2025年11月30日日曜日

東京都心部・神宮前交差点の秋のムクドリねぐら状況

  

  


 日本各地で続いている「ムクドリのねぐら(塒)問題」ですが、東京の中心部のJR山手線内では、以前からあまり大きなトラブルは生じていません。理由のひとつは集団ねぐらの発生が少ないこと、またその規模が大きくないこと、さらにねぐらをとる期間が比較的短いことなどです。そんななかで、渋谷区神宮の明治通りと表参道が交差する神宮前交差点は2010年代から続く場所で、規模が数千羽と大きく、興味をもって経過を追っています。

本ブログでは一昨年12月にその状況を紹介しましたが、今年は少し事情が違うようです。9月末に同地を訪れた時には2000羽以上と思われる群れが、ビル屋上の広告塔にびっしり止まり【写真上】、薄暗くなって定宿としているケヤキに流れ込みました。しかし、次に11月上旬夕刻に訪れたときは飛来がなく、定宿の真下となる地下道へのエレベーター付近の糞がきれいに掃除され、並木にはイルミネーションの豆電球が巻かれていました。下旬に2回夕刻に立寄ってみましたが、広告塔に姿がなく、また地面にも糞跡がないので塒形成をしていないようです。

 ムクドリのねぐらをとっている一帯は、国内外の有名ブランドが立ち並び、夕刻の歩道は外国人や若者で縁日の人出のような状況になっていますが、とりあえず今後どのような状況になるか、今後も機会をみて立ち寄ってみる予定です。                〔川内 博〕

2025年10月19日日曜日

秋晴れのなかでの小体験

  

  


 10月18日(土)今秋初めての秋晴! 早朝から自転車で“武蔵野三大湧水地巡り”を行いました。まず練馬区の石神井公園へ。三宝寺池では期待の水鳥の姿は少なく、カワセミも一声をきいただけ。ボート池もいつものキンクロハジロが渡来していないのか、8時から2つの池畔の40分の探鳥であわせて13種と寂しい状態でした。そこから約10分で杉並区の善福寺公園へ。上池・下池を一周し、ダイサギ、アオサギ、コサギ、カワウなどの姿がちらほら。カワセミは両池で声を確認。約40分の探鳥で同じく13種と低調でした。

3つ目の三鷹市の井の頭公園には10時過ぎに到着。まず目についたのが七生橋のたもとにそびえたっていて、カワウが20巣ほど営巣していた針葉樹が大きく剪定され、巣がなくなっていたことです【写真上】。人通りの多い道の真上で繁殖していたので、糞害などの対応ができなくなったのでしょうか。ここでの観察も1時間で13種。噴水池・ボート池の水が緑色になっていたのが気になりました。ただ、上空で10羽のカラスがオオタカをモビングするようすが観察できたのが唯一の収穫でした【写真下】。

ところで帰途で初めて立ち寄った杉並区立井草森公園では、1157分~127分の10分間という短時間で、エナガ・コゲラ・シジュウカラ・メジロ・ヒヨドリ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・ハクセキレイ・キジバト・カルガモ・ドバトの11種を見かけました。面積的にも前出の都立3公園とは比較にならないほど小さな区立公園で、日ごろ見かける鳥たちばかりでしたが、探鳥的には楽しい時間を過ごしました。〔川内 博〕

2025年9月30日火曜日

デジタル版野生生物目録「東京いきもの台帳」への協力

  

  

 東京都環境局が2023年から始めた「東京いきもの台帳」は身近な場所での生きものの情報を、スマホを使って送ってもらい、都内に生息する生物を記録しようという活動です。本会もこの活動に協力することとなり、まず会誌『ユリカモメ』のバックナンバーや月例探鳥会の記録をまとめた『東京の野鳥たち』、鳥信データなどを提供しています。 

 『ユリカモメ』1011月号に『デジタル版野生生物目録「東京いきもの台帳」作成の取組について』という環境局からの案内を載せています。その概要は、生物多様性保全や回復に向けて、過去から現在までに都内で記録された野生生物の情報を網羅的に収集・発信するデジタル版野生生物目録をめざしたもので、標本情報、文献情報に加え、市民科学情報を収集し、台帳として整備し、これらをデジタルマップに表示し、種や年代ごとの検索が可能なシステムを構築するとなっています。  

 現在は、トンボ・セミ・クモ類の目録が公開されていて、917日からは鳥類の調査【写真:黒目川のカワセミ・川内博氏撮影】、10月から多くの分類群の調査が開始されるとのこと。生きもののコレクションアプリ「Biome(バイオーム)」を用いて、写真を撮影し投稿するだけで協力することができるというものです。将来は自然環境デジタルミュージアムの開設をめざしているとのことです。〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2025年8月21日木曜日

新宿中央公園でのハヤブサの観察

  

 

  まぢかに東京都庁がそびえたつ新宿中央公園。812日の午後440分、園内での用事をすませて帰ろうとしたとき、曇り空をバックにカラス大の鳥影を見かけました。翼動がカラスなどと違ってあまり羽ばたかず、高層ビルと同じくらいの高さを何回も旋回。その姿は下からは黒いシルエットで、ハヤブサと思いましたが確信は持てず、カメラでその姿を追いました。しばらくすると、その鳥よりやや小さい鳥が現われ、2羽が空中で交差するような行動も見られました。【写真・上】 新宿西口の高層ビル街といえば、以前からハヤブサを見たといううわさや熱心に観察された方がいるという話は聞いていましたが、今までその姿を見たことがありませんでした。 

  市街地でのハヤブサ情報といえば、新潟や石川、大阪などの高層ビルでの繁殖が話題となっています。しかし東京での繁殖は奥多摩での崖地での調査報告はありますが、高層ビルでの確実な営巣記録はないようです。(ご存知の方はぜひ研究部あてに情報をお寄せください)15分くらい経って、大きい方が都庁第一庁舎の屋上のアンテナ〔地上250mくらい〕に止まり、何かを食べているしぐさをしていました。【写真・下】 

『ユリカモメ』の「鳥信」に掲載された過去の記録をチェックしたところ、意外にも新宿西口の超高層ビル街からの情報は1件しかありませんでした。その検索途中で、私自身の池袋駅西口での20233月の報告を見つけました。ちょっとした記録でもいつの日か意味のある「データ」となるかもしれません。ぜひご投稿ください。    〔研究部・川内 博〕

2025年7月27日日曜日

北上するシロハラクイナ・この春に新宿御苑で観察

  

  南方系の水鳥・シロハラクイナ(白腹水鶏)が今年の42627日に、新宿御苑(新宿・渋谷区)の玉藻池で、池の周りの土手で歩いたり、水を飲んだりする姿が1羽観察されました【写真・長嶋俊行氏撮影】

東京都内では、2002(平成14)年12月に、大田区の東京港野鳥公園で1羽観察されたのが初めてと思われます。その後200445月に練馬区の光が丘公園・バードサンクチュアリで1羽が確認され、また、同年6月には江戸川区の葛西臨海公園・上の池で観察されています。また、島しょ部でも三宅島・八丈島、父島、母島で記録されています。 

この鳥は、日本ではかつてはおもに沖縄県に留鳥として生息する鳥とされていましたが、1980年代になると鹿児島県や高知県でも繁殖が確認され、20062007年にかけて、埼玉県では越冬・繁殖が記録されています。そのほか、日本各地で生息や繁殖が記録されているようです。同じ南方系のリュウキュウサンショウクイの生息・繁殖地の北上傾向が顕著ですが、シロハラクイナも北上傾向が高いと思われます。 〔研究部・川内〕

2025年7月7日月曜日

今シーズンはカッコウが少ない?・三鷹市周辺から

  


朝日が地面に影を作る午前5時。まだ人気の少ない住宅街に、カッコウののどかな声が響きます。声の出処は、住宅に囲まれてぽつんと残された農家の屋敷林です。ひときわ背の高いケヤキの頂にとまり、大きな口を開けて鳴く様子が、双眼鏡でもはっきりと見えます。

東京都三鷹市の住宅街では、例年5月下旬にカッコウが渡来し、7月半ばまでその姿や声を頻繁に見聞きすることができます。しかし、今シーズンはその状況に異変が起こっています。初認日は、例年よりやや遅い5月25日でしたが、その後は6月9日、6月18日と2回確認したのみで、毎朝声を聞くような状況ではありません。確認地点も例年とは異なり、6月の2日間はかなり遠方から声が聞かれました。総合すると、今シーズンは例年のように屋敷林をテリトリーする個体はいないようです。また当地以外でも、都内でカッコウの声を聞いていません。

三鷹市のカッコウに何があったのでしょうか。当地での主要な托卵鳥と考えられるオナガは、今年も屋敷林の周辺で繁殖しています。住宅地や屋敷林周辺にも、特に環境の変化はありません。1つ考えられることとして、餌となる昆虫の少なさがあります。上空を飛ぶトンボや、灯火に飛来する甲虫やガなど、身近で見られる昆虫が以前よりも明らかに減っています。ここ数年の昆虫の減少傾向は、梅雨時の異常な高温や、猛暑日の長期化とも関係しているのかもしれません。

北多摩の場合、カッコウの個体数は以前から多くはありませんでした。農耕地が点在する環境でのみ少数が見られていたことから、本種の生息にあまり適した環境ではなかったのかもしれません。それが、ここ数年の食資源の減少傾向により、ついに生息できない環境になってしまったのでしょうか。

興味深いことに、今シーズンは他の地域でもカッコウ科の鳥が少なかったそうです(NPO法人バードリサーチ 公式X https://x.com/BirdResearch/status/1939193511867490587)。皆様のフィールドでは、カッコウやホトトギスの動向はいかがですか。〔鈴木遼太郎

2025年4月29日火曜日

自然教育園で「オオタカの繁殖記録」を公開中

  

  港区の自然教育園では419日~76日の間で、企画展「自然教育園のオオタカ~都会に生きる空のハンター~」が開催されています。

 自然教育園では2017(平成29)年6月に、園路の真上でカラスの古巣を利用して、オオタカが営巣を始めました。翌年には巣立ちも記録され、その後、営巣場所を変えながら2024年までに19羽のヒナ(幼鳥)が巣立っています。そのようすは、営巣を始めた初期からビデオ撮影されていて、抱卵やヒナへの給餌、ヒナの成長のようすなどが克明に記録されています。なかには真夜中にハクビシンやアオダイショウに襲われるシーンなども撮影されています。それらのようすは大型モニターで見ることができます【写真左】。 

 今回の企画展では、これまでの繁殖の記録がパネルで展示され、短時間で全貌を知ることができます。ところで大都会の環境の中で彼らが何を餌にしていたのか興味深いところですが、キジバトやドバトが6割・クマネズミやドブネズミが1割などと円グラフでわかりやすく示されていています【写真右】。また、それらのようすを記録した「機材」も紹介されていました。                             

  自然教育園は65歳以上・高校生以下の方の入園料は無料ですので、年齢証明できるものをご持参ください。