2021年9月26日日曜日

報告書『多摩川鳥類カウント再現』の発刊によせて

  

 私たち、多摩川鳥類カウントグループは、東急財団の援助を受けて実施した調査の報告書を、同財団の援助を活用した印刷物『多摩川鳥類カウント再現』として作成しました。 

『多摩川鳥類カウント再現』は、19766月から1年間、また19869月から1年間、当時の建設省京浜工事事務所の委託で行われた河口から青梅市万年橋までの61.8㎞間の鳥類カウントを、できるだけ同じやり方で再現し、現状把握と過去との比較をしてみようという試みです。20196月から1年間の予定でしたが、コロナ禍の緊急事態宣言を受けて、2020年の45月の調査は先送りとなり、20215月に足掛け3年にわたった調査を終えました。10代から70代までの幅広い世代65名が調査に参加し、メーリングリストで密に連絡を取り合って、順調に調査を行うことができました。 

結果は予想以上に面白いものでした。コロナ禍や台風19号による台風被害といったトラブルを含めて、40年を超える長期間での鳥類の生息状況の変動、その傾向が浮き彫りになってきました。私たちは現時点でのステップを刻みました。今後、これらの結果が先へ、また周囲へと展開し、活用されて行くことがあればうれしいです。 

                           〔多摩川鳥類カウントグループ会長・蓮尾純子 

『多摩川鳥類カウント再現』(A4判・259ページ):頒価2,000(送料込)

【連絡先】272-0137 千葉県市川市福栄4-26-1  

                 Emailzvm11117@nifty.com



2021年9月11日土曜日

“檻の中のオオタカ”から東京都のカラス対策を考える

  

  朝、代々木公園にカラスの行動調査に出かけた際、園内に入るとオオタカの若鳥の悲鳴のような大きな鳴き声が何度も聞こえてきました。すぐに見当はつきました。“カラストラップに入ったな!” 檻のなかのその姿は望遠レンズで捉えることができました【写真】。

  東京都内各地の緑地に設置されている“カラストラップ”。激増した都内のカラスを捕獲し数を減らそうとする施設で、2001(平成13)年来20年を経ようとしています。4羽のおとりのカラスを入れて、週に2回生肉を補給し、その際4羽以上かかったカラスを捕殺するという形です。都の発表によると約40か所のトラップで処分されたカラスは、昨年度約5100羽とのこと。おいしそうな食べ物につられて捉えられるカラスの多くは若鳥で、これまでの累計捕獲数は233,000羽と記されています。

  都は「カラス対策成果」を知るため、2001(平成13)年度から、毎冬都内の約40か所の集団ねぐら()でその数をかぞえていますが、初年度の36,400羽を頂点にそのグラフは急激な右肩下がりで、昨年度(2020・令和2)には11,000羽となっています。同じような傾向は都市鳥研究会が都心部3か所で5年ごとに行っているねぐら調査でも示されています。 

  農村部のように作物への加害問題がある環境と違い、市街地でのカラスの生息に大きく影響しているのは、家庭や企業から出される「生ごみ」です。ごみの管理は区市町村で行われ、多くのところでそれなりの成果が得られています。 [本ブログの前号で銀座の例を紹介しています] 最近の傾向は、都の同じページに挙げられている「都庁によせられた苦情・相談件数の推移」のグラフからも読み取ることができます。往時に比べ、その件数は90%減少したとのことです。東京都は“多額の税金を使って殺生”するトラップ作戦を考え直す時期と思います。 

  代々木公園で助けを求めていたオオタカは職員が気付いたのか、30分後、大きな声で鳴きながら、緑のなかに飛んでいきました。(川内 博)