2021年4月29日木曜日

初めて見たコサギの「波紋漁法」・江東区の旧中川で

  

 

 コサギは池や川など都内の水辺でよく見かける水鳥です。街なかの個体は人慣れしているのか比較的警戒心が小さく、まぢかでその行動を見ることができます。先日、旧中川のカワセミの人工営巣地のようすを見に行ったとき、江東区の亀戸中央公園の川沿いで、「波紋漁法」と名づけられたコサギの採食行動を初めて見ました。

 川沿いの飛び石づたいに渡れる島の岸辺で1羽のコサギがうろうろしていました。そのうち、首を伸ばし、くちばしを水面に平行にして、まるで水をゴクゴク飲むような感じで水面に波紋をたてていました。場所を移動すると、今度はくちばしを水面に斜めに入れて、くちばしを細かに開閉して、やはり波紋をつくっていました。【写真】 波紋をつくって、そこに餌になるようなものがいると思わせて、小魚を集めている行動と見て取れました。

最初の約5分間では、2回小魚を捕らえていましたが、その後、場所をいろいろ変えながらの約20分間では1回しか捕らえられませんでした。 コサギのこのような採食法(bill-vibrating)は、日本では1990年代に広島から報告があり、東京でも2000年代に上野の不忍池でも観察されています。文献でしか知らなかったこの採食行動、この鳥の「足揺らし漁法」に比べると、効率はよくないように見えました。〔川内 博〕                                      

        

2021年4月14日水曜日

街のカワセミの繁殖は「人の手助け・人工物利用」で頑張っています・ カワセミの新刊の紹介

  

 いまカワセミは繁殖期の真っ最中。4月上旬、例年観察している東京23区内の2か所を訪れてみました。1か所は下町の地下鉄駅に近い工場跡地の再開発地。その一角に造られた庭園はビオトープを意識した作りで、池を中心として周辺に植栽され、水辺には人工崖が造成されています。新しく削りだされた赤土の壁面にはカワセミの巣穴が多数掘られていました。

かつてここでは毎年連続して繁殖していましたが、ヘビに襲われ失敗して以来、ここ数年放棄されていました。区が新しい壁面を削り出したところカワセミが戻ってきたとのこと。ぶじ営巣するか待ち遠しいところです。

もう1か所は山手の川で、壁面の水抜きパイプを利用して繁殖している場所。今年も雌雄が元気に飛び回っていました。短時間での観察で、水抜き穴を利用しているかは確認できませんでしたが、状況から今年も同じ所で営巣する可能性が高いと思われます。

23区内には山手にも下町にもカワセミが巣を掘れるような自然の崖はほとんどない状態ですので、人工の崖地・人工の穴の利用など、人が関わっての繁殖ですが、たくましいカワセミ夫婦は、今年もたくさんのヒナを育てることでしょう。5月に予定している再訪が楽しみです。

ところで、“カワセミ百科”の本が出ます【写真】。自然教育園で長年カワセミの繁殖生態の研究をされている矢野 亮氏監修の『にっぽんのカワセミ』(カンゼン・20214月刊・1500円・税別)、本の帯には「一冊たっぷり♪カワセミの本」とあり、全ページ美しい“カワセミ色”に染められた楽しい本です。               〔川内 博〕


2021年3月31日水曜日

「ツバメの初認」のころ、コロナ禍の影響は・・・・情報をお寄せください

  

毎年春になると気になるのが「ツバメの初認」。昨年ヒナが孵った巣をたずねることは、この季節の恒例行事です。330日、港区白金台の目黒通りを歩いていたら、2羽のツバメが飛び交っていました。“シロガネ―ゼ”にふさわしい貫禄のあるマンションの1階駐車場に毎年営巣し、昨年は2回繁殖した巣に、雄が何度も入ってチェックを繰り返していました。【写真】 

同じ通りの500m先にも昨年子育てした巣があり、マンションの地下駐車場への通路の天井には巣が2つ残っていました。1か所は半壊状態の古巣で、もう一つは昨年子育てをした巣です。残念ながらこちらではその姿を見ることはできませんでした。付近には自然教育園をはじめ、八芳園、東大医科研など緑の多い場所ですので、都心としてはツバメの子育てがしやすい環境と思えます。今後少し範囲を広げて調べる必要がありそうです。

 しかし、コロナ禍の影響で、東京駅を中心とした3㎞四方を対象に、1985年から5年毎に30年継続続調査している都市鳥研究会のホームページには「一斉調査を中止」の知らせがアップされていました。なかなか遠出ができない状況、ご自宅やご近所、行きつけの商店街や駅などでの昨年・今年のようすをお知らせください。〔日本野鳥の会東京・研究部〕 

2021年2月26日金曜日

オンライン“オガヒワ講演会”を視聴して

  

  この講演会に接する前は“オガヒワ”という言葉を知りませんでした。正式名の「亜種オガサワラカワラヒワ」はもちろん知っていて、約40年前の夏、小笠原の母島の畑道を歩いていたとき、当時『特殊鳥類』に指定されたいたこの鳥が数羽飛び立ち、鳴声も聞いた覚えがあります。20106月下旬に同地を訪れたときには興味をもって調べましたが出会えませんでした。しかし、父島港で壮大な“お見送り”を受けて、東京・竹芝に帰った数日後の77日、すてきな写真が撮られていました。日本野鳥の会東京・研究部に所属する三間久豊さんが、母島で幼鳥タイプのカワラヒワをシャープにとらえ、その画像は同年11月号の『ユリカモメ』の表紙を飾りました【写真】。 

オガサワラカワラヒワは、最近の調査では、母島の属島や南硫黄島に数100羽生息するだけで、環境省および東京都のレッドリストでは絶滅危惧ⅠA類(CR)で、「絶滅の危機に瀕している」と評されています。さらに、昨年5月に、亜種ではなく独立種であるという研究が発表されています。 

オンラインで「全部わかっちゃう!! オガサワラカワラヒワ講演会」が行われたのは、今年の117日でしたが、私が知って視聴したのは2月下旬。下記の「見逃し配信」

https://www.youtube.com/watch?v=8IQ0JHq3jmU

で、3日かけて3時間の講演会を視聴しました。内容は多岐にわたって充実していて、タイトル通りに「オガカワ」の現状を知ることができ、 一言でいうと“見てよかった・知ってよかった”という感想です。活動について興味のある方は、公式のホームページがありますので検索してみて、アクセスしてください。   〔日本野鳥の会東京・川内 博

2021年1月29日金曜日

「意外に知られていない都会のフクロウ」予告編

  

 「都内のさる緑地では近隣にお住いの方たちが“フクロウの鳴き声を耳にするが居るのか?”という疑問を持ち続けてきました。しかし、行動時間帯が夜間ということと、別の場所から飛来してたまたま鳴いていたのか判らないので、ある意味「都市伝説」のようになっていたようです。」

 しかし、この話は根拠のない都市伝説ではありませんでした。前月の当ブログで呼びかけたように、23区内の緑地にフクロウ [ Ural owl  Strix uralensis ]が確かに生息しています。しかもペアで。その緑地で長年野鳥の写真を撮っている当会会員に、“匿名”・“場所不詳”で、この春から、会報誌『ユリカモメ』にフクロウの話を紹介してもらう予定です。お楽しみに。

ところで、都会のフクロウの話が載る予定のページはモノクロなので、上記の写真をつけても何が写っているのかわからない可能性があります。カラー写真で見ても、一目で何だといえる人は少ないのではないでしょうか。中央の洞にフクロウの横顔が見えますか? 撮影者は“匿名執筆者”の知り合いの日本野鳥の会会員で、ここにフクロウがいることをはっきりさせた証拠品です。 

「ふくろう・梟」はその独特の姿と生態から、むかしから人々から親しまれている鳥で、文学や絵画、民芸品などによく登場します。しかし“街のフクロウ”という話は、日本ではあまり聞いたことがありません。都内に想像以上にフクロウが棲んでいる可能性があります。冬はこの鳥の恋の季節。もっとも鳴声が聞ける時期です。“いるかもしれない”と思って夕刻から夜にかけて、耳を澄ましてください。                                                                     〔研究部〕

2020年12月25日金曜日

東京の街にフクロウが・・・情報をお寄せください

  

 東京23区内にフクロウが棲み始めたようです。フクロウはカラスやオオタカと同じくらいの大型の猛禽類。食べ物はネズミやモグラ、鳥など生きた動物です。おもに夕方から夜間にかけて採餌活動をしているため、昼行性の人間の目に触れることが少なく、身近にいても気づかないことが多い鳥です。そんな夜行性の猛禽を、JR山手線の内側の場所で確認したとの情報がいくつも寄せられています。なかにはペアで行動する例もあります。【写真】

東京では、以前から奥多摩の山地の森林に棲んでいましたが、最近は、東京近郊での観察例が増えていますし、巣箱での営巣も知られています。

「棲んでいる」ということは「生活できるだけの食べ物がある」ということです。実際、都心部の緑地を歩いていると“モグラの土盛り”を見かけることが多くなっています。彼らが子育ても含めて「生活できる」食糧があるのではないかと考えています。

1月~2月にかけて、雄は“ゴロスケホッホ”と鳴き、雌はさかりのついたネコのような“ギャハャー、ギャー、ゲギャヤ”といった叫び声を出しますので、都内の緑地の近くに住んでいる方・勤めている方は、夕方~夜半にかけてご注意ください。

そんな鳴声を複数回聞くことがあるようでしたら、タイトルを[ 研究部宛・フクロウ]として下記のアドレスにメールをください。確認に出向きます。E-mail:office@yacho-tokyo.org 〔日本野鳥の会東京・研究部〕

 

 

2020年11月28日土曜日

東京のムクドリのねぐら・2 最新のねぐら情報  秋・ムクドリの群れはどこに?

  

都内のムクドリの集団ねぐら地が近県に比べ少ないことは、本ブログの831日付で紹介しました。この秋はどうなっているかということで、それらの地を複数回訪れてみました。JR中央線・八王子駅(八王子市)は以前から北口に形成されていて、1012日は1000羽程度が駅前ロータリーの街路樹にねぐらをとっていました。しかし1126日に調べたところ、街路樹は強剪定をうけ、ねぐらになっていず、ムクドリたちは街路樹ぞいのビル屋上の広告用ランプの金属製の腕木に群れていました。【写真】

京王線・聖蹟桜ヶ丘駅(多摩市)の京王電鉄本社前のねぐらは、917日には大ケヤキに3000羽以上が集結していましたが、1126日には常緑樹の並木に移っていました。京王線とJR南武線が交差する分倍河原駅(府中市)近くの大型ショッピングセンター前のねぐら地は、94日には5000羽程度の大規模ねぐらを形成していましたが、1126日に立ち寄ったところ、鎌倉街道ぞいのねぐらとなっていた街路樹は剪定・強剪定を受け、鳴声も糞跡もありませんでした。買い物客の自転車を整理していた男性に聞いたところ、数週間前に剪定され、その後は飛来していないとのこと。

数年前に知られるようになった東京メトロ副都心線・明治神宮(原宿)(渋谷区)は、102日には3000羽前後を確認しましたが、1113日・23日には姿も声も、また、糞で汚れていたエレベータ-前の手すりにも新しい糞跡がなく、飛来しなくなったようです。さらに、810日ごろに新発見された、東京メトロ有楽町線・平和台駅(練馬区)の環八通り沿いのねぐら地は、917日には街路樹は剪定され、電線に約3000羽が止まっていました。1012日に訪れた時は、以前集まっていたスーパーマーケット付近にはいず、そこから100300m離れた電線に分散して止まっていました。付近で何らかのムクドリ対策がとられ、不安定な状態になっていたと思われます。そして、1123日にはその姿は消えていました。ここ10年近く大規模ねぐらとなっていた東京メトロ東西線・西葛西駅(江戸川区)の南口は、ここのところその姿・声を確認できませんでした〔822日・102日・1113日〕。

ということで、少なくとも東京23区内で確認していたねぐら地からはムクドリがいなくなったという状況です。群れを解消したのか、どこに移ったのか不明ですが、冬の期間どのような状況になるか、機会をみて観察を継続する予定です。これらのねぐら地以外をご存知の方はお教えください。       〔日本野鳥の会東京・研究部・川内〕