2021年12月15日水曜日

“駅前ねぐら”ではないムクドリのねぐら・2 東京・池袋西口公園の事例+ウグイスも都市鳥化?

  

   夕方の「池袋西口公園」はけっこう薄暗く、帰りを急ぐ通勤客が通り抜けていました。イベントが予定されていないためか名物の大型ビジョンなどは点灯されず、観光客もいないようで、静かに暗くなっていきました。池袋駅西口ですので“駅前”ですが、これまでとはあまりにも違う状況なのでこのタイトルで紹介します。 

12月1日の夕方、研究部に所属する川内桂子さんが買い物を終えた1640分ごろ、西口五差路の交差点で、近くの「住友不動産 池袋西口ビル」などの屋上のアンテナをムクドリの群れが点々と飛び交っているのを発見。その情報をもとに、翌2日に調べに行き、16時半前からムクドリの群れを探し、池袋駅周辺を一周して、1642分に西口公園に着いたとき、バス停前のクスノキの大木からムクドリの群れの声が聞こえてきました。五差路交差点からは50mのところです。声のボリュームからすると100羽前後と思われましたが常緑樹なので、その姿は確認できませんでした。

そこで、125日に再挑戦したところ、1649分に近くのビルの屋上に止まっていた100羽以上の群れが、一斉にクスノキに入り、しばし鳴き騒いでいました。【写真】 しかし、5分後にはその声は小さくなり、周辺の車の騒音で聞こえなくなり、付近はなにもなかったような状態になりました。公園内は通勤客とバスを待つ人が並んでいるくらいで人出はありませんでした。

 群れが小さいこと、木の下はバスや車が通る道路ということもあってか、ムクドリたちはすぐに落ち着いたようです。ねぐらの木は常緑樹なので冬を通してねぐらをとる可能性があり、今後も見続ける予定です。 

ところで、このクスノキの周辺では2回の調査の際、ウグイス2羽の地鳴きがずっと聞こえていました。“ウグイスも都市鳥化?”こんなところでねぐらをとるのだろうか興味あるところです。                                                                                      〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年11月27日土曜日

“駅前ねぐら”でないムクドリのねぐら・ 東京都江戸川区の事例

  


   駅前や繁華な場所に集まる「ムクドリのねぐら」は、全国各地で迷惑がられています。そんな環境でない“街のムクドリのねぐら”を東京圏で探していますが、最近、江戸川区清新町で見つけました。東京メトロ東西線・西葛西駅から徒歩圏内で、高層マンションが建ち並ぶ住宅街です。 

11251625分、2回目の調査で西葛西駅南口に降り立つと、ムクドリの大群はここ2年ばかり来ていないのに、クスノキの大木に取り付けられた対策用の機器が、彼らの嫌うという電子音を鳴らし続けていました。駅前から幹線道路を越え、住宅街に入り、スーパー・マルエツの前を通り過ぎると、目指す高圧鉄塔の上には、すでに多数のムクドリが集まっていました。1635分、照度計は190ルクスと表示し、100羽、50羽の群れが飛んできて終結は終わり、薄暗くなった中で、ムクドリたちは鳴き騒ぎ、オナガの群れが飛び交っていました。そして照度計が30ルクスを示した1650分、ムクドリの大群は次々と斜め下の森へ降りていきました。【写真上】 全体が移動する時間は3分ほどで、数は目算で1000羽を超えていました。前回117日の調査の時は1657分、40ルクスで降りはじめ、数は1000羽以下でしたので、すこし増えたようでした。7日の日没は1641分、25日が1630分と早まっていますので、ねぐら入りもそれに連動しているようです。 

彼らのねぐらは交差点わきの樹高10mのクスノキが数10本林立する緑地。樹冠からは鳴き騒ぐ声が響いていました。【写真下】 隣接する10階建てのマンションの住民には迷惑がられていると思いますが、駅前などの繁華な場所と違うのは、鳴き騒ぐ時間で、降り立って15分後の175分には、ときどきギュルルという声が聞こえるような静けさとなりました。繁華な場所との違いは糞の問題も解消。生い茂る木々の下には歩道がなく、常緑広葉樹の葉に受け止められるためか、林床にはほとんど糞跡が見られませんでした。これらのパターンは2回の調査とも同じで、これならば我慢できるのではと思いました。 

「西葛西駅前のムクドリ」の話題は、このブログの2018226日付と20201128日付でアップしています。その概略は「3000羽以上が駅前でねぐらを取っている・そのムクドリがここのところ見かけない」ということを紹介しています。清新町のムクドリはそのムクドリの一部が新しいねぐらを見つけて移動したのかと、興味を持って調べているところです。                                               〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年10月31日日曜日

フラッグ付きのミヤコドリのゆくえ!「T6」の無事を祈る

  


  カムチャツカ半島で生まれ、脚にナンバーT6と記された足環をつけたミヤコドリが、東京湾の三番瀬(千葉県船橋市)で2019925日に発見されたことは、当ブログの同年1024日付けで紹介しました。2日後の927日には、同じ場所でいっしょに装着されたT7が伊勢湾の安濃川河口(三重県津市)で発見されています。この2羽の動きは追跡され、その年の冬にはどちらもその場に定住していることがわかりました。
 

T6は三番瀬や葛西海浜公園(東京都江戸川区)一帯を生活の場とし、2020年は越夏し、115日までは同地で観察されていましたが、1225日に、伊勢湾で野鳥を観察している久野正博さんから、「T6」が安濃川河口に来ているとの情報が寄せられました。東京湾と伊勢湾との距離は約260㎞。数千㎞の渡りをするこの鳥にとってはたいしたことではないかもしれません。2021年125日には三番瀬に戻ってきていることが確認されました。

一方T7は、翌年の春からのゆくえがわかりませんでしたが、2020715日~19日の間、北海道の道南、渡島半島の八雲町で観察されています(日本野鳥の会三重・『しろちどり』107号)。その「T7」が、20211023日に伊勢湾の雲出川河口に帰ってきたとのメールが、久野さんから寄せられました。【写真・「T7」の足環をつけたミヤコドリ・久野正博氏撮影】 

しかし「T6」の方は、125日に確認されて以来“ゆくえ不明”。「T6」発見者の田久保晴孝さんによると、ことし越夏した40羽の中にはいず、1025日に調査した時も、約400羽の群れの中に「足環付」の個体は見つけられなかったとのことでした。今回、久野さんからの続報に、この春「T6」が伊勢湾にいたと記されていました。

フラッグ(足環)個体の観察情報が集まる山階鳥類研究所に問い合わせたところ、「T6」は2月~5月まで伊勢湾で複数の観察者により確認されていて、5月に釣り糸で負傷をしたとの報告が最後とのことでした。詳細はわかりませんが、無事に再発見されることを祈っています。                                                                          〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年10月19日火曜日

知りたいことが記されていた報告書『新砂貯木場の鳥類調査報告』

  

   “新木場”は東京メトロ有楽町線・JR京葉線・りんかい線の駅が一か所につながった鉄路の要所です。かつて深川にあった“木場”が埋め立てられ、新しく造られた貯木場がある場所ということで東京港沿いに造られ、いくつもの貯木場があります。周囲を堤防で囲まれ、人が近づけない「貯木場」という水辺は、水鳥たちにとって楽園で、以前から休息・採餌・繁殖の地として、彼らは利用しています。それらの貯木場には、かつては輸入されてきた大きな材木が水面いっぱいに浮かべられていましたが、いまは輸出先で「木材」とされ日本に運ばれてきますので、“貯木場”の役割は小さくなっています。そのなかで、荒川につながっている「新砂貯木場」は、1990年代初めから、“ヨット・ボートの基地”「夢の島マリーナ」として、新しい展開をしています。 

 この貯木場には、たくさんの水鳥が生息していて、研究部は「カワウの新営巣地」として注目していた場所です。しかし、他の貯木場と同じように外部から全体を見通せるような場所はなく、かつては小船で水路から調べたこともありました。しかし、2010年代の調査はマリーナ側の岸辺から双眼鏡や望遠鏡で覗くことしかできていませんでした。今回送られてきた報告書には、これまで情報が不足していた2010年代の状況が満載されていますので、これからその内容を読み取る予定です。

 『新砂貯木場の鳥類調査報告(201410月~20175月)』〔A4判・60ページ+資料編73ページ・20216月刊〕【表紙写真】は、東京都下水道局砂町水再生センターの協力を得て、敷地内からの調査が行われ、より正確な情報が多数掲載されています。報告書は、「NPO法人 ネーチャーリーダー江東」のホームページからダウンロードして、全容を知ることができます。

担当された荒川洋一さんは、当会会員で、区内の「仙台堀川公園」の保全活動でも活動され、当会の会誌『ユリカモメ』にも寄稿されたことがあります。                                  [日本野鳥の会東京・研究部]

 

    

2021年9月26日日曜日

報告書『多摩川鳥類カウント再現』の発刊によせて

  

 私たち、多摩川鳥類カウントグループは、東急財団の援助を受けて実施した調査の報告書を、同財団の援助を活用した印刷物『多摩川鳥類カウント再現』として作成しました。 

『多摩川鳥類カウント再現』は、19766月から1年間、また19869月から1年間、当時の建設省京浜工事事務所の委託で行われた河口から青梅市万年橋までの61.8㎞間の鳥類カウントを、できるだけ同じやり方で再現し、現状把握と過去との比較をしてみようという試みです。20196月から1年間の予定でしたが、コロナ禍の緊急事態宣言を受けて、2020年の45月の調査は先送りとなり、20215月に足掛け3年にわたった調査を終えました。10代から70代までの幅広い世代65名が調査に参加し、メーリングリストで密に連絡を取り合って、順調に調査を行うことができました。 

結果は予想以上に面白いものでした。コロナ禍や台風19号による台風被害といったトラブルを含めて、40年を超える長期間での鳥類の生息状況の変動、その傾向が浮き彫りになってきました。私たちは現時点でのステップを刻みました。今後、これらの結果が先へ、また周囲へと展開し、活用されて行くことがあればうれしいです。 

                           〔多摩川鳥類カウントグループ会長・蓮尾純子 

『多摩川鳥類カウント再現』(A4判・259ページ):頒価2,000(送料込)

【連絡先】272-0137 千葉県市川市福栄4-26-1  

                 Emailzvm11117@nifty.com



2021年9月11日土曜日

“檻の中のオオタカ”から東京都のカラス対策を考える

  

  朝、代々木公園にカラスの行動調査に出かけた際、園内に入るとオオタカの若鳥の悲鳴のような大きな鳴き声が何度も聞こえてきました。すぐに見当はつきました。“カラストラップに入ったな!” 檻のなかのその姿は望遠レンズで捉えることができました【写真】。

  東京都内各地の緑地に設置されている“カラストラップ”。激増した都内のカラスを捕獲し数を減らそうとする施設で、2001(平成13)年来20年を経ようとしています。4羽のおとりのカラスを入れて、週に2回生肉を補給し、その際4羽以上かかったカラスを捕殺するという形です。都の発表によると約40か所のトラップで処分されたカラスは、昨年度約5100羽とのこと。おいしそうな食べ物につられて捉えられるカラスの多くは若鳥で、これまでの累計捕獲数は233,000羽と記されています。

  都は「カラス対策成果」を知るため、2001(平成13)年度から、毎冬都内の約40か所の集団ねぐら()でその数をかぞえていますが、初年度の36,400羽を頂点にそのグラフは急激な右肩下がりで、昨年度(2020・令和2)には11,000羽となっています。同じような傾向は都市鳥研究会が都心部3か所で5年ごとに行っているねぐら調査でも示されています。 

  農村部のように作物への加害問題がある環境と違い、市街地でのカラスの生息に大きく影響しているのは、家庭や企業から出される「生ごみ」です。ごみの管理は区市町村で行われ、多くのところでそれなりの成果が得られています。 [本ブログの前号で銀座の例を紹介しています] 最近の傾向は、都の同じページに挙げられている「都庁によせられた苦情・相談件数の推移」のグラフからも読み取ることができます。往時に比べ、その件数は90%減少したとのことです。東京都は“多額の税金を使って殺生”するトラップ作戦を考え直す時期と思います。 

  代々木公園で助けを求めていたオオタカは職員が気付いたのか、30分後、大きな声で鳴きながら、緑のなかに飛んでいきました。(川内 博)

2021年8月21日土曜日

  

   頭痛の種の“ムクドリのねぐら”問題の季節になりました。ムクドリが夕方になると毎日人通りの多い駅前や繁華街に集まって、夜半にかけて大声で鳴き騒ぎ、糞を落とし、換羽中には羽が漂い、近隣の商店・住民や通行人が迷惑をするという社会問題です。

同じく鳥が関係する“カラス問題”は「食べもの」というキーワードがあり、街なかでは生ごみなどの管理をきちんとすれば、ある程度解決できますが、ムクドリの方は、話題となって半世紀たった今も、解決の糸口も見いだせない難問です。ただ、この問題は東京23区内では少なく、千葉・埼玉などで多発しているのが特徴的です。このあたりに何らかキーがあるのかもしれません。 

ところで、そのムクドリちょっとした“異変?”がこの夏目立ちます。これまであまり見かけなかった「セミ獲り」をすること【写真・川内 博氏撮影】。ムクドリの食べ物は多様で、熟柿や木の実も食べますが、主食は地面にいる虫やその幼虫です。その中で、ここ数年来羽化途中や直後の“柔らかいセミ”を襲って食べるという光景を目撃します。以前からセミも彼らのメニューに入っていましたが、目立つようになってきました。

今夏もアブラゼミ・ミンミンゼミ・ニイニイゼミが主流で、暑いなか元気に鳴いていて、とくに数が多い・少ないという印象はありません。セミも多いのですがムクドリもたくさんいますので、彼らが群れで襲えば、それなりの影響が出るかもしれません。何か知見のある方はぜひご連絡ください。                                                                  〔研究部〕