2019年12月13日金曜日

“多様性のあった”東京都の鳥たちの調査・研究・・・講演会の報告

  

121日(日)午前11時からの講演会「東京の鳥を調べてみたら・・・最近の野鳥事情」には54名の参加者がありました。演題は3つ。各40分程度の講演でした。
トップはバードリサーチの佐藤 望さんから、2017年から始まった「東京都鳥類繁殖分布調査」の途中経過が紹介されました【写真】。この調査は1970年代・1990年代に東京都で実施されたもので、20年後の2010年代の今回はNPO法人バードリサーチが中心となって、民間の資金で進められています。これまで調査がなかった伊豆諸島・小笠原諸島でも同じ方法で実施されたとのことです。
具体的な繁殖分布の変化については、増加している鳥としてキビタキとメジロなど、逆に減っている鳥としてバンとヒバリなどのメッシュ地図が示されました。この種の調査の元祖であるイギリスにも負けないくらいの精度だそうです。
二番手は、都市鳥研究会の鈴木遼太郎さんから、同会が現在全国展開している「イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか」の東京バージョンが紹介されました。イソヒヨドリの東京でのメッカ・八王子の状況や、鈴木さんが見ているJR中央線武蔵境駅付近でのようすを語られました。駅近くではここ数年来、番いのイソヒヨドリが見られていて、繁殖の可能性が高いとのことでした。都内では、渋谷や銀座などの繁華街でもその姿が見られていて、全域に広がる勢いです。“Why・なぜ?”という視点でこの現象の解明に取り組んでいるとのことです。
最後は、日本野鳥の会東京から水村春香さんが、「オオタカの東京都心部への進出状況」ということで、今では明治神宮や自然教育園でも営巣するようになったオオタカについて、同会が実施している月例探鳥会10か所のデータを分析し、山地から平地部・都市部へ分布を広げていったこと、現在では越冬期には全部の場所に定着していること、そしてこの鳥にとって林縁が重要であることなど語られました。とくに分析の結果、土地利用では「林縁長」のみがオオタカの出現頻度と正の相関があったとのことです。
 日本野鳥の会東京・バードリサーチ・都市鳥研究会共催でのこの講演会、同じ「調査・研究」といっても、それぞれの団体のコンセプトの違いがあり、“多様性”のある発表会となりました。予定通り11時に終了。講師の皆さまと末尾ながら会場を提供いただきました(株)細田工務店様に感謝します。

2019年11月16日土曜日

  

講演会のご案内・12月1日(日) 東京の鳥を調べてみたら・・・最近の野鳥事情 

  
最近キビタキの囀りをあちこちで聞くことはありませんか。しかも平地の森や林で。サンコウチョウも以前に比べると特徴のあるあの声を耳にすることが多くなってきました。また、都心部ではまったく見かけなかったエナガがJR山手線の内側の緑地でもふつうになっています。最大の変化はオオタカ・ツミといった“森のタカ”が23区内で何番いも繁殖しています。一方、ヒバリやセッカの声が寂しくなったと思いませんか。コサギ・ゴイサギも以前に比べるとめっきり見かけなくなりました。身近な鳥・オナガも生息分布に変化があるとか。

講演会は日本野鳥の会東京・バードリサーチ・都市鳥研究会の共催で、それぞれ都内全域を対象とした「鳥類繁殖分布」や猛禽類の生息調査が行われ、さらに“新顔”イソヒヨドリの話などが登場します。[グラフはオオタカの明治神宮での出現状況]

講演  東京の鳥を調べてみたら・・・最近の野鳥事情

(1)こんなに変わった東京の鳥たち・・・東京都鳥類繁殖分布調査から
                            佐藤 望氏(バードリサーチ)

(2)イソヒヨドリが東京の街にやって来た
                      鈴木遼太郎氏(都市鳥研究会)

(3) 東京のオオタカたち         
                          水村春香氏(日本野鳥の会東京)
 

明治神宮におけるオオタカの出現頻度の長期的変化。赤線は繁殖期(49月),緑は非繁殖期(103月),水色は合計の出現回数を示す。


日 時121日(日)1030分開場、11時~13 

会 場:東京・杉並・細田工務店2階会議室【地図参照】
   
【会場案内】

細田工務店[東京都杉並区阿佐谷南3-35-21]【交 通】JR中央線「阿佐ヶ谷駅」下車徒歩3分、
東京メトロ丸の内線「南阿佐ヶ谷駅」下車徒歩7

【入場無料・申し込み不要】定員100

なお、同じ会場で午後には「野鳥写真の楽しさ」の講演会が開かれ、また、同店1階では写真展も開催されています。まる一日お楽しみいただけます。

2019年10月24日木曜日

速報・三番瀬で標識フラッグ付きのミヤコドリを発見

  

 先月の925日、千葉県船橋市の三番瀬で調査中、ミヤコドリの群れの中に黒と黄色の標識フラッグをつけたミヤコドリを発見しました。フラッグには「T6」と記されていていました。【写真】
山階鳥類研究所に知らせたところ、黄色の標識であるならばカムチャツカでバンディングされたものとのことでした。
以前から日本へ越冬のためにくるミヤコドリの繁殖地はカムチャツカではないかといわれていましたが、今回の発見はそれを裏付ける貴重な観察となりました。詳しいことは、山階鳥類研究所から正式発表が出てからお知らせします。              〔田久保晴孝〕

  このフラッグ付きのミヤコドリを観察された方は、発見日時・場所・状況などを日本野鳥の会東京・研究部あてにお知らせください。

2019年9月29日日曜日

鳥への関心が高いことがわかった今年の日本鳥学会2019年度大会

  
日本で唯一の「鳥類専門の学会」である日本鳥学会(にほんちょうがっかい)の2019年度大会が、913~16日の日程で、足立区の帝京科学大学千住キャンパスと東京芸術センターの天空劇場で開かれました。
参加者に配布された講演要旨集【写真】によると、口頭発表57題、ポスター発表137題、高校生ポスター発表9題、自由集会11件とのこと。年々発表数が増えているようです。
演目のなかでは、今年は『海鳥の個体数減少の原因に関する世界的総合評価』・『北海道天売島で繁殖するウトウの採餌場所』など「海鳥」に関する発表目立ちました。猛禽類は「クマタカ」について多くなり、「オオタカ」は1件のみ。
高校生によるポスター発表にもおもしろいものが多く、都内の高校からは、都立国分寺高校から『カラスバトはどのような環境を好むか―伊豆大島での調査結果から』と早稲田大学高等学院から『ワカケホンセイインコの東京都内生息分布と生態に関するSNSを活用した調査』という東京ならではの2題が出されていました。
ところで、このところポスター発表が増えていて、興味ある発表が見きれない状態が続いています。今年はさらにこの傾向が続き、何らかの改善が必要だと感じました。
今年は都内での開催だったことと、会員以外でも会期中に1日だけ参加することができる「1日聴講」制度が試みられ、それが功を奏したのか今までの最高の909人の参加があったとのこと。一般の方の鳥への関心が高いことがわかりました。            (川内 博)

2019年7月29日月曜日

報告書『東京の野鳥たち1・2』を読み解く・CD-ROM利用の講座開催・8月25日

  

日本野鳥の会東京が主催する10か所の月例探鳥会の20年間の記録をまとめた報告書2冊に収録され、知ることができるデータはごく一部です。〔グラフ〕
『東京の野鳥たち~月例探鳥会7か所・20年間の記録~』(東京の野鳥たち・1)と『東京の野鳥たち・2~月例探鳥会3か所・20年間の記録 および 明治神宮・高尾山・新浜の長期記録~』(東京の野鳥たち・2)に収められているデータは、20年×12か月×10か所=2400項目。各月に観察された鳥はそれぞれ数十種で、種名と個体数が入っていますので、全体は数万件のデータ量となります。
今回その全データを入れたCD-ROMを作製しました。そのCD-ROMを駆使して、東京都内および東京湾岸の野鳥の状況を分析・解析するための講座を下記の要領で開きます。

日時2019825日(日)15時~17
会場:日本野鳥の会東京・事務所[地図参照]
講師:中島徹也氏  参加費500

参加条件:上記の2冊の報告書を所持、または当日取得(東京の鳥たち・1:700円、同・2:1000円)し、当日、CD-ROMのあるノートパソコンを持参できる方。初心者でも、操作は当日習得できると思います。
参加申込み818日までに下記の方法でお申し込みください。先着10名
    メールの場合:office@yacho-tokyo.org  ⓶ Faxの場合:03-5273-5142
いずれも、日中に連絡がとれる電話番号を明記してください。
問合せメールでoffice@yacho-tokyo.org〔室内例会係〕へ

2019年6月27日木曜日

都心部のカワセミは住宅難! ~造成中の土の壁面に巣穴・川の水抜き穴で繁殖!!

  
写真1
写真2


写真3 
10日間の大型連休中の53日、新宿御苑での定期センサス中に、玉藻池で2羽のカワセミの鳴き合いを耳にしました。この時期に2羽ということは近くで繁殖しているはず。池の周辺を探したところ、園の塀の外に造成中の場所があり【写真1】、工事現場の壁面に巣穴を発見しました。しばらく見ていたら巣穴からカワセミが飛び出しました。
“さて困った事態に”というのが最初の感想でした。造成地の掲示版には許可を得て工事を実施している旨が記されています。カワセミが営巣しているので工事をストップというわけにはいかないだろうとは思いましたが都の鳥獣管理員に知らせました。担当の方にはしかるべき対応をしていただきましたが、残念ながら連休明けから工事が再開され、6月下旬には立派な擁壁が完成していました【写真2】。造巣に適した場所がない都心部で、土の崖地を見つけてラッキー!と新宿御苑のカワセミ夫婦は繁殖行動に励んだのでしょうが、残念な結果でした。
土の崖地がないのならということで、川の堤防の水抜き穴で繁殖しているカワセミもいます。今年も昨年と同じところで営巣しているとの情報で、現地を訪れたら、前日巣立ったとのこと。餌をくちばしにした親鳥【写真3】と、若鳥の元気な声がきこえてきました。東京都心部のカワセミは今、どんなところで「繁殖」しているか調査中です。
                 [日本野鳥の会東京・研究部]

2019年5月18日土曜日

平地林でキビタキが繁殖・6月中にその囀りを耳にしたらご連絡を

  

東京でキビタキ〔写真・川内 博氏撮影〕の美声を聞きたければ“高尾山”が一番!ですが、最近、平地の森でもその声を繁殖期に聞くことが多くなっています。例えば代々木の明治神宮。来年は創建100年の神社ですが、その境内の森で、ここのところ、毎年複数個体が元気に囀っています。
明治神宮では過去2回の「生物総合調査」が行われていて、2回目の2010年代初めの調査では、繁殖期に継続的にキビタキが見られ、6月中旬に雌が餌をもって巣のあると思われる枝の茂みに飛び込んで、餌なしでそこから出ていったという観察があります。残念ながら10メートル近い高所で巣の確認はできていませんが、営巣していたと思われます。
実は明治神宮でのキビタキの繁殖について、約50年前の1970年代に行われた1回目の調査時にもヒナ連れの雌が観察され、繁殖していたと思われます。
最近、他の平地林や河川敷の林でその声を聞くという話があります。6月中に、平地林でその囀りしたら、研究部あてにご連絡ください。確認に出向きます。
【連絡先】office@yacho-tokyo.org  日本野鳥の会東京・研究部・繁殖係

2019年4月27日土曜日

野鳥の写真を撮って「記録」を残そう・・・写真展と写真講座の案内

  


野鳥の生態や行動、生息環境を記録する方法として「写真撮影」は有力な方法です。“野鳥写真”というとバズーカ砲のような巨大なレンズと重そうな三脚が必要と思っている方が多いようですが、双眼鏡とおなじように首にかけて持ち歩けるハンディなカメラ(超望遠コンパクトデジタルカメラ、通称「超望遠コンデジ」)で、しっかりした画像を残すことができます〔写真・浜離宮恩賜庭園庭園のカワセミ〕。

5月10日からのバードウィークに、東京・JR中央線阿佐ヶ谷駅近くの細田工務店【会場地図・杉並区阿佐谷南3-35-21】で、写真展「美しい野鳥の世界」と講演会「野鳥写真の楽しさ」が開かれます。〔主催:日本野鳥の会東京〕事前申し込み不要でどなたでも参加できます・無料
※野鳥写真に適したカメラは?という質問や、カメラは持っているがうまく使えないという方も愛機をもっておいでください。その場で解決します。

写 真 展510日(金)~516日(木)細田工務店1階ショールーム〔お店の開店時間展示〕
講 演 会5月12日(木)午後1230分開場、午後1時~3時 細田工務店2階会議室〔エレベーター有り〕




2019年4月8日月曜日

オナガの名所・日比谷公園・・・期間限定かもしれませんが

  

ここのところ東京都心部の緑地の調査を行っています。そんななかでオナガ〔写真〕の群を必ず見かけるのが都立日比谷公園(千代田区日比谷公園)。全国のバーダーが東京に出張に行ったとき、ついでに視たい鳥のひとつ。分布が関東地方を中心に限られているため、“佐賀に行ったらカササギを”とおなじように“どこに行ったら見られるの?”という質問をよく受けます。
そんな時、「下町の公園など、どこにでもいるんだけど」と答え、ただし“必ずではない”と付け加えます。たしかに都内のどこにでもいますが、「短時間で簡単に」となるとなかなか紹介できないものです。
“今春”にかぎっていえば、東京メトロ「日比谷」・「霞が関」・「桜田門」駅などから数分の日比谷公園にいけば、公園の北東部の「心字池」~「第一花壇」周辺で15羽程度の群れがいつも見られます。
日比谷通りを隔てれば、帝国ホテルや東京ミッドタウン日比谷、祝田通りを隔てて霞ヶ関の官庁街がそびえる間の緑地です。  (川内 博)

2019年3月2日土曜日

報告書『東京の野鳥たち・2』の頒布のお知らせ

  
  昨年10月に発行しました当会月例探鳥会の記録報告集の第2『東京の野鳥たち・2~月例探鳥会3か所・20年間の記録 および 明治神宮・高尾山・新浜の長期記録~』(略称『東京の野鳥たち・2』)〔A4判・182ページ・右写真〕を頒価1,000(送料・3冊まで360円)で頒布しています。

なお、先に発行しました『東京の野鳥たち~月例探鳥会7か所・20年間の記録~』(略称『東京の野鳥たち・1』)とあわせると、10か所の月例探鳥会地〔葛西臨海公園・東京港野鳥公園・清澄庭園・明治神宮・多磨霊園・高尾山・多摩川/新浜・谷津干潟・三番瀬〕での20年間の記録を知ることができます。
また、『東京の野鳥たち・2』には、東京湾岸の5か所の探鳥記録の分析や明治神宮・高尾山・新浜の長期間の記録も収録しています。

【申し込み先】1600022 新宿区新宿51816 新宿伊藤ビル3
Fax03-5273-5142 (E-mailoffice@yacho-okyo.org のいずれかで日本野鳥の会東京・事務局に、ご住所・氏名・電話番号・書名・冊数を明記してお申し込みください。現物を振替用紙入りでお送りします。『東京の野鳥たち・1頒価700で頒布しています。  

2019年2月21日木曜日

『東京都産鳥類目録2000・自治体編』のバージョンアップについて

  
  HPにアップしています『東京都産鳥類目録2000・自治体編』のバージョンアップを行います。この目録は1975年~2000年までの東京都本土部の鳥類の出現状況をまとめたもので、全体のリストとともに、各自治体別に状況を記したものです。紙媒体のものは作っていません。このHP上にアップしたものとCD-ROM版〔写真〕でご覧いただけるような形になっています。
タイトルの最後に「Ver.1.01」とあるように目録は改訂されていません。現在新しい東京都産鳥類目録の作成企画段階です。
研究部ではこの改訂作業を行います。併せて、明治以来現在までの、東京都産鳥類リストの作成を進めています。興味をお持ちの方は下記の項目にご協力ください。
(1)『東京都産鳥類目録』(東京都発行・1974年)、『東京都産鳥類目録2000(日本野鳥の会東京支部発行・2009年)に収録されていない観察記録をお持ちの方は、種類・場所・年月日等をお知らせください。
(2)島嶼部(伊豆諸島・小笠原諸島・その間の海上)での観察・撮影記録を「まとまった形の報告」(〇〇島の鳥類記録など)で作成された方は、その旨をお知らせください。
(3)この企画に興味を持ち、何らかの形で協力できる方(メールで連絡が取れる方限定)は、お申し出ください。
【連絡先】E-mailoffice@yacho-tokyo.org 研究部目録係
                 〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2019年1月13日日曜日

越冬期調査・カモを中心とした個体数調査の調査期間を1月末まで延長します

  
日本野鳥の会東京・研究部が呼びかけています15日(土)からの越冬期調査「カモを中心とした個体数調査」の終了日を131日(火)まで延長します。
これは、今後予定しています報告書作成の準備として、なるべく多くの場所の現況を把握するためです。197090年ごろに、120か所くらいの調査場所を把握していますので、その記録比較するため、今冬なるべく多くの現況を押さえようと考えています。
今回調査場所の調整は行っていないため、調査場所が重複することもあると思われますが、日ごろ調べている場所、また、興味ある場所の調査をして、下記にご報告ください。【写真:新河岸川のアメリカヒドリとヒドリガモの雑種・雄・川内 博氏撮影】

【1月12日までに調査報告が来ている場所・順不同】
東御苑、北の丸公園、外濠公園新宿御苑、小石川後楽園、六義園、武蔵関公園、浮間公園、舎人公園、水元公園、井の頭公園、多摩川〔多摩川原橋~上河原堰〕、石神井川〔一部〕、新河岸川〔都内全域〕、妙正寺川〔全域〕、奥多摩湖、中央防波堤埋立地

【報告・問合せ先】office@yacho-tokyo.org 日本野鳥の会東京・研究部・カモ係