2026年3月9日月曜日

ツグミの大集団が飛来 ― 東京都武蔵野市にて

  

  2026年1月8日の朝。その日は、いつもと少し違う出来事がありました。定期的にルートセンサスをしている道中、住宅の庭にあるカキの木に10羽のツグミが飛来していたのです。筆者のセンサスルートは緑の少ない住宅地が中心のため、普段見かけるツグミは多くても1〜2羽ほど。それを思うと、10羽でもなかなかの数です。このときツグミたちはヒヨドリやメジロに混ざりながら、カキの実を盛んについばんでいました。

 ところが翌日(9日)、この民家から南へ100mほど離れた植木畑で、さらに驚く光景を目にします。畑の中央に植えられた3本のカキの木に、約80羽のツグミが集まっていたのです。群れはせわしなく動き回り、少し採食してはパラパラと飛び立ち、近くの神社の森で休息。そしてまた集団で戻ってきてカキの実を食べる——そんな行動を繰り返していました。その結果、群れが行き来する電線の下はオレンジ色の糞だらけ。まさに、ツグミにとっては飽食の日となったようです。

 さらに2日後(11日)、同じ木には最大121羽のツグミが飛来していました。この時はヒヨドリやメジロの群れも加わり、カキの木はまさに鳥で鈴なりの状態。連日の採食でカキの実はみるみる減っていき、ついには果皮を残してほとんど食べ尽くされてしまいました。13日にはツグミは12羽まで減り、こうして大集団は姿を消しました。突如として現れ、わずか5日ほどで嵐のように去っていったツグミの群れでした。

  果実食性の鳥は、豊富な餌を求めて移動しながら生活することが知られています。身近なヒヨドリも、武蔵野市の住宅街では カキ→トウネズミモチ→イイギリ→エンジュ と、近隣で多く得られる果実を次々と食べていきます。やがて果実が少なくなると群れは別の場所へ移動し、残ったわずかな個体が庭先のオリーブやマンリョウの実をついばむ姿が見られます。今回のツグミの群れも、おそらく食物を探して移動する途中で住宅街のカキを見つけ、次々に仲間が集まって大集団になったのでしょう。

 ただ、不思議なことがあります。筆者はこの場所で5年ほどルートセンサスを続けていますが、これほどの大集団を見かけたのは初めてなのです。今シーズンは食物が少なく、ツグミたちはより広範囲を放浪していたのでしょうか。鳥たちと果実をめぐる関係はとても複雑であり、今回の出来事も様々な想像をかき立ててくれます。       〔鈴木遼太郎〕


2026年2月25日水曜日

真冬に見かけたタカ二景・なぜ?

  

 

1月に行った「猛禽類を中心とした東京23区での一斉調査」の結果を前回紹介しましたが、近年、東京やその周辺を半日歩けば、タカの姿を見かけることはふつうになっています。この214日と15日に東京都東久留米市の住宅地と千代田区の皇居広場でオオタカとノスリを、それぞれ1羽を見かけました。

東久留米では14日に同市上の原の東久留米グリーヒルズの上空でオオタカ【写真上】。15日には皇居桔梗濠近くの上空でノスリ【写真下】。この2種の共通点は、“羽がボロボロ”ということ。これほどの状態のタカはあまり見かけた記憶がありません。しかも換羽期でもなく、これから繁殖という季節になぜ?という疑問がわいてきました。

“争いの結果?・栄養失調?” 今のところ何らの説明も思いつきません。どなたか知見のある方の見解をお願いします。〔研究部・川内〕

2026年1月31日土曜日

図書紹介 『私たちの上野公園-しのばず自然観察会50年史-』 しのばず自然観察会発行

  

 


  「上野公園(上野恩賜公園)」は東京を代表する公園で、動物園・博物館・美術館・音楽ホールなどが林立し、そのなかの不忍池(しのばずのいけ)にも何度も足を運ばれたことがあると思います。本書はその公園の歴史的背景を第1章「上野とはどんなところか」、第2章「上野公園の歴史と現状」に詳しく記されています。第3章「しのばず自然観察会」の歩みでは、同会の発足につながる東京湾岸での「新浜を守る会」の話が記され、各地に「自然観察会」が発足する当時の時代背景などの一端を知ることができます。

上野公園の動植物については最後の第5章「上野公園の生き物たち」として、本書の責任編集者の小川 潔さんの記録と記憶でまとめられています。第1話は「上野の山の植物」、第2話は「不忍池の水鳥とその他の動物」となっていて、小見出しは 1.上野・不忍池とかつて見られたカモ類、2.不忍池の水鳥調査と方法、3.約60年間のカモ類の個体数経年変化-調査結果と池の環境の変化、4.不忍池における給餌について、5.カモ個体数の減少について、6.不忍池のカワウ、7.不忍池と周辺での過去の野鳥の繁殖、8.水鳥を襲う他の生物、9.珍鳥たち、10.上野の山と不忍池のその他の動物たちです。

本書の発行意義について、小川さんは公文書ではなく、“住民や公園愛好者、また失われた自然や文化遺産の代弁者という立場から記録を残す”とあとがきに記されています。

自費出版ですが、発行元の地湧社のとりはからいで全国の書店から注文ができるようになっています。公共図書館にも購入してもらえるようリクエストしてほしいとのことです。

〔地湧社・202512月発行・A5判・303ページ・定価2000円+税〕

2026年1月26日月曜日

東京23区の猛禽類の状況・2026年1月の調査の様子

  

  


    日本野鳥の会東京・研究部では「猛禽類を中心とした東京23区での一斉調査」として、各区に調査地を1か所定め、それに多摩川と荒川に1か所ずつ設置した計25か所で、1月11日(1か所12日)の午前10時~12時に調査を行い、8種のワシタカ類を記録しました。

記録の多い順にトビ16か所・28羽)・オオタカ(8か所・8)ノスリ7か所9羽)・ハイタカ7か所・7羽)・ミサゴ2か所・2羽)・チョウゲンボウ2か所・2羽)ハヤブサ1か所1羽)という結果でした。(フクロウ類は記録されませんでした)

一番記録が多かったのは多摩川(大田区~世田谷区)の6種、次いで4種の葛西臨海海浜公園(江戸川区)、3種の小石川植物園(文京区)・東京港野鳥公園(大田区)・明治神宮(渋谷区)・哲学堂公園(中野区)・光が丘公園(練馬区)・浮間公園(北区)という状況でした。

 同じような調査を10年前の20161月に行いましたが、そのときはオオタカ【写真】が19羽記録されました。今回はその半分でしたが、10年前はオオタカが都内に侵入してきた初期の段階で、定着していない個体も多かったと思われます。今は23区の半分以上で繁殖が記録される状況になっています。一方、トビ13 羽(7か所)だったのが28羽(16か所)と確認数も記録場所数も2倍以上となっていました。これはカラス(とくにハシブトガラス)が異常に増える前の状態に戻ったためと考えられます。詳しくは会誌『ユリカモメ』の研究部レポートで紹介する予定です。                                                                                                〔川内 博〕

2025年12月30日火曜日

猛禽類を中心とした一斉調査の予備調査結果

  

  来月1月上旬、猛禽類を中心とした調査を東京23区の全区で実施する予定です。これは10年前に実施した類似の調査との比較を目的としたもので、今回はより精度を高めるため、多摩川・荒川を加え25か所で調査。午前10時~12時の2時間、一斉に探鳥形式で行い、それにより23区内での猛禽類〔タカ目・フクロウ目・ハヤブサ目〕の生息状況を把握しようというものです。前回はオオタカ19羽のほか、ノスリ・ハイタカ・ツミ・ミサゴ・トビ・ハヤブサ・チョウゲンボウの生息を認めています。

29日に予備調査として、予定地の1か所を午後2時~4時に踏査してみました。結果としてはオオタカ・ノスリ・トビ・ミサゴ・チョウゲンボウの5種を確認しました。オオタカはキジバトを襲って逃げられ、ノスリは水辺の枝に長々と止まっていました。トビはハシブトガラス2羽にモビングされていました【写真】。

時間帯を夕刻にかけて行ったのは「フクロウ類」をと思ったのですが、まったく空振りに終わりました。本番ではどんな成果が得られるか、興味あるところです。  
                       〔研究部・川内〕

2025年12月23日火曜日

カオグロガビチョウ進出か・三鷹市の住宅地にて

  

  

 今年に入ってから、東京都三鷹市内のある住宅地に新顔の外来鳥がたびたび出没しています。その存在に最初に気づいたのは、615日の夕方のことです。三鷹駅へ買い物に出かけた帰り道、住宅地にある苗木畑から「ピョウ!ピョウ!」という聞き慣れない鳴き声が響いてきました。笛のようによく通る声で、どこかで聞いた覚えはあったものの、その場では正体を思い出せませんでした。その後も9月、10月と断続的に自宅周辺で同じ声を耳にしましたが、鳴き声が聞こえるのは決まって屋敷林や社寺林の中で、姿を確認することはできませんでした。

そして112日の朝、自宅近くの苗木畑から再び同じ鳴き声が聞こえてきました。苗木の陰には、地面をはねる鳥の姿がちらりと見えました。すぐに自宅へ戻ってカメラを持ち出し、撮影したのが掲載の写真です。その正体は、カオグロガビチョウでした。観察できたのは2羽で、木々の間を移動しながら、ときおり地面をホッピングして落ちている果実を採餌しているようでした。15分に一度ほど、2羽で「ピョウ!ピョウ!」と鳴き交わす以外は非常に静かで、終始、茂みの中を静かに移動していました。 

カオグロガビチョウは、東京都内では1970年代以降、世田谷区やあきる野市で定着が確認され、その後、青梅市や八王子市などでも記録されるようになっています。近年は多摩川流域を中心に分布を拡大していると考えられ、筆者自身も世田谷区、狛江市、府中市などで観察しています。しかし、北多摩地域では多摩川から離れると記録が少なく、三鷹市を含む周辺の都市公園や住宅街では、これまで確認したことがありませんでした。なお、国分寺市では一部で定着が見られる地域があるようですが、筆者は未確認です。 

本種は、雑木林や低木林などの明るい森林や、農地を含む開けた環境を好むとされています。そのため、屋敷林や苗木畑といった環境は、本種の生息地として適しているのでしょう。すでに2羽で行動していることから、来年以降に繁殖する可能性も考えられ、今後、周辺地域で個体数が増加することも否定できません。当地では、同様の環境で繁殖する鳥としてオナガやヒヨドリが挙げられます。カオグロガビチョウが新たに定着した場合、これら在来鳥にどのような影響を及ぼすのか、気がかりなところです。           〔鈴木遼太郎〕                                                               

2025年11月30日日曜日

東京都心部・神宮前交差点の秋のムクドリねぐら状況

  

  


 日本各地で続いている「ムクドリのねぐら(塒)問題」ですが、東京の中心部のJR山手線内では、以前からあまり大きなトラブルは生じていません。理由のひとつは集団ねぐらの発生が少ないこと、またその規模が大きくないこと、さらにねぐらをとる期間が比較的短いことなどです。そんななかで、渋谷区神宮の明治通りと表参道が交差する神宮前交差点は2010年代から続く場所で、規模が数千羽と大きく、興味をもって経過を追っています。

本ブログでは一昨年12月にその状況を紹介しましたが、今年は少し事情が違うようです。9月末に同地を訪れた時には2000羽以上と思われる群れが、ビル屋上の広告塔にびっしり止まり【写真上】、薄暗くなって定宿としているケヤキに流れ込みました。しかし、次に11月上旬夕刻に訪れたときは飛来がなく、定宿の真下となる地下道へのエレベーター付近の糞がきれいに掃除され、並木にはイルミネーションの豆電球が巻かれていました。下旬に2回夕刻に立寄ってみましたが、広告塔に姿がなく、また地面にも糞跡がないので塒形成をしていないようです。

 ムクドリのねぐらをとっている一帯は、国内外の有名ブランドが立ち並び、夕刻の歩道は外国人や若者で縁日の人出のような状況になっていますが、とりあえず今後どのような状況になるか、今後も機会をみて立ち寄ってみる予定です。                〔川内 博〕