2026年3月31日火曜日

文献紹介 『2025年 世田谷区内野鳥調査報告書』    ~野鳥ボランティアの調査結果~

  


    東京23区でもっとも自然環境の豊かさに恵まれている世田谷区では「野鳥ボランティア」の方々によって、年間を通じ定期的に同じ方法で、区内を流れる多摩川・野川・仙川や成城みつ池緑地・砧公園・駒沢オリンピック公園・羽根木公園の7か所で定期調査が行われ、このたび報告書『2025年 世田谷区内野鳥調査報告書』〔A448pp.が発行されました。

報告は上記7か所の年間記録が一覧表で示され、その状況がグラフで紹介され、それぞれの場所での年間でようすを知ることができます。また、2023年度版から掲載されている「トピックス」は具体的でわかりやすく、興味深い内容となっています。今年は“野鳥盛衰記―水鳥の巻―”として、区内で主要なカモ(ヒドリガモ・コガモ・カルガモ・オナガガモ)およびオオバンの変化がグラフ化され、その減少ぶりが一目瞭然です。とくに目立つのは多摩川におけるヒドリガモ。また、コガモ・カルガモでも同様の傾向が見られています。さらに“オナガガモはかつてふつう種だったが、近年は希少種になった”と記されています。一方かつては希少種だったオオバンはふつうに見られるようになっています。なお、ヒドリガモ【写真】の減少原因については、とくに環境が悪化したとは考え難く、しかるべき理由は見当たらないと記されています。

 この「トピックス」は前号の2024年版では「外来種盛衰記」2023年版では「ハシブトガラス・ハシボソガラスの個体数逆転」が紹介されていて、都内での野鳥の動きの一端を知る貴重なページとなっています。 報告書は「一般財団法人 世田谷トラストまちづくり」から発行され、近いうちにネットにアップされると思います。なお、同法人から出されている大書『世田谷の鳥2020』もネットにアップされています。                                                                                         〔研究部・川内〕


2026年3月9日月曜日

ツグミの大集団が飛来 ― 東京都武蔵野市にて

  

  2026年1月8日の朝。その日は、いつもと少し違う出来事がありました。定期的にルートセンサスをしている道中、住宅の庭にあるカキの木に10羽のツグミが飛来していたのです。筆者のセンサスルートは緑の少ない住宅地が中心のため、普段見かけるツグミは多くても1〜2羽ほど。それを思うと、10羽でもなかなかの数です。このときツグミたちはヒヨドリやメジロに混ざりながら、カキの実を盛んについばんでいました。

 ところが翌日(9日)、この民家から南へ100mほど離れた植木畑で、さらに驚く光景を目にします。畑の中央に植えられた3本のカキの木に、約80羽のツグミが集まっていたのです。群れはせわしなく動き回り、少し採食してはパラパラと飛び立ち、近くの神社の森で休息。そしてまた集団で戻ってきてカキの実を食べる——そんな行動を繰り返していました。その結果、群れが行き来する電線の下はオレンジ色の糞だらけ。まさに、ツグミにとっては飽食の日となったようです。

 さらに2日後(11日)、同じ木には最大121羽のツグミが飛来していました。この時はヒヨドリやメジロの群れも加わり、カキの木はまさに鳥で鈴なりの状態。連日の採食でカキの実はみるみる減っていき、ついには果皮を残してほとんど食べ尽くされてしまいました。13日にはツグミは12羽まで減り、こうして大集団は姿を消しました。突如として現れ、わずか5日ほどで嵐のように去っていったツグミの群れでした。

  果実食性の鳥は、豊富な餌を求めて移動しながら生活することが知られています。身近なヒヨドリも、武蔵野市の住宅街では カキ→トウネズミモチ→イイギリ→エンジュ と、近隣で多く得られる果実を次々と食べていきます。やがて果実が少なくなると群れは別の場所へ移動し、残ったわずかな個体が庭先のオリーブやマンリョウの実をついばむ姿が見られます。今回のツグミの群れも、おそらく食物を探して移動する途中で住宅街のカキを見つけ、次々に仲間が集まって大集団になったのでしょう。

 ただ、不思議なことがあります。筆者はこの場所で5年ほどルートセンサスを続けていますが、これほどの大集団を見かけたのは初めてなのです。今シーズンは食物が少なく、ツグミたちはより広範囲を放浪していたのでしょうか。鳥たちと果実をめぐる関係はとても複雑であり、今回の出来事も様々な想像をかき立ててくれます。       〔鈴木遼太郎〕