抱卵開始は4月中~下旬ごろで、5月上~中旬は目立った動きはありませんでした。5月28日、巣のある松の木に雌雄が寄り添って止まり、擬交尾のような行動の後に雄は飛び去りました。雌は巣に戻りましたが抱卵姿勢には入りませんでした。この時点でヒナはおそらく孵化していたものと思われます。6月初めには巣の上に初めて灰白色のヒナを確認できました。
ヒナが生まれてからは、親の1羽が巣から少し離れた樹上で見張りをし、もう1羽が魚を捕って運んでくる、というパターンが多く見られました。雌雄の協力態勢はしっかりしているようでした。6月27日には褐色のヒナ2羽が巣の上で動き、灰色頭のヒナも一瞬見えましたが、3羽目のヒナはその後確認されることはありませんでした。大きくなった2羽の幼鳥は7月8日には巣から出てすぐ横の枝に止まっていました【写真】。 7月16日の朝、1羽の幼鳥が親の見張っている枝まで飛んで親と合流し、もう1羽はまだ巣の横の枝に残っていました。親が見本を示すように飛び立ち、くるりと旋回して枝に戻りましたが、巣の横の幼鳥はなかなか飛び出す勇気が出ないようでした。その4日後の朝、多摩川の川岸から公園のほうを望むと、巣のある松の木から数十メートル離れた樹上に2羽の幼鳥が止まっているのが見えました。また親はエサを探して多摩川上空を飛翔していました。
トビの繁殖の様子を観察していると、つがいや親子のメンタルの動きがわかるような気がすることが何度かありました。人の弁当を狙ったりして悪役イメージが固定しているトビですが、今回の観察で私には少し親しみの気持が湧いています。 〔川沢祥三〕
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