情・相談件数の推移」のグラフからも読み取ることができます。往時に比べ、その件数は90%減少したとのことです。東京都は“多額の税金を使って殺生”するトラップ作戦を考え直す時期と思います。 

  代々木公園で助けを求めていたオオタカは職員が気付いたのか、30分後、大きな声で鳴きながら、緑のなかに飛んでいきました。(川内 博)

2021年8月21日土曜日

  

   頭痛の種の“ムクドリのねぐら”問題の季節になりました。ムクドリが夕方になると毎日人通りの多い駅前や繁華街に集まって、夜半にかけて大声で鳴き騒ぎ、糞を落とし、換羽中には羽が漂い、近隣の商店・住民や通行人が迷惑をするという社会問題です。

同じく鳥が関係する“カラス問題”は「食べもの」というキーワードがあり、街なかでは生ごみなどの管理をきちんとすれば、ある程度解決できますが、ムクドリの方は、話題となって半世紀たった今も、解決の糸口も見いだせない難問です。ただ、この問題は東京23区内では少なく、千葉・埼玉などで多発しているのが特徴的です。このあたりに何らかキーがあるのかもしれません。 

ところで、そのムクドリちょっとした“異変?”がこの夏目立ちます。これまであまり見かけなかった「セミ獲り」をすること【写真・川内 博氏撮影】。ムクドリの食べ物は多様で、熟柿や木の実も食べますが、主食は地面にいる虫やその幼虫です。その中で、ここ数年来羽化途中や直後の“柔らかいセミ”を襲って食べるという光景を目撃します。以前からセミも彼らのメニューに入っていましたが、目立つようになってきました。

今夏もアブラゼミ・ミンミンゼミ・ニイニイゼミが主流で、暑いなか元気に鳴いていて、とくに数が多い・少ないという印象はありません。セミも多いのですがムクドリもたくさんいますので、彼らが群れで襲えば、それなりの影響が出るかもしれません。何か知見のある方はぜひご連絡ください。                                                                  〔研究部〕

2021年8月2日月曜日

東京・繁華街のカラスはどこへ

  


 「コロナ禍・緊急事態」の中ですが、オリンピックが開催されている今朝、感染防止に配慮しながら、銀座と渋谷、それに代々木公園のカラスの状況を調べてきました。銀座は1997年以来、年4回の定期調査を実施しています。渋谷は時々、銀座での調査の後に立ち寄っています。代々木公園はここのところ、機会を見つけては探査しています。 

調査の詳しい内容は別の機会に紹介するとして、今朝の状況を簡単に報告しますと、かつては150羽を数えていた銀座での観察数は1羽。植え込みの陰に置かれた生ごみの袋をハシブトガラスがつついていました【写真・中央に小さく映っています】。傍若無人に生ごみをあさっていた渋谷・道玄坂~センター街でもハシブトガラスの声を1回聞いただけです。代々木公園は、日中にも多数(数千羽)のカラスがたむろし、来園客の残飯類を食べたり、池で飲水や水浴びをしたりしていて“カラス天国”でしたが、近年減少傾向が見られ、最近はハシボソガラスの姿や声が目立つようになっています。今朝の調査はその感を深める状況でした。 

研究部では、1999年~2003年にかけて「とうきょうのカラスをどうすべきか・とうきょうのカラスをこうして減らす」というタイトルで、5回にわたってカラス・シンポジウムを開いてきました。その趣旨は、東京で社会問題となっているカラス問題を解決するのに“カラスを駆除せよ”という意見があったからです。野鳥関係者は、カラスが悪いのではなく、街なかに放置されている生ごみが主因であるとして“カラスを殺さず・生ごみを減らせ”と主張してきました。

今朝の銀座の通りは整然として、お店などから出されるごみ類はきちんと管理されていました。渋谷の生ごみ類も、以前に比べれば絶対量が減っているのは一目瞭然でした。しかし、東京都によるカラスの殺処分を目的とした“捕獲”は今も続いています。「家庭や事業所からの生ごみは、きちんと管理して回収すればカラスは減る」。従来からの研究部の主張を実感した一日でした。〔日本野鳥の会東京・研究部・川内〕

2021年7月15日木曜日

『小笠原諸島〜伊豆諸島 ツバメの渡り調査 2021』観察記録大募集!

  

   小笠原諸島や伊豆諸島を経由して飛来するツバメの生態を島民や島への旅行者の観察者の方達と協力して調べています。標識調査の結果などからツバメの越冬地は東南アジアで、南西諸島を経由して日本各地へ渡ってくることが明らかになっていますが、小笠原諸島、伊豆諸島を経由する渡りについては明確なことはわかっていません。 

この調査は日常の暮らしの中での目視での観察記録による調査なので、越冬地や渡りの正確なルートは明らかにすることはできませんが、春の渡りでは2018年からの2021年までの母島から大島までの11の島から届いた観察記録から、南に位置する島ほど初認される日が早い傾向にあることがわかりました。このことから越冬地は不明ですが、ツバメたちは太平洋の島々をつたって北上していると考えられます。 

また、今年は伊豆諸島で繁殖しているツバメの様子を調査しています。小笠原諸島ではツバメの繁殖の記録はありません。伊豆諸島では、御蔵島や八丈島以南の島では、現在はツバメの繁殖の報告はなく、三宅島以北の島で繁殖していることがわかりました。伊豆諸島で繁殖をしているツバメたちはどこからきてどこへいくのでしょう? 

繁殖を終えたツバメたちは越冬地へ向けた秋の渡りを開始します。島のツバメたちの秋の渡りについても調べていきたいと考えています。この調査はツバメには全く迷惑がかからず、観察記録が多く集まるほどツバメたちのようすが見えてくる楽しさがあります。島でツバメを観察したら「いつ、どこで、何羽、誰が、状況」の5項目を記録して是非メールで連絡をください。 https://oga-izu-swallow.jp/     〔重原美智子

2021年7月9日金曜日

『東京の野鳥たち・3』の配布と『東京の野鳥たち1・2』の頒布

  

 日本野鳥の会東京が毎月開催している10か所の探鳥会(月例探鳥会)の観察鳥類とその個体数をまとめたのが『東京の野鳥たち』。19952014年度の20年間をまとめた2冊の報告書(『東京の野鳥たち~月例探鳥会7か所・20年間の記録~』〔通称『東京の野鳥たち1』〕、『東京の野鳥たち~月例探鳥会3か所・20年間の記録 および 明治神宮・高尾山・新浜の長期記録~』[通称『東京の野鳥たち・2』])の続巻として、20152020年度の記録(データ)を収めた『東京の野鳥たち・3』をCD-ROM版で発行しました。【写真】内容は、19954月~20202月までの約25年間のデータを収録したものです。(折からのコロナ禍で、探鳥会そのものが20203月以降中止となりました。) 

『東京の野鳥たち・3』には25年間の月例探鳥会での出現鳥類の全データが収められていますので、さまざまな検証ができます。その一例として、10か所の探鳥地[葛西臨海公園・東京港野鳥公園・清澄庭園・明治神宮・多磨霊園・高尾山・多摩川・新浜・谷津干潟・三番瀬]の出現状況をメッシュグラフにして並べていますので、知りたい鳥の№(日本産鳥類目録第7版に準拠)を入力すると、それらを一覧し、出現状況を知ることができます。それをどう処理するかはそれぞれの人の興味でいかようにも分析できるようになっています。また、膨大なデータを駆使して、別の分析もできると思います。 

今回出版しました『東京の野鳥たち・3』はデータ集ですので、状況を把握するには報告書『東京の野鳥たち1・2』とセットでの利用を想定しています。『東京の野鳥たち・1』(1,000円)・『東京の野鳥たち・2』(700円)+ 郵送料で頒布しています。『東京の野鳥たち・3 』はセットとして付いています。なお、すでに『東京の野鳥たち1・2』をお持ちの方には郵送料だけでお送りしますので、日本野鳥の会東京あてお申し込みください。詳しくは下記にお問い合わせください。

E-mail:office@yacho-tokyo.org 「東京の野鳥たち」係

研究部では今後さまざまな検討を行いますが、ぜひ皆さんも手元において、分析作業にご協力お願いします。〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年6月28日月曜日

自然教育園での「オオタカのヒナの成長」・ライブ中継中

  

  今年も港区の自然教育園でオオタカが子育て中です。そのようすを、巣に取り付けられたテレビカメラで撮影し中継しています。この地でのオオタカの繁殖活動は2017年からで、当初はメインの園路の真上に巣を構え、目立ちすぎるので、いろいろな面で関係者を慌てさせましたが、2018年には2羽が巣立ちました。営巣場所は、翌年からは立入り禁止のいまの場所へ移り、一安心といったところです。 

自然教育園では、都心でのオオタカの繁殖生態調査とともに、そのようすを一般に公開することで「学習支援活動」にも寄与するということで、巣にライブカメラを設置しています。現在、その映像は、園の入口の「教育管理棟」1階の第2展示室で“ミニ企画展・オオタカの子育てを観察しよう!2021”として一般公開をしていて、大型モニターで視ることができます。また、昨年の子育てのダイジェスト版も放映しています。【写真】。

ライブ中継ですので、いつ食べ物を持ってくるか、ヒナがどんな動きをするかはわかりません。7月中には巣立っていきますので、興味ある方はお早めに。なお、これまでのことは『自然教育園報告』に載っています。パソコンなどで「自然教育園」を検索し、ダウンロードして読むことができます。          〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年6月6日日曜日

東京都内でのイソヒヨドリの繁殖状況を調べています

  

  「磯の鳥・イソヒヨドリ」が、海辺を離れ、内陸部に進出している話は『ユリカモメ』ですでに紹介しています(№768201910月号)。その中で、今の“名所”は丘陵地の八王子市一帯ということをお知らせしました。「イソヒヨドリの内陸部進出」の調査は都市鳥研究会(事務局・埼玉県和光市)が全国展開していて、ここのところ首都圏の状況に焦点が当たっています〔都市鳥研究会HP・ブログ・「としちょうNOW」〕。 

 さて、東京の状況は、相変わらず「八王子市」がその中心で、地元の八王子・日野カワセミ会の2009年~2020年の調査で、営巣地のトータルは54か所とのことです。また、生息・繁殖地が鉄道沿線にそって広がり、JR中央線では、東側は立川・西国分寺、西には神奈川県の相模湖・藤野から山梨県の大月へ。南は府中や多摩センター・町田、北へは青梅線・五日市線沿線まで記録されています。 

情報をもとに、青梅駅・東青梅駅・河辺駅一帯の状況をこの5月に調べたところ、青梅駅では駅から100mほど離れたマンション屋上で餌をくわえたペアの動きを観察し、東青梅駅では駅舎の隣りに建つ16階建てのマンションの屋上で囀る雄を観察しました。河辺駅では、駅前にある銀行の屋上を動く雌【写真】をそれぞれ記録しました。ここでのポイントは、それらを確認するのに、時間があまりかからなかったということで、イソヒヨドリの生息が身近になっているということのようです。

当会では、「東京都鳥類繁殖調査」に協力しています。この“新参者”のとくに「繁殖」について力点をおいて調べています。営巣が確認できなくても「同じ場所でよく見かける」場所がありましたらお知らせください。                 〔研究部〕

2021年5月16日日曜日

繁殖期初期のムクドリ集団ねぐら・東京メトロ「行徳駅」

  

  

  2019年から年間を通して、東京メトロ東西線の行徳駅周辺のムクドリの集団ねぐらを調査しています。都市でのムクドリの集団ねぐらで、社会問題といえるほど個体数が増加するのは、一般的に夏の終わりごろから冬の間です。行徳駅の集団ねぐらについても、個体数が千羽単位に増加するのは8月中旬頃から3月頃ですが、年間を通してムクドリの集団ねぐらが観察されました。 

調査前には、繁殖期、特にまだ若鳥がいない初期の頃には、ムクドリは集団ねぐらを形成しないと思っていました。しかし、繁殖期初期の4月・5月でも数は多くは無いものの、150300羽のムクドリが集団で駅舎をねぐらとしていることがわかりました。(表:45月の個体数) 都市鳥研究会の越川重治氏によると繁殖に参加しない個体と「繁殖期に入っても基本的には最終卵を産む前までは、メスは夜間抱卵しません。もちろんオスは繁殖期でもねぐらに戻ります。現在の行徳駅前のねぐらの個体はおそらく非繁殖個体+繁殖個体オス+繁殖個体で夜間抱卵に入っていないメスで構成されていると考えられます」とのことでした。繁殖中でも産卵途中のペアーは、集団ねぐらを形成することがあるとのことです。確かに、ねぐらを観察していると、ペアーと思われるものも見受けられました。 

行徳駅の集団ねぐらの場所は、個体数が数百羽の時は主に駅舎、千羽を超えるようになると駅前広場の樹木、樹木が強剪定されると電線へ移動するのが例年の行動です。人工物の駅舎では、屋根裏の鉄骨の梁の部分を利用して寝ているようです。個体数が少ない為、今まで注目していませんでしたが、ムクドリが周年、同じ場所をねぐらとして利用していることは一つの発見でした。                                        [鈴木弘行]

         表:45月の個体数

年月日

個体数

ねぐら場所

2019428

250

駅舎

2019528

200

駅舎

2020421

300

駅舎

2020524

150

駅舎・樹木・電線

2021412

300

駅舎

2021514

150

駅舎

 

 

 

 

                                

 


2021年4月29日木曜日

初めて見たコサギの「波紋漁法」・江東区の旧中川で

  

 

 コサギは池や川など都内の水辺でよく見かける水鳥です。街なかの個体は人慣れしているのか比較的警戒心が小さく、まぢかでその行動を見ることができます。先日、旧中川のカワセミの人工営巣地のようすを見に行ったとき、江東区の亀戸中央公園の川沿いで、「波紋漁法」と名づけられたコサギの採食行動を初めて見ました。

 川沿いの飛び石づたいに渡れる島の岸辺で1羽のコサギがうろうろしていました。そのうち、首を伸ばし、くちばしを水面に平行にして、まるで水をゴクゴク飲むような感じで水面に波紋をたてていました。場所を移動すると、今度はくちばしを水面に斜めに入れて、くちばしを細かに開閉して、やはり波紋をつくっていました。【写真】 波紋をつくって、そこに餌になるようなものがいると思わせて、小魚を集めている行動と見て取れました。

最初の約5分間では、2回小魚を捕らえていましたが、その後、場所をいろいろ変えながらの約20分間では1回しか捕らえられませんでした。 コサギのこのような採食法(bill-vibrating)は、日本では1990年代に広島から報告があり、東京でも2000年代に上野の不忍池でも観察されています。文献でしか知らなかったこの採食行動、この鳥の「足揺らし漁法」に比べると、効率はよくないように見えました。〔川内 博〕                                      

        

2021年4月14日水曜日

街のカワセミの繁殖は「人の手助け・人工物利用」で頑張っています・ カワセミの新刊の紹介

  

 いまカワセミは繁殖期の真っ最中。4月上旬、例年観察している東京23区内の2か所を訪れてみました。1か所は下町の地下鉄駅に近い工場跡地の再開発地。その一角に造られた庭園はビオトープを意識した作りで、池を中心として周辺に植栽され、水辺には人工崖が造成されています。新しく削りだされた赤土の壁面にはカワセミの巣穴が多数掘られていました。

かつてここでは毎年連続して繁殖していましたが、ヘビに襲われ失敗して以来、ここ数年放棄されていました。区が新しい壁面を削り出したところカワセミが戻ってきたとのこと。ぶじ営巣するか待ち遠しいところです。

もう1か所は山手の川で、壁面の水抜きパイプを利用して繁殖している場所。今年も雌雄が元気に飛び回っていました。短時間での観察で、水抜き穴を利用しているかは確認できませんでしたが、状況から今年も同じ所で営巣する可能性が高いと思われます。

23区内には山手にも下町にもカワセミが巣を掘れるような自然の崖はほとんどない状態ですので、人工の崖地・人工の穴の利用など、人が関わっての繁殖ですが、たくましいカワセミ夫婦は、今年もたくさんのヒナを育てることでしょう。5月に予定している再訪が楽しみです。

ところで、“カワセミ百科”の本が出ます【写真】。自然教育園で長年カワセミの繁殖生態の研究をされている矢野 亮氏監修の『にっぽんのカワセミ』(カンゼン・20214月刊・1500円・税別)、本の帯には「一冊たっぷり♪カワセミの本」とあり、全ページ美しい“カワセミ色”に染められた楽しい本です。               〔川内 博〕


2021年3月31日水曜日

「ツバメの初認」のころ、コロナ禍の影響は・・・・情報をお寄せください

  

毎年春になると気になるのが「ツバメの初認」。昨年ヒナが孵った巣をたずねることは、この季節の恒例行事です。330日、港区白金台の目黒通りを歩いていたら、2羽のツバメが飛び交っていました。“シロガネ―ゼ”にふさわしい貫禄のあるマンションの1階駐車場に毎年営巣し、昨年は2回繁殖した巣に、雄が何度も入ってチェックを繰り返していました。【写真】 

同じ通りの500m先にも昨年子育てした巣があり、マンションの地下駐車場への通路の天井には巣が2つ残っていました。1か所は半壊状態の古巣で、もう一つは昨年子育てをした巣です。残念ながらこちらではその姿を見ることはできませんでした。付近には自然教育園をはじめ、八芳園、東大医科研など緑の多い場所ですので、都心としてはツバメの子育てがしやすい環境と思えます。今後少し範囲を広げて調べる必要がありそうです。

 しかし、コロナ禍の影響で、東京駅を中心とした3㎞四方を対象に、1985年から5年毎に30年継続続調査している都市鳥研究会のホームページには「一斉調査を中止」の知らせがアップされていました。なかなか遠出ができない状況、ご自宅やご近所、行きつけの商店街や駅などでの昨年・今年のようすをお知らせください。〔日本野鳥の会東京・研究部〕 

2021年2月26日金曜日

オンライン“オガヒワ講演会”を視聴して

  

  この講演会に接する前は“オガヒワ”という言葉を知りませんでした。正式名の「亜種オガサワラカワラヒワ」はもちろん知っていて、約40年前の夏、小笠原の母島の畑道を歩いていたとき、当時『特殊鳥類』に指定されたいたこの鳥が数羽飛び立ち、鳴声も聞いた覚えがあります。20106月下旬に同地を訪れたときには興味をもって調べましたが出会えませんでした。しかし、父島港で壮大な“お見送り”を受けて、東京・竹芝に帰った数日後の77日、すてきな写真が撮られていました。日本野鳥の会東京・研究部に所属する三間久豊さんが、母島で幼鳥タイプのカワラヒワをシャープにとらえ、その画像は同年11月号の『ユリカモメ』の表紙を飾りました【写真】。 

オガサワラカワラヒワは、最近の調査では、母島の属島や南硫黄島に数100羽生息するだけで、環境省および東京都のレッドリストでは絶滅危惧ⅠA類(CR)で、「絶滅の危機に瀕している」と評されています。さらに、昨年5月に、亜種ではなく独立種であるという研究が発表されています。 

オンラインで「全部わかっちゃう!! オガサワラカワラヒワ講演会」が行われたのは、今年の117日でしたが、私が知って視聴したのは2月下旬。下記の「見逃し配信」

https://www.youtube.com/watch?v=8IQ0JHq3jmU

で、3日かけて3時間の講演会を視聴しました。内容は多岐にわたって充実していて、タイトル通りに「オガカワ」の現状を知ることができ、 一言でいうと“見てよかった・知ってよかった”という感想です。活動について興味のある方は、公式のホームページがありますので検索してみて、アクセスしてください。   〔日本野鳥の会東京・川内 博

2021年1月29日金曜日

「意外に知られていない都会のフクロウ」予告編

  

 「都内のさる緑地では近隣にお住いの方たちが“フクロウの鳴き声を耳にするが居るのか?”という疑問を持ち続けてきました。しかし、行動時間帯が夜間ということと、別の場所から飛来してたまたま鳴いていたのか判らないので、ある意味「都市伝説」のようになっていたようです。」

 しかし、この話は根拠のない都市伝説ではありませんでした。前月の当ブログで呼びかけたように、23区内の緑地にフクロウ [ Ural owl  Strix uralensis ]が確かに生息しています。しかもペアで。その緑地で長年野鳥の写真を撮っている当会会員に、“匿名”・“場所不詳”で、この春から、会報誌『ユリカモメ』にフクロウの話を紹介してもらう予定です。お楽しみに。

ところで、都会のフクロウの話が載る予定のページはモノクロなので、上記の写真をつけても何が写っているのかわからない可能性があります。カラー写真で見ても、一目で何だといえる人は少ないのではないでしょうか。中央の洞にフクロウの横顔が見えますか? 撮影者は“匿名執筆者”の知り合いの日本野鳥の会会員で、ここにフクロウがいることをはっきりさせた証拠品です。 

「ふくろう・梟」はその独特の姿と生態から、むかしから人々から親しまれている鳥で、文学や絵画、民芸品などによく登場します。しかし“街のフクロウ”という話は、日本ではあまり聞いたことがありません。都内に想像以上にフクロウが棲んでいる可能性があります。冬はこの鳥の恋の季節。もっとも鳴声が聞ける時期です。“いるかもしれない”と思って夕刻から夜にかけて、耳を澄ましてください。                                                                     〔研究部〕