タイトル・表紙の絵とも“なんじゃコレは!”といった感じですが、読み進むうちにその意図がわかってきます。
【表紙写真】 この本は、東京から
1300㎞南下した、太平洋上に浮かぶ無人島「南硫黄島」(みなみいおうとう)での生物総合調査のようすを、専門の鳥類を中心に書かれているものです。この本の著者・川上和人さんは、『鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ』・『鳥肉以上、鳥学未満』など奇抜なタイトルの著作が多数あり、広く読者を獲得されています。本書も平易に書かれていて、
“研究”の成果も“冒険
”の意味も知ることができます。
南硫黄島は無人島で、東京都小笠原村に属し、そこの調査は
1982(昭和
57)年・
2007(平成
19)年・
2017(平成
29)年に行われていて、川上さんは2回目・
3回目に鳥類担当者として上陸されています。
3回目の調査には
NHKが同行し、放映されていますので、調査の様子はオンデマンドなどで観ることができます。本書に興味を持たれたら、その番組を観ると表紙の絵の意図も具体的に知ることができるでしょう。
ところで、その川上さんが千葉県我孫子市で開催されたジャパンバードフェスティバルで講演されるとのことで11月4日に聴講しました。チラシには「第33回鳥学講座」と記され、案内文も専門的なことが主でしたが、講演タイトルは「小笠原諸島の海鳥は、増えたり、減ったり、海を越えたり、超えなかったり」と“川上流”。話の内容は本と同じように、学術的に裏付けられたもので聞きごたえがありました。それは聴衆の皆さんがよく知っていて、開演1時間前から待っている人がいたとのこと。20分前に列に並んだ私は定員組(120名)に加われず、立ち見組30名でなんとか入れました。聞きごたえがあった”証拠”は、講演後の質問タイムで、手を挙げた人の多くが小学生から20代までの若者で、さまざまな角度からの「的確な質問」があり、話の内容がよく理解され、興味を持たれたことを物語っていました。 〔川内博〕