ところが翌日(9日)、この民家から南へ100mほど離れた植木畑で、さらに驚く光景を目にします。畑の中央に植えられた3本のカキの木に、約80羽のツグミが集まっていたのです。群れはせわしなく動き回り、少し採食してはパラパラと飛び立ち、近くの神社の森で休息。そしてまた集団で戻ってきてカキの実を食べる——そんな行動を繰り返していました。その結果、群れが行き来する電線の下はオレンジ色の糞だらけ。まさに、ツグミにとっては飽食の日となったようです。
さらに2日後(11日)、同じ木には最大121羽のツグミが飛来していました。この時はヒヨドリやメジロの群れも加わり、カキの木はまさに鳥で鈴なりの状態。連日の採食でカキの実はみるみる減っていき、ついには果皮を残してほとんど食べ尽くされてしまいました。13日にはツグミは12羽まで減り、こうして大集団は姿を消しました。突如として現れ、わずか5日ほどで嵐のように去っていったツグミの群れでした。
果実食性の鳥は、豊富な餌を求めて移動しながら生活することが知られています。身近なヒヨドリも、武蔵野市の住宅街では カキ→トウネズミモチ→イイギリ→エンジュ と、近隣で多く得られる果実を次々と食べていきます。やがて果実が少なくなると群れは別の場所へ移動し、残ったわずかな個体が庭先のオリーブやマンリョウの実をついばむ姿が見られます。今回のツグミの群れも、おそらく食物を探して移動する途中で住宅街のカキを見つけ、次々に仲間が集まって大集団になったのでしょう。
ただ、不思議なことがあります。筆者はこの場所で5年ほどルートセンサスを続けていますが、これほどの大集団を見かけたのは初めてなのです。今シーズンは食物が少なく、ツグミたちはより広範囲を放浪していたのでしょうか。鳥たちと果実をめぐる関係はとても複雑であり、今回の出来事も様々な想像をかき立ててくれます。 〔鈴木遼太郎〕