2022年11月1日火曜日

図書紹介『世田谷の鳥2020 -世田谷区鳥類目録-』

           

東京・世田谷区で活動する(一般財団法人)世田谷トラストまちづくりから、「世田谷区鳥類目録」の第4『世田谷の鳥2020 -世田谷区鳥類目録-』【写真】が発行されました。編集にたずさわったのは「野鳥ボランティア」。1991年に発足したこのグループの手によって、2009年に第1弾、2010年に第2弾、2015年に第3弾の報告書が出され、本書は本年7月に出版。A4297ページに、世田谷区の概要・鳥の概要に続いて『日本鳥類目録改訂第7版』に基づいて、2266285種の「世田谷区鳥類」の記録が載せられています。 膨大な記録をもとに作成されていて、今回とくに注目したのは第Ⅳ章で、区内の7か所で行われている定例調査の結果をもとに、「主な種の個体数推移」がグラフ化され、その変化が一目で知ることができることでした。

最近、東京の市街地でのカラスの動きが注目されています。大きくは2つで、ひとつは繁華街や住宅に飛来する数が減ったこと。もう一つはハシブトガラス(ブト)の減少とハシボソガラス(ボソ)の台頭です。後の話題については、近年の東京の市街地ではブトが完全に優占し、ボソは周辺部に追いやられた状況でした。しかし、2000年以降、都内の各地でボソを見かける事例が増えています。ここで示されたグラフはその現象を裏付ける内容となっています。また、同じスカベンジャーのトビやカモメ類の変化も興味あるところで、トビの復活傾向やユリカモメの衰退が示されています。さらに、「生態上の類似点がある種の個体数比較」ということで、アオサギ・ダイサギ・コサギの個体数比較がグラフで示されていますが、この3種のサギの動きは、世田谷区だけでなく興味が持たれている問題で注視しているところです。

 本書は一地域の鳥類目録ですが、内容は充実していて、いろいろな角度からも参考になる良書です。本書はWebから無料でダウンロードすることができ、また「データCD」も希望者に提供されているようです。詳しくは下記の(一財)世田谷トラストまちづくりにお問い合わせください。       ℡:03-6379-1624  http://www.setagayatm.or.jp       

                                                                           〔研究部・川内博〕

0 件のコメント: