2023年12月26日火曜日

東京原宿・神宮前交差点のムクドリのねぐらのようす

  



  東京でもっともおしゃれな街のひとつの「原宿」。ムクドリの群れのねぐらは、東京メトロ副都心線と千代田線が地下で交差する真上の「神宮前交差点」わきの表参道通りのケヤキの街路樹。ここに毎夕集まり、夜を過ごしています。この地に10月ごろからねぐらをつくり、ここ数年は12月初め、街路樹に取りつけられたイルミネーションの点灯時期には姿を消していました。【写真・上】 しかし、今年は1221日夜1720分に立ち寄った時も数百羽の声が響いていました。ムクドリがこの一帯でねぐらをとるようになって10年くらい経つようですが、あまり“話題”になったことがありません。

その理由は、まずムクドリのねぐらで問題となる「声」は、周りの車や飛行機の騒音と一体化し、特に目立つことはなく、また、空から降ってくる「糞」については、気づく人は避けていますが、ほとんどの観光客やエレベーターを待つ人は意識していないようです。足元の地面や手すりなどには結構な量の糞が落ちているのですが。

今冬、ムクドリたちが立ち去らない理由の一つは、“暖冬”のためかケヤキの葉がまだ落ちていないことが考えられます。【写真・下】  木枯らしが吹き、木々が裸になったらさすがにこの地からいずこかへ去ると思われますが、年末にまた立ち寄ってみたいと思っています。しかし、“いずこ”はどこなのか、興味を持って調べているのですが、今のところ見当がつきません。                                                                 〔川内 博〕

2023年11月27日月曜日

東京都心部でイスカの群れ・未発表の記録はありませんか

  

  118日、午前10 時半ごろ、文京区小石川植物園での定期センサス調査を終え、仲間と鳥合わせをしていた時、頭上を10羽程度の小鳥の群れが飛びました。双眼鏡で追っていた時、数羽の羽色が“渋め”の赤色! 瞬間的に“イスカ!”と思いましたが、今まで数回しか見たことがなく、距離があったこと・飛んでいたことなどから確信は持てず、近くの林に飛び込んだこの鳥の正体を見定めようと努めましたが、10分ほどで飛び出した群れは一気に園外へ飛び去り、後ろ姿では確認はできませんでした。しかし、下記のことから、今秋同一の群れが都心部で飛び回っているのではないかと思っています。 

11月12日、同じく定期センサスを続けている港区の自然教育園から、園内での観察情報として、常連の入園者から1026日に園内で撮られたというイスカの写真が送られてきました【写真・イスカの雌雄・島田一氏撮影】 全部が写っているカットで確認すると雄5羽・雌2羽、性別判定不能1羽の8羽でした。 

イスカは北半球の北部に広く分布していますが、日本では少数飛来する冬鳥。東京本土部での記録は少なく、21世紀に入ってからは、200111月に青梅市御岳山で15羽、同年12月に檜原村三頭山で10羽、20021月に府中市多磨霊園で1羽、200411月に千代田区東御苑で5羽、御岳山では2007年・200811月に1羽と20羽、2010111羽が記録されています。島しょ部を含め、都内でのイスカの未発表の記録がありましたら、研究部宛にお知らせください。            〔川内博〕

2023年11月6日月曜日

東京都の鳥を知る 川上和人著『無人島、研究と冒険、半分半分』2023年9月・東京書籍・311pp.

  

   タイトル・表紙の絵とも“なんじゃコレは!”といった感じですが、読み進むうちにその意図がわかってきます。【表紙写真】 この本は、東京から1300㎞南下した、太平洋上に浮かぶ無人島「南硫黄島」(みなみいおうとう)での生物総合調査のようすを、専門の鳥類を中心に書かれているものです。この本の著者・川上和人さんは、『鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ』・『鳥肉以上、鳥学未満』など奇抜なタイトルの著作が多数あり、広く読者を獲得されています。本書も平易に書かれていて、研究の成果も“冒険の意味も知ることができます。
 南硫黄島は無人島で、東京都小笠原村に属し、そこの調査は1982(昭和57)年・2007(平成19)年・2017(平成29)年に行われていて、川上さんは2回目・3回目に鳥類担当者として上陸されています。3回目の調査にはNHKが同行し、放映されていますので、調査の様子はオンデマンドなどで観ることができます。本書に興味を持たれたら、その番組を観ると表紙の絵の意図も具体的に知ることができるでしょう。 

 ところで、その川上さんが千葉県我孫子市で開催されたジャパンバードフェスティバルで講演されるとのことで114日に聴講しました。チラシには「第33回鳥学講座」と記され、案内文も専門的なことが主でしたが、講演タイトルは「小笠原諸島の海鳥は、増えたり、減ったり、海を越えたり、超えなかったり」と川上流。話の内容は本と同じように、学術的に裏付けられたもので聞きごたえがありました。それは聴衆の皆さんがよく知っていて、開演1時間前から待っている人がいたとのこと。20分前に列に並んだ私は定員組(120名)に加われず、立ち見組30名でなんとか入れました。聞きごたえがあった証拠は、講演後の質問タイムで、手を挙げた人の多くが小学生から20代までの若者で、さまざまな角度からの「的確な質問」があり、話の内容がよく理解され、興味を持たれたことを物語っていました。                                 〔川内博〕



 


2023年10月24日火曜日

Zoom研究部例会・多摩川の鳥の「今と昔」を知ることができました

  


日本野鳥の会東京・研究部例会を、1022日(日)にZoomで実施しました。目的は『多摩川の鳥の今と昔』を知り・考えること。今回の講演タイトルは『「多摩川鳥類カウント」(20192021年)の調査結果について』 講師は調査報告書『多摩川鳥類カウント再現』のまとめをされた御手洗 望

内容は、1976(昭和51)年度と1986(昭和61)年度に実施された調査記録と今回(20192021年)の記録の3つを比べたもので、並べたグラフで、多摩川の“今と昔”を知ることができる鳥の出現状況を紹介。水鳥ではカモ類・カイツブリ類・カワウ・サギ類・クイナ類・シギ類・チドリ類・カモメ類・カワセミ、陸鳥では、ヒヨドリ・オオヨシキリ・セッカ・セキレイ類・ホオジロと多種多様。しかし、全体的には年を経るごとに生息数や生息期間が減少する鳥が目立ち、“多摩川の鳥が減った!”という日頃の実感をいまさらながら“再現”させられる内容でした。

減った鳥の代表はカモ類。その代表格はオナガガモ。次いでマガモ・コガモ。どこにでもいると思っていたカルガモも減少気味。他の水鳥でもカイツブリ・バン・シロチドリ・ゴイサギなども少なくなっています。逆に増えた代表格はオオバン。アオサギやダイサギ【写真】も増加。かつては記録がなかったカンムリカイツブリが今回の調査で登場。カワセミは数少ない復活組。

今回は全体で1時間20分程度ということで、変化への追及・解析などはありませんでしたが、まずは現状を知って次の一歩といったところです。御手洗さんに感謝。             〔研究部・川内〕

2023年10月4日水曜日

研究部例会・講演会「多摩川の鳥の今と昔」      10月22日午後4時からZoomで・お問い合わせください

  

  コロナ禍ため「研究部例会」はここのところ開催していませんでしたが、このたび「Zoom」で開催することになりました。その第1回として、2019年~2021年にかけて、多摩川河口(東京都大田区)~万年橋(同青梅市)で実施された「鳥類カウント調査」の報告を行います。【写真・南の国にわたり途中のノビタキ・2019年10月21日多摩川で撮影】

の調査は、約40年前に行われた調査〔1976(昭和51)年6月からの1年間と、1986(昭和61)年9月からの1年間、建設省京浜工事事務所からの委託で行われて実施〕と同じ場所・同じ方法で実施し、長い歳月を経て、多摩川の鳥にどのような変化があるか検証しようという試みです。その成果は『多摩川鳥類カウント再現』(A4判・259pp)という報告書〔本ブログ・2021年9月26日付をご覧ください〕にまとめられました。今回は、その調査と報告書のまとめにかかわられた御手洗望氏による講演会です。 

当初は1年間で終わる予定でしたが、コロナ禍や台風19号の影響で、足掛け3年かかった“難工事(調査)”となりました。今回は調査のようすや成果を広く知っていただくため、調査関係者以外の方にも参加できるようにと考えています。興味を持たれた方は下記〔※〕にメールでお問い合わせください。担当からご連絡します。

※:office@yacho-tokyo.org 日本野鳥の会東京・研究部・室内例会係あて  〔10月15日までに〕 

 講演会:多摩川の鳥の今と昔  講師:御手洗望氏(日本野鳥の会東京・研究部) 日時:2023年10月22日(日)午後4時~5時30分 Zoom利用     

                 〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2023年9月17日日曜日

東京都区内でのフクロウの近況・2

  

  東京都区内の猛禽類の繁殖調査を実施していますが、その中の「フクロウ」の繁殖が、葛飾区の水元公園で観察されました。確認したのは同公園を中心として自然観察・調査を続けている長谷川恵一さん。その報告は長谷川さんが所属する「みずもと自然観察クラブ」の会報『かいつぶり・361号』に載せられていました。 

水元公園は埼玉県三郷市と接していて、広大な水辺と森と広場があり、23区内でもっとも広い(96.ha)都立公園です【写真】。報告によると今年の716日に、あまりよく飛べない巣立ちビナを確認。近くに親鳥もいて給餌をしているような行動も観察されたとのこと。721日にも少し飛べるようになったヒナと親鳥の給餌が認められていますが30日には親鳥だけ、そして86日には親鳥もヒナも確認できなかったとのこと。同公園では2009年にも営巣が観察されているとのことです。

 

この公園には園内に水辺沿いにバードサンクチュアリがいくつもあり、カワウやサギのコロニーなどもあります。今年56月の研究部の現地調査ではキビタキやウグイスの囀りが各所で聞かれています。また、かつては同じフクロウ類のアオバズクの繁殖地としても知られている場所です。             〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2023年8月28日月曜日

大森ふるさとの浜辺公園のムナグロ

  

  8月中旬の大潮の日、大田区の大森ふるさとの浜辺公園に行ってみると、人工干潟の上でムナグロが採餌しており、最大で7羽を観察できました。距離が遠くて画像は不鮮明ですが3羽のムナグロが写っています【写真】。この公園は2007(平成19)年に、京浜急行の大森町駅や平和島駅からそれぞれ徒歩15分くらいの内川の河口部に造成された海浜公園です。公園には人工砂浜が設けられていて、特に夏は家族連れなどに大人気です。釣り船などの通る水路と人工砂浜の間には船の波を除けるための堤防があり、その周囲が干潟として造成されています。この干潟を利用するシギ・チドリはあまり多くないのですが、その中でムナグロは観察される頻度が高いようです。 

この場所では大田区都市基盤整備部によって四季を通じて鳥類、魚類、植生などの調査が行なわれており、私も鳥類調査の調査員として参加しています。調査の結果は環境調査報告書として毎年大田区より発行されます。この資料を使ってムナグロの観察頻度を定量的に調べてみました。季節は春(45月)、秋(810月)、冬(112月)を対象とし、夏(67月)はシギ・チドリが観察されないので除外しました。20195月から20231月までのほぼ4年間のデータでは、ムナグロが観察されたのは16/31回(調査3116回)で、季節ごとの内訳は春:2/8回、秋:9/12回、冬:5/11回となりました。春は少なく秋に多いのですが、冬にも4割以上の確率で出現しているのが注目されます。なお観察の最大羽数は春:1羽、秋:11羽、冬:3羽でした。 

上記のデータは近年の三番瀬探鳥会や谷津干潟探鳥会におけるムナグロ出現頻度よりも明らかに高く、「ムナグロを見るならふる浜へ」と言えなくもありません。ただし昨年はなぜか出現が1/7回と少なかったのが気になります。今年の秋、そして冬の状況に注意したいところです。                       〔川沢祥三〕

2023年8月19日土曜日

猛禽類の台頭で「東京の鳥相」はどう変わるのか

  

   今年の研究部の継続活動に「猛禽類の生態・繁殖調査」があります。とくに注目しているのは、人が大勢住み・働いている市街地の「鳥相」で、オオタカ・ツミ・チョウゲンボウ・アオバズクに加えてフクロウが繁殖種に加わり、かつての東京では考えられなかった“猛禽類繁栄”の時代となっています。 

今春、都内全域を対象にした『繁殖期2023』調査でも、市街地の緑地でのオオタカの繁殖・生息記録が目立ちました。なかにはオオタカが1つの緑地で2か所という例もありました。また、ツミやチョウゲンボウ、トビ、アオバズクの営巣も報告されました。とくに鳥類を主食とするオオタカ・ツミ・チョウゲンボウの台頭は、街なかに棲む野生鳥類に影響がないわけはありません。“コサギなどの小型のサギを見かけなくなった”・“シジュウカラの数が減った”などの観察や調査結果が耳に入ってきます。まだ、きちんとした裏付けるデータは少ないようですが、今後いろいろな情報・データが出されてくると思われます。【写真・洗足公園で水浴びをしていたツミの若鳥・川内博撮影】

前世紀末の19752000年にかけての四半世紀は、東京を中心とした首都圏の街は“カラス天国”でした。そのようすは銀座や渋谷、池袋など繁華街で見ることができました。しかし、1999年に当会が主催したシンポジウム「とうきょうのカラスをどうすべきか」を契機に、世情は一変し、東京都が行った「生ごみ対策」・「捕殺」という両面作戦が功を奏したのか、市街地におけるハシブトガラスの姿は急減しています。「鳥相」はどんな鳥がどのくらいいるのかを調べたもので、環境を現す指標の一つとなります。“カラス全盛”時の鳥相と“猛禽類台頭”の今とその違いを分析してみたいと思っています。〔日本野鳥の会東京・研究部〕                    

 

2023年8月4日金曜日

東京都区内でのフクロウの近況

  

77日付東京新聞の「生きいき生き物」のコーナーに、武蔵野市・井の頭自然文化園で撮ったというフクロウの写真が載っていました。研究部が都内で行っている「フクロウ類調査」は道半ばで、記録を地名入りでは発表していませんが、今回の記事には撮影場所が載っていましたので、ここでその状況を少し紹介します(というより、現時点ではここまでしか情報がありませんが)。 

新聞発行日の約3週間前の6月20日、井の頭公園(三鷹市)でのオオバンの繁殖状況を見に行ったついでに、井の頭自然文化園を一周していた時、望遠レンズを構えている複数の人を見かけました。何を撮っているのか尋ねたところ「フクロウ」とのこと。樹上8メートルあたりに、2羽のフクロウを確認できました【写真・川内】。 

武蔵野市では今までフクロウの記録は文献上にはありません〔『東京都産鳥類目録2000』〕。また、約20年ごとの繁殖状況が載っている地図を見ると、西多摩地区(奥多摩)から南多摩・北多摩地区へと徐々に繁殖分布を広げていることがわかりますが、まだ武蔵野市までは届いていないように見えます『東京都鳥類繁殖分布調査報告 2016-2021』(2021年刊)。ネット上でこのフクロウについて追ってみると、数年前から付近で観察されているようで、2羽定着ということであれば、繁殖も期待できるところです。 

フクロウの区内での繁殖は、すでに千代田区の皇居と赤坂御用地での事例が公表されていますが、他の「緑島」でも可能性が高まっています。なお、市街地での「夜の鳥」の観察・調査は“不審者”扱いで通報されることがありますのでご注意ください。            〔研究部・川内博〕           

 

2023年7月10日月曜日

「繁殖期2023」調査での発見・オオバンの繁殖ほか

  

   昨年に引き続いて当会研究部が実施しています、都内本土部での全区市町村を対象として「繁殖期2023」調査は7月上旬で終了しました。調査にたずさわれた方々にお礼申し上げます。データの集積・集計などは進行中ですが、興味ある観察がいくつもありました。

  その一つが“水辺” 第一報は6月15日付の本ブログで紹介した「鷺山の誕生」で、23区の山手地域で、新規に形成されることは珍しいことです。その後の観察でも、コサギ・ゴイサギの営巣が続いているようです。 次いで「かいぼり」された水辺でのカイツブリの営巣増です。とくに吉祥寺の井の頭公園(三鷹市)では明らかに増えていて、各所で抱卵している姿やヒナ連れのようすが観察できました。この公園では、2019年からアオサギ、2020年からカワウが営巣を始めています。 さらに今夏は、冬期に急激に数が増えたということで注目されているオオバンがこの池で繁殖しました。情報をもとに6月20日に同池を訪ねたところ、2羽の親鳥と3羽の“赤い顔”のヒナ【写真・川内博氏撮影】が、またその後も7月5日には親鳥2羽と成長したヒナ2羽が確認されています。内陸部の池での繁殖は初めてと思われます

 一方、同じ仲間のバンの姿をこれらの水辺で見かけることが激減しているのは心配です。彼らの生息に何が不足しているのか検討してみる必要がありそうです。                             〔日本野鳥の会東京・研究部


2023年6月15日木曜日

ヤマガラ一家を観察・新宿御苑にて

  

  613日、梅雨の晴れ間に「繁殖期2023」の担当地・新宿御苑を調査しました。新宿御苑はJR新宿駅から近く、樹齢数百年の巨木や広大な芝生広場、バラ園、池などがあり、開放的な雰囲気のためか、以前から外国人の好む公園として知られていました。この日も聞きなれないことばが飛び交っていました。 

園内には玉藻池と水系が続いている上の池・中の池・下の池の4つの池があり、冬場にはオシドリをはじめカモ類が飛来しますが、この季節にはカルガモとカイツブリだけでした。カイツブリは玉藻池で“浮巣”を造りかけていました。その巣はまだ小さく頼りない状態でしたが、無事にヒナが誕生するのを待ちたいところです。 

ところで、調査中に芝生広場のケヤキの巨木から、あまり聞きなじみのないカラ類の巣立ちビナの声が聞こえてきました。双眼鏡でよく見るとヤマガラの子供たちでした。シジュウカラの巣立ちビナよりもっと鼻にかかった甘たるい声で、4羽のヒナが葉陰から元気よく芝生地に飛び出していきましたが、すぐにUターン。戻ってきた直後、口いっぱいの食べ物を親鳥からもらっていました【写真】。

ヤマガラは東京の緑地で繁殖分布を広げている鳥で、都心ではこの園からそう遠くない明治神宮に昔からいましたが、1972年と2012年の繁殖期の調査結果を見ると、3倍の増加がみられていました。照葉樹林を好むこの鳥が、東京都心部の緑島に生息地を広げているようです。                                                                                                      〔川内博〕

2023年5月16日火曜日

東京都レッドデータブック2023〔本土部〕の発行

  

  10年ごとに改訂されているレッドデータブックの最新版『東京都レッドデータブック2023・本土部』【写真】が発行されました。冊子版は、A4判・879ページ・フルカラーという大作です。

都のホームページによると、これまでとの違いは、ポイント1・種ごとの解説を充実。これまでの写真だけでなく、種ごとの減少要因のほか、分布図やレッドリスト、カテゴリーの変遷などもわかるように掲載した。 ポイント2東京の自然の状況を掲載、東京の自然の特徴を知ってもらうための情報を掲載 ≪東京の保護上重要な自然環境≫ 希少種保全や自然再生事例の紹介 ≪東京にゆかりのある野生生物種など≫とのことです。 

鳥類部門をみると、前回の『レッドデータブック東京2013』との違いは、種ごとに分布地図がついたことと、カテゴリーが4つの地域〔区部・北多摩・南多摩・西多摩〕ごとにされていたのが、今回はそれに加えて「本土部」という項目が作られ、本土部全体での評価を知ることができるようになっていることです。 

冊子は、東京都庁の都民情報ルーム(第一庁舎3階南側)で購入できるとのことです〔15,156円〕。ただし重量が約2.5㎏ありますので、片手でパラパラとページをめくるということはできません。その点ご留意ください。ネット版は下記のサイトで冊子原稿PDFデータを見ることができます。              〔日本野鳥の会東京・研究部〕 

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/red_data_book/400100a20230424184941875.html

 

2023年4月24日月曜日

東京23区山の手でサギのコロニー発見・「繁殖期2023」調査を始めます

  

  東京23区の下町にサギのコロニーがあることは知られていますが、山の手地区でもアオサギ・ゴイサギ・コサギが営巣するコロニーが見つかりました。アオサギの巣ではヒナ4羽が大きく育っていて、岸辺からもそのようすを見ることができます【写真・川内博氏撮影】。アオサギは日本最大級の大型の魚食性の水鳥で、全国的にも繁殖分布が広がっています。このコロニーで興味深いのはアオサギのほかに、減少が著しい小型種のゴイサギコサギも営巣していることです。両種とも全国的に減少傾向がみられていて、都内でも同様です。この2種はオオタカに狙われることが多く、最近の個体数減少の一つの原因とも考えられています。そのオオタカは、23区内での営巣地は増えるばかりで、この場所でもその鳴声が響いていました。〔現時点ではいつからこのコロニーができたかはわかっていません〕 

研究部では昨年に引き続き、5月~6月にかけて、どんな鳥がどこで繁殖期に生息しているのかを知るため「繁殖期2023調査を、本土部の全区市町村で実施を予定しています。この調査はおもに昼行性の鳥が対象ですので、フクロウアオバズクコノハズクヨタカなどの「夜に目立つ鳥」の情報が不足しています。身近な場所で声や姿を確認したらお知らせください。         〔日本野鳥の会東京・研究部〕      

                 

2023年3月13日月曜日

『越冬期2023』調査・あれこれ・3 ミヤマガラスの件での訂正・他

  

  2月22日付の本ブログで誤りがありました。タイトルで“ミヤマガラスの「都内初記録」”と記しましたが、初記録はもっと前にありました。以下のように訂正し、お詫び申し上げます。 

現時点での知見では、ミヤマガラスの「都内初記録」は、清棲幸保著『日本鳥類大図鑑 Ⅰ』に記されている「足立区千住 1877:Ⅱ・1886」がもっとも古い記録となります。

最近の例では、20151129日に府中の多磨霊園で6羽が記録されています(『ユリカモメ』№727)。また、島しょ部では、八丈島で2003年以降断続的に記録され、20102011年にも観察されています(『ユリカモメ』№726)。他にも記録等ありましたら、お知らせください。 

ところで、近年このミヤマガラスが冬鳥として全国各地に多数飛来していることが話題となっていますが、東京の近くでも多数渡来している地域があります。都市鳥研究会のホームページのブログ「都市鳥最新情報」(2023310日付)〔※〕によると、昨年12月に、埼玉県越谷市内で地元の野鳥グループがカラスの集団塒で個体数調査をおこなったところ、ハシボソガラス・ハシブトガラス・ミヤマガラス・コクマルガラスの4種で3,000羽余を記録したとのこと。その中で、2割はミヤマガラスではないかと推定されています。また、隣接する吉川市での昼間の調査では、ミヤマガラス462羽・コクマルガラス29羽が観察されたとのことです。ちなみに、昨年2月に私が越谷市久伊豆神社のねぐら入りを視察した時は、神社周辺の電線に鈴なりなっているミヤマガラスの多さにびっくりしました。【写真】     〔日本野鳥の会東京・研究部・川内〕

    都市鳥研究会のブログには、本HPトップの「リンク」から入ることができます。

2023年2月28日火曜日

『越冬期2023』調査・あれこれ・2 コハクチョウの亜種間交雑個体ほか

  


 

この1月に本土部の都内を対象に実施した「越冬期2023」調査結果では、検討事項がありました。府中市~国立市の多摩川で越冬した2羽のコハクチョウの亜種問題。1羽はくちばしの模様からアメリカコハクチョウ(Cygnus columbianus columbianus)〔都内初記録〕と判定できました。もう1羽は亜種コハクチョウ(Cygnus c. jankowskyi)と思われました。【写真上・渡来したコハクチョウ2羽・中島徹也氏撮影】

東京都内でのハクチョウの観察は多くなく、本土部のコハクチョウの記録は、2001年以降は、2002年に江戸川区葛西臨海公園と府中市多摩川、2004年は杉並区善福寺公園、2005年は世田谷区・調布市・府中市の多摩川と武蔵村山市、2006年は日野市~調布市多摩川と杉並区・昭島市、2007年は昭島市、2011年は調布市多摩川、2012年は中野区・青梅市、2013年は府中市・多摩市多摩川、そして20221月には昭島市多摩川での記録がありました。〔※〕

 さて、問題の亜種コハクチョウと思われた個体については、くちばしがよく見える写真【写真下・1月12日・宮島明氏撮影】をもとに、当会野鳥記録委員会で、国内外の図鑑や文献(村瀬.1994)などを参考に検討して、上記2亜種の交雑個体ではないかと判定しました。ご協力いただきました、中島徹也様、宮島明様、橋本和司様、府中野鳥クラブ様に感謝いたします。

  ところで、本ブログの昨年1229日付で、“冬鳥ツグミの本隊はいつ”というタイトルで、いつもは11月には渡来していたツグミが少ないことを報じましたが、その後1月中旬ごろから少なめですが例年通りの状況になりました。     〔日本野鳥の会東京・研究部〕 

※:これらの観察記録に該当しない情報、また、コハクチョウの亜種間交雑個体についての知見をお持ちの方は、日本野鳥の会東京(研究部)あてにメールでお知らせください。

2023年2月22日水曜日

『越冬期2023』調査・あれこれ・1 ミヤマガラスの都内初記録ほか

  


   今冬1月に東京都の本土部全自治体を対象とした調査『越冬期
2023はほぼ予定通りで終了しました。ボランティアで参加いただいた調査員の皆様に感謝いたします。また、この調査にご協力いただきました団体に謝意を表します。 

この調査は昨年実施しました『越冬期2022』に続くもので、昨冬は103種を記録しましたが、今冬は仮集計段階ですが110種となっています。その中には、東京都初記録のミヤマガラスヒメハジロの雄などが含まれています。そのほか、中央防波堤埋立地ではツクシガモ、クロツラヘラサギ、セイタカシギ、ソリハシセイタカシギなどの珍鳥が観察され、多摩川からはビロードキンクロ、荒川からはコミミズクの情報が届いています。近年越冬地が広がっているコハクチョウの記録も、昨冬に続き2羽の渡来が多摩川から寄せられています。都内でも安定して飛来するようになるのでしょうか。 

一方、今年の調査で記録されなかった鳥にオシドリがいます。かつては、上野不忍池・皇居濠・自然教育園・明治神宮・新宿御苑・井の頭公園・・・など都内各地の池に群れで、飛来し越冬していたものですが、次々と消滅し、最後の砦となっていた新宿御苑も調査日には見られなかったとのこと。この地では今冬も調査日以外の日には観察されていますが、年々その数は減ってきています。彼らが好んでいる、上の池の休息場所のブッシュが刈り込まれたことが原因のひとつと考えられます。華麗なこの鳥の姿を消すことのないように植栽の管理をしてほしいところです。

『越冬期2023』調査終了後の2月5日、長年オシドリの越冬地として知られていた明治神宮の南地と北池を訪れてみました。南地はカイツブリが1羽浮かんでいるだけでしたが、北池にはマガモ13羽、カルガモ2羽、ホシハジロ2羽、キンクロハジロ1羽、ハシビロガモ1羽の5種類19羽が泳ぎ回り、採食していました。“オシドリ復活”も夢ではなさそうです。【写真】

本調査の概要は『ユリカモメ』4/5月号の「研究部レポート」で発表します。                    〔日本野鳥の会東京・研究部・川内〕 



2023年1月21日土曜日

東京・池袋西口のムクドリのねぐらの近況

  

  昨年の315日にアップした「東京・池袋西口のムクドリのねぐら」の続報です。報告した後も半月ごとにチェックしていましたが、2022年は4月30日に約200羽のねぐら入りを観察した後、51431日、61530日とも飛来は認めず、「冬ねぐら」は5月初めには解消したことがわかりました。その間、公園の並木にはカワラヒワが100羽以上ねぐらをとっているという新発見が得られました。 

その後は月1回程度でチェックしていましたが、昨年の初記録とほぼ同じ時期の122日に約50羽の飛来を確認しました。半月後の1216日には、昨年と同じ約250羽に増え、年末30日にも同数を確認しました。ところが今年初めて観察を117日に行ったところ、上空を旋回する群れが大きくなっていました。写真に撮って11羽を数えたところ3倍増の850羽。【写真】 

 このねぐら地は、道路のなかの小さな空地に植えられたクスノキの巨木で、真下を人が通ることはなく、規模も小さく、ねぐら入りするときに10分程度鳴き騒ぐ程度で、バスを待つ人、通勤通学などですぐ近くを通る人も「ねぐら」があること自体気づいていないと思われる状況です。

 しかし、各地で迷惑がられ、さまざま方法で追い出されているムクドリですので、今後この“安全の地”にさらに集まってくる可能性がありそうです。今後どのような展開になるか、興味を持って観察しているところです。
   ところで、同地でウグイスが越冬していると報告しましたが、今のところその声・姿は確認できていません。〔日本野鳥の会東京・研究部〕