2010年8月31日火曜日

故・浜口哲一さんの遺志をつぐシンポジウム開催

  

神奈川にこの人ありと野鳥関係者に限らず、全国のナチュラリストに知られた浜口哲一さんが亡くなられたのは今年の5月初め。平塚市博物館の立ち上げから関わられ、館長をつとめ、退任後は大学教授として、最後まで「自然」と直接接せられ、その意義をさまざまな形で提示され続けました。その結晶のひとつが『自然史の窓 1 生きもの地図が語る街の自然』(1998年・岩波書店刊)〔写真〕 その内容は、タンポポ・帰化植物・アシナガバチ・カエル・淡水魚・ツバメと身近な生きものすべてにわたり、故人の間口の広さと、奥行きの深さに共感し、触発され、各人がそれぞれの立場から新たなアプローチを発想・行動させるという良書となっています。
日本野鳥の会東京(支部)との関わりでは、第3回カラスシンポジウム(2000年)にパネリストとして「神奈川県人のみた東京のカラス問題とその解決への道筋についての提案」という題で講演をいただきました(その中身は、頒布している『とうきょうのカラスをこうして減らす 第3・4回シンポジウム報告書』で読むことができます)。また、現在進行中の『新・東京都産鳥類目録』作成に多大な助言をいただきました。
この秋・11月27日午後に横浜で、「シンポジウム 生きもの地図を未来へ」が、日本野鳥の会神奈川主催で開かれます。サブタイトルは「浜口哲一さんの足跡と、これからの道」と、浜口さんの業績を礎として、さらにそれらを発展させようという企画です。
【とき】2010年11月27日(土)12時30分開場・13時30分~ 【ところ】はまぎんホール・ヴィアマーレ(JR根岸線桜木町下車・徒歩5分) 【さんか】先着500名・無料 【そのご】同日17時から交流会が予定されています 【くわしくは】http://www.mmjp.or.jp/wbsj-k/              (川内 博)

2010年8月21日土曜日

行動派研究家・峯岸典雄さんご逝去の報

  

 8月18日夜、突然峯岸典雄さんご逝去の第一報がメールに入っていました。7月21日に「検査入院します。無線LANはあるし、携帯も自由」とのメールに「酷暑の中、病院の中が一番快適(?)かもしれません。少し文明の機器(危機?)から遠ざかった方がいいかもしれません。まずはご静養ください。」と返信を出し、8月9日にはとくに異常なく退院との知らせをもらったところでした。享年81歳とのことです。
 峯岸さんと研究部のつながりは、東京の「カラス問題」の時で、第2回カラスシンポジウムではパネリストとして登場していただき、『とうきょうのカラスをどうすべきか 第2回シンポジウム報告書』には「世界の主要43都市における生ゴミ収集法について-日本との比較-」というユニークな論文を残されています。その後も西池袋のご自宅一帯でのゴミの管理など、率先して活躍されました。
 ここのところは、軽井沢の別荘で、1989(昭和64)年春から、同じ方法で、朝の鳥のコーラスを撮り続け〔写真・録音中の峯岸さん〕、鳥の声がどんどん小さくなっていくという警鐘を多くの人に発信されていました。この5月には「軽井沢に鳥が居なくなってしまった」というアピールとともに、「その4 ・ もう手遅れ 鳥が諦めてしまった軽井沢 21年分の録音を15分で聞く」というCDを作製され、その後もっと短く編集した「その5」も送られてきました。研究部では、とりあえず8月の月例会で、参加された会員に聞いてもらい、今後この貴重な記録を生かせるような方法を考えていこう、そのためには涼しくなったら、峯岸さんに直接お話しをお聞きしようと話し合ったばかりでした。
 この軽井沢での話は、別の機会にまた取り上げさせていただくとして、ご葬儀をお伝えします。【通夜祭】8月25日(水)午後6~7時【葬場祭】8月26日(木)午前9時30分~11時【場所】落合斎場(新宿区上落合3丁目)(川内 博)

2010年8月7日土曜日

ヒメシロハラミズナギドリについての補足

  

最新の『ユリカモメ』8月号(№658)の研究部レポートで発表したヒメシロハラミズナギドリ Pterodroma longirostris 〔写真:中村忠昌氏撮影〕について、誌面の都合上、割愛した事項があり、次のような疑問が寄せられています。 「ユリカモメの最新号に掲載されたヒメシロハラミズナギドリの件ですが、頭部の色が淡すぎるように思います。この仲間は類似種がいるので注意が必要です。これが記録されたころ、仲間内でも問題になったのですが、Cook's Petrel(Pterodroma cookii)の可能性もありそうです。ヒメシロハラミズナギドリの亜種とされることもあるPycroft'sPetrel(P. pycrofti)の可能性も捨てきれません。」
そこで、割愛した㈶山階鳥類研究所の茂田良光さんの同定根拠を掲載させていただきます。
「今年に出たHelm Field Guide,Field Guide to New Zealand Seabirds ほかの写真の本と比較して送られた3枚の写真から検討したところ,ヒメシロハラミズナギドリPterodroma longirostrisの成鳥でいいと思います。尾が換羽中で短く見えていますが,尾の先は黒く,嘴の形は細くも短くもなく,ヒメシロハラに一致しています。また,額から頭頂までが白く,眉斑がないように見え,後頭が黒っぽいのもヒメシロハラの特徴に一致しています。ハジロシロハラミズナギドリ Pterodroma cookiやウスヒメシロハラミズナギドリP.pycroftiほど淡くは見えてないです。頭から胸にかけて淡灰色に見える点は,上面の写真からは実際はそんな に淡くないと思います。また,摩耗と退色で,時期的に淡くなっていてもおかしくないと思います。」
なお、葛西臨海公園鳥類園の2007年9月10日のブログに、『ユリカモメ』掲載以外の写真もアップされていますので、参考になると思います。10月9日に上記、茂田さんの同定根拠も掲載されています。ブログ名は 葛西臨海公園・鳥類園Ⅱ です。(日本野鳥の会東京・野鳥記録委員会)

2010年8月4日水曜日

最近の話題 注目!カラスの白化個体

  

今年の7月8日付朝日新聞に、「翼がまだらに白いカラス、西東京を飛来中」という記事が写真付きで出ていました。撮影・観察者は東久留米市に在住の高橋喜代治さん。昨年、地元の黒目川で越冬ヒクイナを発見された方です。写真で左右対称の白黒パターンが出て、きれいな模様となっているのがよくわかります。この写真を見て、同じ朝日新聞の昨年11月12日付のコラム記事を思い出しました。こちらは兵庫県赤穂市の話で、風切羽や雨覆、尾羽の先端が白化し、レース飾りのようになっている個体。前者がハシボソガラス、後者はハシブトガラスでした。
ハシボソの部分白化やハシブトの「バフ変」(淡褐色)の個体はよく見聞きしますが、ハシブトの左右対称の部分白化の例は知りませんでした。そんなこともあって、会員同士のMLでやり取り中に、小金井市在住のベテラン・清水徹男さんが、同市付近には、部分白化のハシボソガラスが多いという、次のような書き込みをされました。「全てハシボソガラスで、個体によっては朝日新聞の写真に近いほど翼の白化が目立つのや、翼羽根のごく限られた一部のみ白い個体やらいろいろです。いずれにせよ、小金井周辺のハシボソの遺伝子には部分白化の因子が含まれているように思われます。」〔写真・部分白化のハシボソガラス:写真提供・渡辺昭彦氏〕
西東京市と小金井市は隣接した一帯。私の住む埼玉県和光市も同じ環境に属するので、興味のあるところで、今後注意して見てみたいと思っています。皆さんのまわりではいかがですか。事例の紹介をお願いします。(川内 博)