2022年11月15日火曜日

シリーズとさん・1 多摩川・羽村堰周辺探鳥会に参加して

  

   112()、日本野鳥の会奥多摩支部の「多摩川羽村堰周辺探鳥会」に参加しました。朝9時に玉川兄弟像に集まった参加者は38名。コロナ禍が続くなかですが、予想された人数とのことでした。モズの高鳴き、ジョウビタキの地鳴きが聞こえ、水辺にはカワセミ、セグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイ、アオサギ。堰上の水面にはキンクロハジロ、カイツブリ。そして青空にはトビが舞うといった具合。多摩川左岸を下りながらの探鳥。市街地ではまったく聞くことがなくなったコジュケイの元気な鳴声が間近に、逆に市街地の緑地まで定着しそうなガビチョウのさえずりが対岸から響いてきました。

今回の目玉はアリスイ。数人の人が見ることができたようです。同会発行の『多摩の鳥』(2014)によると、ここでは2012115日の探鳥会でも1羽記録しているとのこと。多摩川・昭和記念公園・霞丘陵・多摩湖などで9月~4月にかけて観察されているようです。もう一つの目玉は「猛禽類」の多さ。当日はトビ4羽・ハイタカ1羽・オオタカ1羽・ノスリ1羽・チョウゲンボウ1羽の5種。最近は都内各地でみられている現象ですが、Why?という疑問に明確な答えは出ていません。逆にカモやシギ・チドリなどの水鳥類の減少は寂しいかぎり。とくに2019年秋の台風19号の影響は著しいとのこと。これについても理由ははっきりしません。

昼食後、永田橋を渡って右岸を遡行。午後ということもあり、出現鳥類は減少。「生態系保持空間」という聞きなれない緑地を通り、14時過ぎ、堰下レク広場で記録した鳥(41種+外来種4)の確認後解散。その足で、久しぶりに羽村市郷土博物館を訪れる途中でトビの雄姿をとらえることができました。【写真】                 〔川内博〕

2022年11月1日火曜日

図書紹介『世田谷の鳥2020 -世田谷区鳥類目録-』

  

東京・世田谷区で活動する(一般財団法人)世田谷トラストまちづくりから、「世田谷区鳥類目録」の第4『世田谷の鳥2020 -世田谷区鳥類目録-』【写真】が発行されました。編集にたずさわったのは「野鳥ボランティア」。1991年に発足したこのグループの手によって、2009年に第1弾、2010年に第2弾、2015年に第3弾の報告書が出され、本書は本年7月に出版。A4297ページに、世田谷区の概要・鳥の概要に続いて『日本鳥類目録改訂第7版』に基づいて、2266285種の「世田谷区鳥類」の記録が載せられています。 膨大な記録をもとに作成されていて、今回とくに注目したのは第Ⅳ章で、区内の7か所で行われている定例調査の結果をもとに、「主な種の個体数推移」がグラフ化され、その変化が一目で知ることができることでした。

最近、東京の市街地でのカラスの動きが注目されています。大きくは2つで、ひとつは繁華街や住宅に飛来する数が減ったこと。もう一つはハシブトガラス(ブト)の減少とハシボソガラス(ボソ)の台頭です。後の話題については、近年の東京の市街地ではブトが完全に優占し、ボソは周辺部に追いやられた状況でした。しかし、2000年以降、都内の各地でボソを見かける事例が増えています。ここで示されたグラフはその現象を裏付ける内容となっています。また、同じスカベンジャーのトビやカモメ類の変化も興味あるところで、トビの復活傾向やユリカモメの衰退が示されています。さらに、「生態上の類似点がある種の個体数比較」ということで、アオサギ・ダイサギ・コサギの個体数比較がグラフで示されていますが、この3種のサギの動きは、世田谷区だけでなく興味が持たれている問題で注視しているところです。

 本書は一地域の鳥類目録ですが、内容は充実していて、いろいろな角度からも参考になる良書です。本書はWebから無料でダウンロードすることができ、また「データCD」も希望者に提供されているようです。詳しくは下記の(一財)世田谷トラストまちづくりにお問い合わせください。       ℡:03-6379-1624  http://www.setagayatm.or.jp       

                                                                           〔研究部・川内博〕