2022年12月29日木曜日

冬鳥ツグミの本隊はいつ・冬の調査「越冬期2023」・「猛禽類のようす」

  

  今年の冬は寂しい! そのわけはツグミ【写真】・シメなどの渡来数の多い冬の小鳥たちの声や姿が極端に少ないからです。ツグミは11月のはじめ前後には第一陣の声が聞こえるのが例年のことです。シメもツグミと同じころに金属的な地鳴きが聞こえてきて、冬の到来が近いことを知るシグナルとなっています。それが12月の末になっても声も姿も出会うことが少なくなぜ?” とささやかれています。

研究部では「越冬期2023」調査と「猛禽類のようす」調査をこの冬に行います。 

越冬期2023」は昨年に引き続いての調査で、冬鳥やカモなど水鳥類のようすを重視したもので、東京湾岸から上野不忍池、皇居濠、多摩川、奥多摩湖など80か所以上で、1月中に実施します。調査地の多くは日頃から探鳥会や観察会が行われているところで、調査に携わる方は、探鳥会や自然観察会のリーダーが中心で、レベルの高いデータが期待できます。

猛禽類のようす」調査は、最近、市街地でも見ることの多くなったタカ類(オオタカ・ハイタカ・ノスリ・トビなど)やハヤブサ類(ハヤブサ・チョウゲンボウ)、最近皇居で繁殖していることがわかったフクロウ【写真】、逆に最近見かけることが少なくなったフクロウ類(コミミズク・トラフズクなど)などの猛禽類の冬期間の生息状況を調べるものです。

いずれも高い専門性を必要とする調査で、野鳥の会や自然観察会の皆さんにボランティアで参加いただいています。                                                                                                     〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2022年12月1日木曜日

昭島駅前のムクドリのねぐら初観察の記

  

   前からその存在は知っていながら、なかなか現場を見ることができなかった東京都昭島市・JR昭島駅前のムクドリのねぐらの状況を見てきました。11月27日()夕方、奥多摩での探鳥の帰り、ちょうど午後4時ごろに昭島駅に着きました。その日の日没は4時29分。約30分前の照度は2500ルクス。日没10分前に照度が850ルクスになったころ、駅南口の空に1000羽ほどの群れが上空に現れました。群れは旋回するごとに周りから小群が合流し、日没ごろには2000羽、その10分後には7000羽の大群となり、群れはまるで一つの巨大な生き物のように変幻自在に形を変えながら大空を舞い続けました。【写真・上】

 この光景は、かつて千葉や埼玉でよく見かけたものですが、最近はこのねぐら入り前の“儀式”をあまり目にしなくなっていました。久しぶりの大空をバックにしたショーに思わず見とれていましたが、“落とし物”のプレゼントが私を直撃しました。オレンジ色の果実の皮のかけらのような小片でした。あわてて屋根のあるタクシーの待合所に逃げ込みましたが、群れが通過するたびに、ボタボタと頭上の鉄板が鳴っていました。1650分、群れは一斉にロータリー中央のケヤキや常緑樹に舞い降りてきました。照度計は25ルクス。三日月がバックに輝いていました。【写真・下

ここのねぐらがいつできたのかはわかりませんが、5年ごろ前に昭島市を訪れた際、駅北口広場の木々が強剪定されているのを見かけ、ねぐらになっているだろうと思ったことがありました。同市の住人に聞いたところ、この件はあまり話題になっていないとのこと。各地でトラブルが続く「ムクドリのねぐら問題」は、今のところ“解決策がない”のが現状です。何らかの方法で追い出すと、別の場所でまたトラブルが発生するという繰り返しになっています。とりあえず、昭島駅南口を安住のねぐらとしてもらえればと願いながら、次のねぐら地へ電車で移動しました。                     〔研究部・川内博〕

2022年11月15日火曜日

シリーズとさん・1 多摩川・羽村堰周辺探鳥会に参加して

  

   112()、日本野鳥の会奥多摩支部の「多摩川羽村堰周辺探鳥会」に参加しました。朝9時に玉川兄弟像に集まった参加者は38名。コロナ禍が続くなかですが、予想された人数とのことでした。モズの高鳴き、ジョウビタキの地鳴きが聞こえ、水辺にはカワセミ、セグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイ、アオサギ。堰上の水面にはキンクロハジロ、カイツブリ。そして青空にはトビが舞うといった具合。多摩川左岸を下りながらの探鳥。市街地ではまったく聞くことがなくなったコジュケイの元気な鳴声が間近に、逆に市街地の緑地まで定着しそうなガビチョウのさえずりが対岸から響いてきました。

今回の目玉はアリスイ。数人の人が見ることができたようです。同会発行の『多摩の鳥』(2014)によると、ここでは2012115日の探鳥会でも1羽記録しているとのこと。多摩川・昭和記念公園・霞丘陵・多摩湖などで9月~4月にかけて観察されているようです。もう一つの目玉は「猛禽類」の多さ。当日はトビ4羽・ハイタカ1羽・オオタカ1羽・ノスリ1羽・チョウゲンボウ1羽の5種。最近は都内各地でみられている現象ですが、Why?という疑問に明確な答えは出ていません。逆にカモやシギ・チドリなどの水鳥類の減少は寂しいかぎり。とくに2019年秋の台風19号の影響は著しいとのこと。これについても理由ははっきりしません。

昼食後、永田橋を渡って右岸を遡行。午後ということもあり、出現鳥類は減少。「生態系保持空間」という聞きなれない緑地を通り、14時過ぎ、堰下レク広場で記録した鳥(41種+外来種4)の確認後解散。その足で、久しぶりに羽村市郷土博物館を訪れる途中でトビの雄姿をとらえることができました。【写真】                 〔川内博〕

2022年11月1日火曜日

図書紹介『世田谷の鳥2020 -世田谷区鳥類目録-』

  

東京・世田谷区で活動する(一般財団法人)世田谷トラストまちづくりから、「世田谷区鳥類目録」の第4『世田谷の鳥2020 -世田谷区鳥類目録-』【写真】が発行されました。編集にたずさわったのは「野鳥ボランティア」。1991年に発足したこのグループの手によって、2009年に第1弾、2010年に第2弾、2015年に第3弾の報告書が出され、本書は本年7月に出版。A4297ページに、世田谷区の概要・鳥の概要に続いて『日本鳥類目録改訂第7版』に基づいて、2266285種の「世田谷区鳥類」の記録が載せられています。 膨大な記録をもとに作成されていて、今回とくに注目したのは第Ⅳ章で、区内の7か所で行われている定例調査の結果をもとに、「主な種の個体数推移」がグラフ化され、その変化が一目で知ることができることでした。

最近、東京の市街地でのカラスの動きが注目されています。大きくは2つで、ひとつは繁華街や住宅に飛来する数が減ったこと。もう一つはハシブトガラス(ブト)の減少とハシボソガラス(ボソ)の台頭です。後の話題については、近年の東京の市街地ではブトが完全に優占し、ボソは周辺部に追いやられた状況でした。しかし、2000年以降、都内の各地でボソを見かける事例が増えています。ここで示されたグラフはその現象を裏付ける内容となっています。また、同じスカベンジャーのトビやカモメ類の変化も興味あるところで、トビの復活傾向やユリカモメの衰退が示されています。さらに、「生態上の類似点がある種の個体数比較」ということで、アオサギ・ダイサギ・コサギの個体数比較がグラフで示されていますが、この3種のサギの動きは、世田谷区だけでなく興味が持たれている問題で注視しているところです。

 本書は一地域の鳥類目録ですが、内容は充実していて、いろいろな角度からも参考になる良書です。本書はWebから無料でダウンロードすることができ、また「データCD」も希望者に提供されているようです。詳しくは下記の(一財)世田谷トラストまちづくりにお問い合わせください。       ℡:03-6379-1624  http://www.setagayatm.or.jp       

                                                                           〔研究部・川内博〕

2022年10月16日日曜日

『小石川植物園の野鳥達』出版記念 井上裕由作品展

  

  東京・文京区の小石川植物園で、野鳥の写真を撮り続けている井上裕由さん(当会研究部員)が出版された『小石川植物園の野鳥達』【写真】を記念して、写真展が111日~226日までの予定で、同園・柴田記念館で開かれます。

写真展は、A2版の写真10枚が壁面に掲示、キャビネット内にA4版の写真2025枚位が配置されるとともに、約200枚の写真がスライドショーで流されることになっているとのことです。 

今回の出版は、先に出された『文の京の野鳥達』(本ブログ20201027日付で紹介)が大変好評で、植物園に対して多くの要望があったため、植物園からの依頼により編集をし直し出版されたものです。そのため同園の柴田記念館でしか手に入りません。

植物園では、それに先立ち1021日~23日の3日間「植物祭」が開催される予定ですので、その際の東大グッズの一つとして販売されることにもなっています。(「植物祭」は、21日~23日の天候が良くない場合には、次週に開催されるとのこと) 

写真集には90種もの野鳥達が載せられ、コンクリートの海に浮かぶ『緑島』でこんなに鳥が見られるのかと驚かされるとともに、この環境が永遠に続くことを願わずにはいられません。                   

                      写真展は無料(入園料は別途必要)

『小石川植物園の野鳥達』令和49月発行(B5判・99ページ)3,300

著者:井上裕由 発行:東京大学大学院理学系研究科附属植物園



2022年9月30日金曜日

繁殖期2022 5月~6月の東京都内(本土部)で記録された鳥たち≪仮集計≫

  

  東京都内・本土部の全自治体で1か所以上の調査地を設定し実施した「繁殖期2022」調査の結果、100種以上の野生の鳥たちの繁殖状況を記録しました。今回はまだ仮集計段階ですが、その状況をお知らせしま【写真】は“とんぼ公園”として知られている「尾久の原公園」で繁殖したバンの幼鳥。都内では減少傾向が見られる水鳥ですが、ここの池では子育て風景が見られました。 

「繁殖期2022」の調査時に録した鳥(太字は繁殖確認)

ヤマドリ、キジ、オシドリ、オカヨシガモ、カルガモ、トモエガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、ウミアイサ、カイツブリキジバトカワウ、ゴイサギ、ササゴイアオサギ、ダイサギ、コサギ、カラシラサギ、クロツラヘラサギ、バン、オオバン、ジュウイチ、ホトトギス、ツツドリ、カッコウ、アマツバメ、イカルチドリ、コチドリセイタカシギ、タシギ、チュウシャクシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、キョウジョシギ、オバシギ、トウネン、ウミネコ、コアジサシ、ミサゴ、トビ、ツミオオタカ、アオバズク、カワセミ、コゲラ、オオアカゲラ、アカゲラ、アオゲラ、チョウゲンボウ、サンショウクイ、サンコウチョウ、モズ、カケス、オナガ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、キクイタダキ、コガラ、ヒガラ、ヤマガラ、シジュウカラ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、ヤブサメ、エナガ、オオムシクイ、メボソムシクイ、センダイムシクイ、メジロ、オオヨシキリ、セッカ、ゴジュウカラ、キバシリ、ミソサザイ、ムクドリ、トラツグミ、クロツグミ、アカハラ、コマドリ、コルリ、ルリビタキ、イソヒヨドリ、サメビタキ、コサメビタキ、オオルリ、スズメ、キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ビンズイ、カワラヒワ、ウソ、イカル、ホオジロ/ドバト、ホンセイインコ、コジュケイ、ガビチョウ、カオグロガビチョウ、ソウシチョウ、アヒル、アイガモ 

                  〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2022年9月16日金曜日

繁殖期2022 東京本土部の全自治体を対象に繁殖期調査を行いました

  

   野鳥たちの子育て時期の5月~7月にかけて、東京本土部の全自治体を対象に、1か所以上で調査を実施しました。調査は、日ごろその場所での調査・研究を行っている個人・団体の皆さんを中心にも力をいただきました。関係された皆さまにお礼申し上げます。 

その地での繁殖状況を把握するため、調査はそれぞれの場所で2週間の間をおいて2回実施。その結果100種以上の鳥を記録しました。なかには、東京では繁殖記録のないスズガモなどの冬鳥のカモやキョウジョシギなどの旅鳥、また、カラシラサギ、クロツラヘラサギといった珍鳥も含まれていましたが、ルリビタキやビンズイなどの亜高山の鳥からスズメやツバメなどの人里の鳥、オオタカ・ツミ・トビなどの猛禽の営巣も観察されました。

写真は、調査当日に巣立ちしたチョウゲンボウの巣立ちビナたち。各地で減少しているササゴイの繁殖も記録されました。〔記録は現在整理中〕

調査地一覧

【23区】足立区・舎人公園 板橋区・城北中央公園/石神井川区内域/荒川生物生態園 江戸川区・葛西臨海海浜公園/新左近川 大田区・東京港野鳥公園/多摩川丸子橋付近 葛飾区・水元公園 北区・浮間公園/石神井川区内域 江東区・清澄庭園/中央防波堤埋立地 品川区・大井埠頭中央海浜公園 渋谷区・明治神宮 新宿区・新宿御苑 杉並区・善福寺公園/善福寺川緑地 墨田区・錦糸公園付近 世田谷区・二子玉川付近/砧公園 台東区・上野公園不忍池 中央区・浜離宮庭園  千代田区・北の丸公園 豊島区・染井霊園 中野区・江古田の森公園 練馬区・石神井公園/光が丘公園 文京区・六義園 港区・お台場/自然教育園 目黒区・碑文谷公園 【多摩区】昭島市・多摩川昭和堰/多摩川多摩大橋 あきる野市・横沢入り 稲城市・上谷戸親水公園 青梅市・青梅永山丘陵 奥多摩町・奥多摩湖/雲取山/三頭山 清瀬市・柳瀬川金山調節池 国立市・多摩川石田大橋 小金井市・野川公園市域 小平市・東京都薬用植物園 狛江市・多摩川ニヶ領宿河原 立川市・昭和記念公園 多摩・多摩川大栗川合流点 調布市・ニヶ領上河原堰/神代植物公園 西東京市・いこいの森公園付近 八王子市・高尾山/小宮公園 羽村市・多摩川羽村堰 東久留米市・落合川流域 東村山市・八国山緑地 東大和市・狭山緑地 日野市・浅川多摩川合流点/東豊田緑地保全地域 日の出町・ひので野鳥の森自然公園 檜原村・風張峠 府中市・多摩川府中市域 福生市・多摩橋 町田市・薬師池公園 瑞穂町・六道山 三鷹市・井の頭公園 武蔵野市・小金井公園 武蔵村山市・野山北公園 〔国分寺市は都合により調査できませんでした〕                                                                                     〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2022年8月31日水曜日

普通種・セッカが東京都レッドリストで「絶滅危惧Ⅰ類」に!!

  

  2021(令和3)年4月に「東京都の保護上重要な野生生物種(本土部)2020年版」が公表され、セッカ【写真】が区部ではもっとも絶滅の可能性が高い[ CR ]絶滅危惧ⅠA 類、多摩地域でも[ VU ]絶滅危惧Ⅱ類になっています。 

東京都は1998(平成10)年に「東京都の保護上重要な野生生物種 1998 年版)」を公表して以来、おおむね 10 年毎に改定作業が行われ、2020 年版には162 種の鳥類が掲載されています。 セッカは前回の2010年版ではまったく記載されていなかったのですが、 今回初めて掲載されました。30年以上バードウォツチングをしている人には、セッカは「普通種」の印象が強いと思います。「ヒッヒヒヒ、ヒッヒヒヒ、チャッチャッ」という独特な囀りは、夏の暑い盛りにもよく聞くことができました。最近は、確かにこの声を聞くことが少なくなったと感じていましたが、普通種と思っていた鳥が絶滅危惧種となってしまったのは衝撃でした。 

月例葛西臨海公園探鳥会でのセッカの出現状況を見ても、その急激な減少が明白です【グラフ】。
チガヤやススキなど、イネ科の植物が生える丈の低い草原を好み、クモの糸を使った巣を作るこの鳥にとって、鳥類園や東なぎさでのアシの繁茂が著しく、チガヤのような背の低いイネ科植物が少なくなったことが、激減した一因と考えられます。

当会の実施する月例探鳥会の鳥合せの記録は、鳥類の生息状況の変化を証明する上で重量なデータとなっています。    鈴木弘行〕                              

            

2022年8月17日水曜日

繁殖期2022・大田区内の公園でトビが繁殖

  

  大田区の多摩川沿いに位置する公園で、今年はトビが繁殖に成功しました。この公園ではトビがここ数年の間に何度か巣を作り、親鳥が抱卵しているのを観察しましたが、孵化には至りませんでした。今年は過去の失敗経験から学んだのか従来の営巣エリアよりも更に多摩川に近い斜面の松の木に営巣しました。

 抱卵開始は4月中~下旬ごろで、5月上~中旬は目立った動きはありませんでした。528日、巣のある松の木に雌雄が寄り添って止まり、擬交尾のような行動の後に雄は飛び去りました。雌は巣に戻りましたが抱卵姿勢には入りませんでした。この時点でヒナはおそらく孵化していたものと思われます。6月初めには巣の上に初めて灰白色のヒナを確認できました。

 ヒナが生まれてからは、親の1羽が巣から少し離れた樹上で見張りをし、もう1羽が魚を捕って運んでくる、というパターンが多く見られました。雌雄の協力態勢はしっかりしているようでした。627日には褐色のヒナ2羽が巣の上で動き、灰色頭のヒナも一瞬見えましたが、3羽目のヒナはその後確認されることはありませんでした。大きくなった2羽の幼鳥は78日には巣から出てすぐ横の枝に止まっていました【写真】。 716日の朝、1羽の幼鳥が親の見張っている枝まで飛んで親と合流し、もう1羽はまだ巣の横の枝に残っていました。親が見本を示すように飛び立ち、くるりと旋回して枝に戻りましたが、巣の横の幼鳥はなかなか飛び出す勇気が出ないようでした。その4日後の朝、多摩川の川岸から公園のほうを望むと、巣のある松の木から数十メートル離れた樹上に2羽の幼鳥が止まっているのが見えました。また親はエサを探して多摩川上空を飛翔していました。

 トビの繁殖の様子を観察していると、つがいや親子のメンタルの動きがわかるような気がすることが何度かありました。人の弁当を狙ったりして悪役イメージが固定しているトビですが、今回の観察で私には少し親しみの気持が湧いています。                                    〔川沢祥三〕

2022年8月1日月曜日

繁殖期2022・ぶじ終了しました・越冬期2022の調査結果紹介

  

繁殖期2022の調査終了しました

今年の5月~7月にかけて、本土部の東京都内全域を対象とした「繁殖期2022」調査は、予定通りで終了しました。調査者の皆さま・協力いただいた方々に感謝いたします。

調査結果については、当会会誌『ユリカモメ』で発表します。

 

越冬期2022の調査結果の紹介 (出典『ユリカモメ』No.798799

調査期間:20221月  調査場所:東京都内(本土部)

記録した鳥種:1534103種  調査者・団体:70名・5団体

『ユリカモメ』202289月号に掲載した「調査結果」【下図】

 


 調査場所紹介(23区・多摩区ごとの50音順)

23区 】〔足立区〕舎人公園 〔板橋区〕新河岸川/石神井川①/荒川生態園 〔江戸川区〕葛西海浜公園/新左近川 〔大田区〕東京港野鳥公園/多摩川丸子橋/池上吞川・森ケ崎の鼻干潟 〔葛飾区〕水元公園 〔北区〕浮間公園/石神井川➁ 〔江東区〕旧中川➁ 〔品川区〕大井埠頭中央海浜公園 〔渋谷区〕明治神宮 〔新宿区〕新宿御苑/外濠 〔杉並区〕善福寺公園/神田川/和田堀公園 〔墨田区〕旧中川① 〔世田谷区〕多摩川二子玉川付近 〔台東区〕不忍池 〔千代田区〕皇居外苑濠/日比谷公園 〔豊島区〕神田川 〔中野区〕江古田の森公園/哲学堂公園/神田川 〔練馬区〕石神井公園/光が丘公園 〔文京区〕六義園/小石川後楽園 〔港区〕お台場/自然教育園 〔目黒区〕碑文谷公園/目黒川①/〔東京港〕中央防波堤埋立地

【 多摩区 】〔昭島市〕多摩川昭和堰/多摩川多摩大橋 〔あきる野市〕秋川山田橋 〔稲城市〕三沢川矢野口橋 〔青梅市〕釜の淵公園 〔奥多摩町〕奥多摩湖 〔清瀬市〕金山調節池 〔国立市〕多摩川石田橋 〔小金井市〕野川 〔国分寺市〕武蔵国分寺公園/日立中央研究所池 〔小平市〕上水公園 〔狛江市〕多摩川宿河原堰 〔立川市〕昭和記念公園 〔多摩市〕多摩川大栗川合流点 〔調布市〕多摩川上河原堰 〔西東京市〕いこいの森公園 〔八王子市〕浅川大和田橋/高月浄水場 〔羽村市〕多摩川羽村堰 〔東久留米市〕落合川 〔東村山市〕空堀川野口橋 〔東大和市〕多摩湖 〔日野市〕浅川多摩川合流点/東豊田緑地保全地域 〔日の出町〕平井川町役場前 〔檜原村〕秋川渓谷和田橋 〔府中市〕多摩川市域 〔福生市〕多摩川多摩橋 〔町田市〕薬師池公園 〔瑞穂町〕狭山池公園 〔三鷹市〕井の頭公園 〔武蔵村山市〕野山北公園       コロナ禍のため、荒川区・中央区・武蔵野市での調査は中止しました。    

                  〔日本野の会東京・研究部〕                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

2022年7月16日土曜日

繁殖期2022・大田区内でのオオタカの繁殖

  

 

大田区北部の公園では今年オオタカが初めて営巣し、3羽の幼鳥を無事に巣立たせることに成功しました。その過程を観察しましたので報告します。

3月下旬、オオタカのケッケッケッの声が頻繁に聞こえ、雌雄が公園内の松の枝で仲良く寄り添う姿が見られました。4月上~中旬には松の木の高所に作られた巣上に雌の尾羽が見え、また目障りなカラスを雄が激しく追い回すシーンもありました。4月下旬になると目立つ声や行動が少なくなり、カラスもおとなしくなりました。5月上旬には雌が巣の横で伸びや羽繕いをする姿が見られ、510日に巣の方向からピーピーという細い声が聞こえました。これはふ化したヒナの声だったようです。61日には初めてヒナの白い頭が巣上に見えました。給餌は順調に行なわれ、622日に2羽の幼鳥が巣から10mほど離れた松の木まで飛びました。巣にはまだ頭に白い毛の混じった3番目のヒナが残っていて、雌が給餌に飛んで来ました。発育の差が大きくて心配でしたが、629日には成長の遅かったヒナも巣から出て近くの枝に止まり、ピエーピエーとしきりに声を出していました【写真1。そして75日、3羽の幼鳥が松の枝にそろって立っているのが見られました【写真2】。幼鳥はその後も親から給餌されたエサを地上で食べる姿などが観察されています。

 今年この公園でのオオタカの営巣には散歩の人やバードウォッチャーなどかなりの人たちが気づいていましたが、繁殖行動の邪魔になるような状況にはならず、3羽の無事な巣立ちにつながりました。来年以降も人と鳥の良好な関係を保っていきたいと思います。    川沢祥三    


2022年5月31日火曜日

文献紹介 報告書『中野区北東部の野鳥記録 2005年~2020年』(森の学級発行)

  

  中野区は、東京23区の西部に位置し、新宿や池袋といった副都心に近い都心部の区で、人口密度の高い地域のひとつです。武蔵野台地上に位置していますが、公園や緑地は少なく、一人当たりの公園面積は23区内で22位とされています。池といえる水辺はなく、荒川水系支流の神田川・妙正寺川などが流れています。 

今回紹介する報告書の活動の場は区の北東部にあり、中野区内で唯一まとまった森が残る地域で、調査の中心は「江古田の森公園」(国立療養所中野病院跡地)や「哲学堂公園」(東京都指定名勝)、「平和の森公園」(中野刑務所跡地)といった緑地です。

森の学級」はこれらの地で1999年から活動をされ、今回、中野区の環境変化を知る一つの資料として本報告書が発行されました【表紙写真】。 この地では、2005年~2020年までの間に92種が記録されていて、優占度はヒヨドリ・カワラバト(ドバト)・ハシブトガラス・スズメ・メジロ・シジュウカラ・・・といった順で、東京都心部の鳥相を知ることができます。なかには、コノドジロムシクイやオジロビタキなどの珍しい鳥も記録されています。[ 20222月発行A4判・44ページ] 

                         〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2022年4月30日土曜日

東京都本土部の全区市町村で繁殖期調査「繁殖期2022」を実施します

  

 

この1月に実施した冬期の調査「越冬期2022」に続いて、5月~7月にかけて、今度はどんな鳥が繁殖期に生息しているのかという調査「繁殖期2022を、東京都の本土部56自治体で行います。

“東京”というと、「高層ビル」ばかりの人工的な街と思われがちですが、東京湾岸には「浜辺」があり、中心部には明治神宮や自然教育園などの「緑地」が点在し、また「住宅地」が広がっています。郊外には緑豊かな「丘陵地」、そして2000mを越す「山」もそびえています。さらに、不忍池や井の頭池、多摩湖・奥多摩湖、そして多摩川・荒川という大河が流れ、「水辺」も多いという、バラエティに富んだ環境です。【写真・明治神宮北池で子育てするカイツブリ】

今回、野鳥観察のベテランたちがボランティアで、それぞれ担当の調査地を2回踏査して、野鳥たちの「繁殖」を中心に調べることになりました。その成果を今後ここでも紹介します。ご期待ください。                〔日本野鳥の会東京・研究部〕

                                  

2022年3月30日水曜日

ドバトとキジバトが同じ場所で採食・都市生態系の一員に

  

 
  人からの給餌で暮らしていたドバトが、キジバトと同じ場所で採食している光景を見ることが多くなりました。【写真  左がドバト・右がキジバト 江東区の猿江公園にて】

ドバトは漢字では堂鳩または土鳩と書き、カワラバト由来の伝書バトやレースバトなどが野良化したものやその子孫です。一方、キジバトは漢字では雉鳩と書き、山鳩の愛称もある純粋の野生種です。街なかで見かける「鳩」はこの2種のどちらかです。一般にドバトは公園や駅前、神社・お寺など、人が多いところに群れでたむろしているのを見かけることが多い鳥です。それはお年寄りや親子連れ、観光客などが与えるパンや菓子などを主食としているからです。キジバトの主食は草の実や木の実、地中の小動物で、地面を歩きながらひとつ一つ啄んでいます。その違いのため、この2種がいっしょに採餌している姿を見かけることは、かつては少なかったのですが、ここのところ、公園やグラウンド、草地などを歩いていてよく見かけるようになりました.

東京都では、2000年ごろから“鳩や水鳥に餌をやらないで!”というキャンペーンを強化しています。その結果、台東区の浅草寺境内では2000羽を数えていたドバトが数十羽に減り、池袋や渋谷の駅前でのドバトへの餌やりは見かけなくなりました。また、水鳥のユリカモメ(百合鴎)も川の上流まで群れで飛んできていたのが激減しています。

人からの給餌が少なくなったドバトは活路を求めて、キジバトの餌場に進出してきているというのが、この2種を同じ場所で見るようになった真相です。“野良鳩”として、厄介者とされてきたドバトですが、この変化を見ると、いよいよ都市生態系の一員として認識しなければならない時期になってきたようです。                                            〔川内 博〕

2022年3月15日火曜日

新しい展開を見せだした東京「池袋西口」のムクドリのねぐら・続報

  

   昨年1215日付の本ブログで「“駅前ねぐら”ではないムクドリのねぐら・2」というタイトルで、東京・池袋西口公園の事例を紹介しました。その後月2回のペースで状況を追っていますので、そのようすを紹介します。 

池袋西口公園には「東京芸術劇場」という日本有数のクラシック音楽の殿堂がある場所ですので行かれた方は多いでしょう。ムクドリのねぐらはその建物から50mも離れていない車道内のクスノキの大木で、ムクドリたちは近くのビル屋上のTVアンテナに群れで止まり、明るさが10ルクス程度になってから、薄暗いなかで一気にねぐら入りをします。前報では100羽程度としましたが、その後200羽程度であることがわかりました。また、同じ木の下で越冬しているウグイス2羽もその姿を確認しました。

1月、2月とムクドリのねぐらは同じ状況が続きました。しかし311日には状況が変わっていました。ひとつは、ねぐらに入る前に止まっていたTVアンテナの周りに工事用の囲いができ、ムクドリたちは別々のビルの屋上に分散していました。もう一つは、ムクドリのねぐら入りがいつもと違って、クスノキに一気に飛び込むのではなく、周辺を何度も旋回しました。数も200羽をはるかに超えていました。規模は小さいながらも“夏ねぐら”のそれを思い出させるような動きでした。写真に撮って数を数えたら500羽前後とわかりました。そのためかねぐら入りしてからの鳴き騒ぎ声も、今まで5分でおさまっていたのに、10分と延びていました。さて、そうなるとここは“冬ねぐら”ではおさまらず、春からも“駅前ねぐら”が続く可能性が出てきました。 〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2022年2月22日火曜日

研究部・越冬期調査・75か所以上で調査・ご協力者に感謝します

  

   毎年実施している「越冬期調査」は、今冬から本土部の自治体ごとに1か所以上の調査地数を設定し、1月中に1回の調査をお願いしました。調査場所は、これまでの調査(カモ類を中心とした越冬期調査)との継続性を考慮し、「水辺」を選定しました。

現在まで、東京湾岸から奥多摩湖までの75か所以上からデータが送られてきています。まだ、集計・分析にはいたっていませんが、各地でオオタカ・ノスリ・ミサゴなどの猛禽が確認され、カワセミも多くの水辺で記録されています。カモも一時期に比べると復活の兆しが見えてきましたが、かつての多い普通種だったオナガガモ【写真】の記録が少なくなっています。

各地から“鳥影がうすい”という声が聞こえてきます。今冬はとくに冬鳥の小鳥が少ないようですが、皆さんのフィールドではどうでしょうか。コロナ禍のなか、調査にご協力いただきました皆様に感謝します。

                 〔日本野鳥の会東京・研究部〕                                                                                                                            

2022年1月31日月曜日

元気が詰まった地元の図鑑『見る! 聞く! 歩く! 高尾・浅川野鳥図鑑』

  

 いま「東京の野鳥」のことで、もっとも活発に活動している団体は「八王子・日野カワセミ会」でしょう。年に2回発行される会誌『かわせみ』はA4判で80ページ前後。最新号の第67号・夏号の目次を紹介しますと、野鳥の動向に関するトピックス(20211月~6月)、北浅川支流「城山川下流域」のコガモ終認調査、イソヒヨドリ 2021年も新たに14ヵ所の営巣確認、上柚木公園野鳥カウント4年間(20174月~20213月)の結果報告、ご近所探鳥会・地元発見探鳥会の報告・・・とさまざまな内容が続きます。最後の方には「鳥信」のページが27ページにわたり、722件の情報がアップされています。

 会誌のバックナンバーは同会のホームページにアップされていて、最新の2号以前のものは誰でも読むことができます。また、データはデータベース化されています。それらを基に、2016年には『八王子市・日野市 鳥類目録』(A4判・182ページ.)、『数え上げた浅川流域の野鳥Ⅲ』(A4判・202ページ)が発行されています。

そんな元気な会から、このたび、あらたに『見る! 聞く! 歩く! 高尾・浅川野鳥図鑑』という全ページカラーの本が出版されました(新書版76ページ・揺籃社刊・990円)。“地元の人が散歩のお供に”という目的で作られた写真図鑑で、販売は八王子市一帯の書店が中心のようです。近くの本屋に置いていないときはインターネットで購入できます。

収録された鳥は100種という“小さな本”ですが、その中にQRコードがあり、野鳥について詳しく知ることができます。これらの基になっている日々の着実な活動についても、同会のホームページから知ることができます。                  〔研究部・川内 博〕

2022年1月1日土曜日

1月・水鳥たちの越冬期調査を実施します

  

 この1月、東京都内(本土部)の全区市町村に1か所以上の調査地をもうけて、冬にどのような鳥がどの程度生息しているかの「越冬期調査」を行います。

   調査設定場所は“水辺のある環境”。水のあるところには鳥たちも多いということで候補地としました。池のある都市公園、大きな川や湖畔、小川の流れる散歩道、東京湾沿岸などで、具体的には新宿御苑や舎人公園、二子玉川、多摩湖、旧中川、空堀川、お台場など60か所以上となっています。

ところで、それらを選ぶとき、“水辺がない町”があることがわかりました。代表的な町は「武蔵野市」。日ごろ同市にあるJR吉祥寺駅を降りれば、近くに井の頭公園【写真】があるのでそこをと思っていましたが、よく調べてみると公園の池面は全部三鷹市でした。また、西東京市も水辺がない町で、調査地は造成された小さな池周辺を設定しました。

 これらの調査地で1月中に1時間程度の探鳥を1回して、認めた種類と羽数を集計し、都内にこの冬はどんな鳥たちが何羽くらい生息しているのかを明らかにしようということです。なお、この調査の肝は同じ調査を毎年行い、その変化に注意していきたいという計画です。

 調査者は、日本野鳥の会東京の研究部員や日ごろその活動に協力してもらっている会員、日本野鳥の会奥多摩支部の有志の方々で、皆さんボランティアで参加いただいています。結果はこのブログでも発表します。               〔日本野鳥の会東京・研究部〕