2010年9月30日木曜日

今年の日本鳥学会大会から・2 新設「黒田賞」

  

今年の日本鳥学会大会の目玉のひとつが、新設された「黒田賞」の受賞者とその講演(9月20日)。「黒田賞」は親子二代にわたって日本の鳥学の中心となられた黒田長禮・長久両博士にちなむもので、授賞対象者は若手の学会員。
その第1号は、農業環境技術研究所の天野達也さん。30才台前半の新進気鋭で、すでに25編の論文を国際誌に発表されているとか。受賞講演タイトルは「鳥類個体群の時空間動態を明らかにする包括的アプローチ」と、文字面を見ただけでは「むずかしそう!」の一言。しかし、理路整然とした講演は興味あるもので、いわゆる従来の「鳥屋さん」的な研究手法ではない、新しいタイプのアプローチの出現を知り、新設・黒田賞に値するものと思いました。
対象空間を身近・地域・国レベルで調べ、それぞれのデータを組み合わせて、生き物(鳥類)の動きを見ていこうスケールの大きな研究のようで、これからの成果が楽しみといったところです。しかし、その講演を聞きながら、新しい手法といえど、基本的には、研究者や観察者などの昔ながらの地道な調査・観察がなければ成り立たないこともわかり、これからも野鳥の会レベルの協力が必要だと感じました。
 来年は大阪市立大学で、同時期に開催とのこと。今回は手ぶらで参加しましたが、大阪には新しい風を持っていきたいものと、新タイプの研究者の講演を聞きながら夢想していました。                    (川内博)

2010年9月24日金曜日

今年の日本鳥学会大会から・1 ところ変われば

  

日本鳥学会2010年度大会が9月18日~20日、千葉の東邦大学習志野キャンパスで開催されました。口頭発表51件が3日がかりで、A・B 2つの教室にわかれ同時進行で、また、午後からは2日にわたり112件のポスター発表がありました。さらに、夜は自由集会が11件企画され、最終日の午後には公開シンポジウム「海鳥集団繁殖地の復元」が開かれるという盛りだくさんの内容で、参加者も500名を超えたことは確実。日本鳥学会は2年後には100周年を迎え、東京大学で記念行事、国立科学博物館では関連の展示会が催される予定とか。また、2014年には念願のIOC(国際鳥学会議)が東京・立教大学を会場に、初めて我が国で開かれることが決定したと披露がありました。いま日本鳥学会には活きのいい若者がいっぱい。これからが楽しみといったところです。
ところで、ポスター発表「琵琶湖のヨシ群落で繁殖する鳥類の最近30年間の変遷」の前で関係者と生息する鳥の増減の原因などを話し合っているうち、オオバンについて、私が日ごろ見ている荒川・彩湖(埼玉県戸田市ほか)と琵琶湖ではその行動が違うことが判明。彩湖では、数十羽が群れで岸に上がって、芝生地や草地で採食している〔写真〕のが普通なのに、琵琶湖一帯では、まず岸に上がることがないとのこと。それは琵琶湖に限らず関西地方では常識とのこと。同じ鳥が東西でそんな違いがあるとはまか不思議。その理由はなんでしょう。また、東京や関東一円での行動はどうでしょうか。「ところ変われば」興味あるところです。(川内 博)

2010年9月22日水曜日

第3回東京の鳥シンポジウム・11月4日(木)夜に開催

  

毎年11月に日本野鳥の会東京・室内例会として開催しているシンポジウム。今回は「東京都産鳥類目録」作成の一環として2年前から続けている『東京の鳥』の最終回として、伊豆・小笠原諸島に焦点をあて実施します。サブタイトルは「東京の島の鳥たち―伊豆・小笠原諸島の固有種に注目しよう」。パネリストは川内博・東京都産鳥類目録作成委員長、中村一也・日本野鳥の会東京代表、山本裕・㈶日本野鳥の会自然保護室の3人。
前半では、この2年で、対象地域のほとんどの有人島を繁殖期に踏査した川内氏が最新の伊豆諸島情報を。次いで、母島観光協会主催の探鳥会講師として活動している中村氏が小笠原の近況を。そして、三宅島・アカコッコ館に長年勤め、伊豆諸島の鳥について第一人者の山本氏には海鳥の生息状況を中心に、また、最近日本野鳥の会がバードライフと組んで展開を始めた「マリーンIBA」(海の重要野鳥生息地)について、概要を話していただきます。
今回のメインイベントは後半。パネリストと参加者一体で、アカコッコやイイジマムシクイ、メグロ〔写真〕、カンムリウミスズメなど、世界的に貴重な固有種について、その野鳥の会東京として、その保護活動について話し合う予定です。詳細が決まりましたら、『ユリカモメ』およびこのHPでおしらせします。まずは11月4日夜にチェックを入れておいてください。
【日時】2010年11月4日(木)午後6時~9時 【会場】東京都渋谷区立千駄ヶ谷区民会館1階・会議室 【定員】先着60名 【参加費】300円

2010年9月6日月曜日

「八王子・日野カワセミ会」が25周年・記念事業を開催

  

「八王子カワセミ会」(粕谷和夫会長)の発足は、1985(昭和60)年1月15日に浅川の大和田橋~長沼橋で行った探鳥会とのこと。それ以来、東京・南多摩の浅川流域を中心に野鳥の調査・普及・啓蒙を実践され、88年からは会報『かわせみ』を年2回発行し、その実績記録が残されています。その後、守備範囲を広げ、現在は「八王子・日野カワセミ会」となっています。9月初めに発行された最新号(№45)には「25年のあゆみトピックス」としておもな活動が9ページにわたってまとめられています。その中からいくつか紹介しますと、第1回公開探鳥会の開催(1987年)、浅川野鳥基本50種の作成(89年)、オオルリ調査開始(92年)、「人と野鳥・共に生きよう浅川で」宣言(95年)、巣から落ちたチョウゲンボウの野生化(97年)、ツバメの巣の全域調査(2001~02年)、数え上げた浅川流域の野鳥2の発刊(06年)・・・と多岐にわたり、それぞれを継続されています。また、「野鳥の定期カウントと20年続けると何がわかるか」という記事には1885~2009年度までの浅川流域でのオナガガモの調査結果がグラフ化されていて、最盛期には1000羽を超えていた数が、昨年度には2羽という激減ぶりが示されています。さらに、オオルリが八王子市の鳥となって以来始められたオオルリの調査は、その後他の夏鳥もくわえられ、「夏鳥3種♂の出現羽数」としてその推移が載せられています〔グラフ〕。
 いずれにしても、一つの地域での調査を息長く続けられ、その結果をきちんと記録し、また、社会・学校教育に生かされるような形で公表されているのはたいへん意義のある活動です。今年から来年にかけて、25周年の記念事業が計画され、その一環として、長沼公園ギャラリーで、観察された野鳥の写真・野鳥調査の結果・野鳥のカービング・小学生の野鳥の絵などの展示会を9月29日(水)~10月25日(月)9時~17時で開かれます。長沼公園へは京王線「長沼」下車、徒歩5分。無料の駐車場もあるようです。