2024年10月20日日曜日

『2024年版 千葉県の鳥類目録』が発行されました

  

  千葉県野鳥の会(千葉県船橋市)で、その50周年を記念し、“今まで千葉県で記録された鳥をわかる限り”でまとめたと前書きに記されている『2024年版 千葉県の鳥類目録』【右図】が発行されました。A4判・192ページ・オールカラーのなかには、2375461種と外来種14種のデータが詰め込まれています。そのうち15種は1974年以降(ここ50年間)県内での記録がないとのこと。

  千葉県野鳥の会では創設時より県内50カ所近くの地区で一斉調査を年に3回実施してきたという実績があり、水鳥類の個体数の変化を示したグラフは、一見してその状況を知ることができ、とくにチドリ目の個体数の推移は日本列島の海岸線の変化を裏付ける貴重な資料となっています。掲載されているほとんどのグラフは右肩下がり(年を経るごとに個体数が減る)ですが、ミヤコドリやコブハクチョウ、カワウのように増加傾向が著しいものや、アオサギ・ダイサギなど大型のサギは増え、ゴイサギ・コサギなどの小型のサギは減るという実態を示したものもあります。今後さらに多面的な分析が待たれるところです。

 将来、この目録をベースに、さらに充実した「千葉県産鳥類目録」ができると思いますが、この本の内容はネットでは知ることができませんので現物を入手する必要があります。おもに会員へ頒布されていますが、一般の方も1500円+送料で購入できるとのことです。詳しくは千葉県野鳥の会事務局に問合わせてください〔電話・Fax047-407-0810                                                 〔研究部〕

2024年9月27日金曜日

『日本鳥類目録 改訂第8版』が発行されました

  

 「日本鳥類目録」が12年ぶりに改訂され、この9月に『日本鳥類目録 改訂第8版』として発行されました。これまでと同じA5判で、ページ数は増えて472ページ。定価5,500円。24目83科644種・外来鳥8目31科46種の情報が収録されています【写真右】。 改訂の意図や変更点などは、ちかく『ユリカモメ』で紹介されることとなっていますので、ここでは、東京都に関係する大きなことだけ触れておきます。

 一つはこれまで“亜種オガサワラカワラヒワ”だったのが「オガサワラカワラヒワ」という独立種になったこと。この小鳥が棲んでいる場所は、東京本土から南に1000㎞離れた、太平洋上の小笠原。かつては各島にふつうに生息していたとのことですが、近年激減し、母島とその属島および硫黄列島でしか生息せず、個体数は200羽程度ではないかとされています。そのため「絶滅危惧ⅠA類」とされています。この鳥の幼鳥の写真が『ユリカモメ』2010年11月号の表紙に登場しています(三間久豊氏・同年7月7日母島で撮影)【写真左】 もう一つは、“亜種リュウキュウサンショウクイ”が「リュウキュウサンショウクイ」と独立種になったこと。今年、八王子市内でその営巣が観察され、その報告が『ユリカモメ』2024年10・11月号の研究部レポートに載っています。     〔研究部・川内〕


2024年7月31日水曜日

イソヒヨドリの「営巣場所」を調査中・ご協力ください

  

 

「海辺の鳥」のイソヒヨドリが内陸部に進出し、繁殖をしている状況は全国的に見られていますが、“なぜ”という当初からの疑問に明解な答えはまだ出ていません。ムカデやカナヘビのような地上性の小動物【写真】のものから植物の漿果までなんでも餌とし、道に落ちているパンやお菓子なども食べ、はては酔っぱらいのはいた吐しゃ物を口にし、ゴミ箱漁りまでするという雑食性からは、これまで彼らが「岩礁」にへばりついていた理由を憶測することもできません。また、東京での「大繁殖地」が八王子一帯という事実も解せません。さらに、イソヒヨドリと生態的に競合するような鳥がいなくなったという話も聞いていません。 

このような状況の中、現在力点をおいて追っているのは、「営巣場所」はどこかということです。海辺での彼らの営巣地は岩の割れ目など。海岸近くの人家への営巣も記録されていますが特に好んでということもないようです。市街地に進出してきた彼らの繁殖地は、駅前などけっこうにぎやかな場所。しかし、郊外のという例も増えています。また、繁殖場所はコンクリート造りの建物が多いという傾向はありますが木造の例もあり、どれ一つとっても解明への“決定打”がないという状況です。現在「営巣場所」の事例を集めています。興味ある方は下記にご連絡ください。

Emailhkawachi@Jcom.zaq.ne.jp        〔川内 博〕

2024年6月30日日曜日

新著紹介 『多摩川の鳥類 Ⅱ 2009~2023年の分布調査を中心に』

  

  多摩川をベースに鳥類調査を行われている廣田行雄さんが、『多摩川の鳥類 Ⅱ 20092023年の分布調査を中心に』という報告書をこの5月発行されました。A4判・437pp.の大著【写真はその表紙】。 多摩川は東京を代表する川で、山梨県の笠取山を源流に東京湾へと注ぎ込む全流138㎞、流域面積1240㎢の大河です。その最下流部の大田区から世田谷区の間で調査は行われ、タイトル通り2009年から2023年までの15年間・776回の現地踏査を中心にまとめたものです。

調査は、河口から13.3㎞の大田区田園調布4を起点とし、19.0㎞上流の世田谷区蒲田15.7㎞の間の左岸(東京都側)を上流に向かって歩き、そのあいだに目視した鳥を記録するというロードサイドセンサスを中心とし、さらに今回初めての試みとして、200m毎の標識を利用して調査地を設定し、より詳しく多摩川に生息する鳥の生息状況を明らかにし、どのような環境を利用するか・繁殖する種はどこかを明らかにしようと記録が取られています。

それらの成果は「種類構成とその変化」というコーナーで、カラーの一覧表やグラフで解説されています。また、「種別調査結果」では前作『多摩川の鳥類 Ⅰ』(2006年刊)や20062008年のセンサス記録、2008年のチョウゲンボウ繁殖調査記録なども加えられ、2059248種の記録がグラフや表などとともに簡潔にまとめられています。

3,300円・入手についてはホビーズワールド・電話03-3253-3077に問合せください

2024年5月31日金曜日

バンはいずこに・武蔵野の都立公園の近況

  

  吉祥寺の都立井の頭公園に続き、練馬の都立石神井公園でも「かいぼり」が進行しています。その影響からか、昨春、園内の三宝寺池にサギのコロニーができました。同公園にコロニーができたのは初めてのようです。営巣しているサギはコサギが一番多く、次いでゴイサギ、アオサギです。当地では3年前カワウが営巣しましたが、翌年からはアオサギが営巣。昨春にはコサギ・ゴイサギも加わりました。営巣数は正確にはわかりませんが、今春はコサギが10巣程度、ゴイサギは5巣程度、アオサギは3巣以上といったところです。

営巣場所は人の立ち入ることはできない池内の島で、のびのびと子育てにいそしんでいます。そのようすは岸から双眼鏡などで見ることができます。三脚の使用は禁止されていますので、カメラマンが居座っていることなくゆっくり観察できます。繁殖は盛りを過ぎていますが、コサギの飾り羽やヒナたちの親からの給餌の際の“大騒ぎ”などを楽しむことができます。石神井公園は大きな緑地で、付近には住宅はなく、「騒音問題・糞公害」とも無縁の世界です。 

ところで、井の頭・石神井の両公園で注意をしてみているのはバン。【写真】 石神井公園では数年前までは、数は少ないのですがその姿をたびたび見ていました。繁殖期には親子連れも確認していたのですが、ここのところバンそのものの生息が確認できていません。(繁殖は昨年1例記録されているようですが)

NPO法人バードリサーチ発行の『東京都鳥類繁殖分布調査報告 2016-2021』を見ていると、バンの繁殖は全都的に減少傾向にあるようです。さらにこの傾向は全国的にも見られているようです。原因等については今のところよくわかっていません。 

               〔日本野鳥の会東京・研究部〕

 

2024年4月11日木曜日

ハシブトとハシボソの個体数逆転・東京のカラス事情・世田谷区の調査結果から

  

 「一般財団法人・世田谷トラストまちづくり 野鳥ボランティア」発行の報告書『2023年世田谷区内野鳥調査報告書』が送られてきました。東京都世田谷区のおもな河川・公園での定期調査をまとめたもので、調査地は多摩川・野川・仙川、成城みつ池緑地・砧公園・駒沢オリンピック公園、羽根木公園の7か所。

報告書では、2023年実施のデータと分析結果、また過去5年間の変化を知ることができます。その中の最後のページに「トピックス ハシブトガラス・ハシボソガラスの個体数逆転」という紹介がありました。それによると、かつては調査地全体でハシブトガラス(ブト)の方が明らかに多かったのが2002年以降急減し、2015年時点では2種の個体数が逆転したとのこと。報告書ではその経過がグラフで示されていて、興味深い資料となっています。

2000(平成12)年前後、都内で増えすぎたカラスの状況は社会問題となり【写真】、当会主催の「とうきょうのカラスをどうすべきか」・「とうきょうのカラスをこうして減らす」というシンポジウムなどが功を奏し、今ではマスコミに登場することがほとんどなくなる状況となっています。

ところで、当時世の中を騒がしていたカラスは“ブト”の方ですので、 この報告書をみると隔世の感があります。しかし“ハシブトガラス急減”が、シンポジウム開催以後の「住民・行政による生ごみ類処理改善」と「都による捕殺作戦」だけでは説明しきれないような状況だとも思います。今後の調査・研究が必要と考えられます。〔研究部〕

2024年3月5日火曜日

東京23区の森にもアカゲラが・繁殖期にご注意を

  

  文京区の小石川植物園での定期センサスの前に、駅からやや遠回りをして占春園(大塚3丁目)に短時間ですがよく立ち寄っています。この地は江戸時代の大名屋敷に由来する庭園で、現在は筑波大学附属小学校の自然観察園となっていますが、一般の人も自由に入れる緑地です。常緑樹が主体の森となっていて、斜面下には池があり、林床にはササが生い茂りウグイスの笹鳴きの声をよく聞きます。

 32日の朝、そのウグイスのほか、ヒヨドリ・メジロ・シジュウカラ・コゲラ・キジバト・シロハラといった常連に加えて、池には久しぶりにカルガモが2羽池に浮いていました。そんな中で“キョ・キョ”というアカゲラの声が。ここでの記録は初めてですが、今冬は都心各地の緑地でその姿を見たという情報が流れています。【写真】

東京23区内でのこれまでのキツツキ類の生息は、コゲラが留鳥で普通種、アオゲラが数はごく少数ですが一部で留鳥。アカゲラは年によって冬期に少数飛来することがあるといった状況ですが、今冬は観察が多いようです。その理由のひとつには「ナラ枯れ病」の流行があると思われます。東京都の発表によると、都立公園のナラ枯れは2019年度に初めて約400本が確認され、22年度には21,600本に達したとのこと。都心の緑地でもその姿が目につきます。

 アカゲラが好むものが“枯れ木”ですので、そのことと関係していると思われます。「営巣」という状況まではいかないと思いますが、繁殖期になっても声が聞こえるようあればご注意ください。〔研究部・川内〕