2023年2月28日火曜日

『越冬期2023』調査・あれこれ・2 コハクチョウの亜種間交雑個体ほか

  


 

この1月に本土部の都内を対象に実施した「越冬期2023」調査結果では、検討事項がありました。府中市~国立市の多摩川で越冬した2羽のコハクチョウの亜種問題。1羽はくちばしの模様からアメリカコハクチョウ(Cygnus columbianus columbianus)〔都内初記録〕と判定できました。もう1羽は亜種コハクチョウ(Cygnus c. jankowskyi)と思われました。【写真上・渡来したコハクチョウ2羽・中島徹也氏撮影】

東京都内でのハクチョウの観察は多くなく、本土部のコハクチョウの記録は、2001年以降は、2002年に江戸川区葛西臨海公園と府中市多摩川、2004年は杉並区善福寺公園、2005年は世田谷区・調布市・府中市の多摩川と武蔵村山市、2006年は日野市~調布市多摩川と杉並区・昭島市、2007年は昭島市、2011年は調布市多摩川、2012年は中野区・青梅市、2013年は府中市・多摩市多摩川、そして20221月には昭島市多摩川での記録がありました。〔※〕

 さて、問題の亜種コハクチョウと思われた個体については、くちばしがよく見える写真【写真下・1月12日・宮島明氏撮影】をもとに、当会野鳥記録委員会で、国内外の図鑑や文献(村瀬.1994)などを参考に検討して、上記2亜種の交雑個体ではないかと判定しました。ご協力いただきました、中島徹也様、宮島明様、橋本和司様、府中野鳥クラブ様に感謝いたします。

  ところで、本ブログの昨年1229日付で、“冬鳥ツグミの本隊はいつ”というタイトルで、いつもは11月には渡来していたツグミが少ないことを報じましたが、その後1月中旬ごろから少なめですが例年通りの状況になりました。     〔日本野鳥の会東京・研究部〕 

※:これらの観察記録に該当しない情報、また、コハクチョウの亜種間交雑個体についての知見をお持ちの方は、日本野鳥の会東京(研究部)あてにメールでお知らせください。

2023年2月22日水曜日

『越冬期2023』調査・あれこれ・1 ミヤマガラスの都内初記録ほか

  


   今冬1月に東京都の本土部全自治体を対象とした調査『越冬期
2023はほぼ予定通りで終了しました。ボランティアで参加いただいた調査員の皆様に感謝いたします。また、この調査にご協力いただきました団体に謝意を表します。 

この調査は昨年実施しました『越冬期2022』に続くもので、昨冬は103種を記録しましたが、今冬は仮集計段階ですが110種となっています。その中には、東京都初記録のミヤマガラスヒメハジロの雄などが含まれています。そのほか、中央防波堤埋立地ではツクシガモ、クロツラヘラサギ、セイタカシギ、ソリハシセイタカシギなどの珍鳥が観察され、多摩川からはビロードキンクロ、荒川からはコミミズクの情報が届いています。近年越冬地が広がっているコハクチョウの記録も、昨冬に続き2羽の渡来が多摩川から寄せられています。都内でも安定して飛来するようになるのでしょうか。 

一方、今年の調査で記録されなかった鳥にオシドリがいます。かつては、上野不忍池・皇居濠・自然教育園・明治神宮・新宿御苑・井の頭公園・・・など都内各地の池に群れで、飛来し越冬していたものですが、次々と消滅し、最後の砦となっていた新宿御苑も調査日には見られなかったとのこと。この地では今冬も調査日以外の日には観察されていますが、年々その数は減ってきています。彼らが好んでいる、上の池の休息場所のブッシュが刈り込まれたことが原因のひとつと考えられます。華麗なこの鳥の姿を消すことのないように植栽の管理をしてほしいところです。

『越冬期2023』調査終了後の2月5日、長年オシドリの越冬地として知られていた明治神宮の南地と北池を訪れてみました。南地はカイツブリが1羽浮かんでいるだけでしたが、北池にはマガモ13羽、カルガモ2羽、ホシハジロ2羽、キンクロハジロ1羽、ハシビロガモ1羽の5種類19羽が泳ぎ回り、採食していました。“オシドリ復活”も夢ではなさそうです。【写真】

本調査の概要は『ユリカモメ』4/5月号の「研究部レポート」で発表します。                    〔日本野鳥の会東京・研究部・川内〕