「ことしのウソやキクイタダキ・ヒガラはどこから来たのか」について、私は次のように考えています。
亜種アカウソが日本に繁殖しないことは繁殖期に国内で山歩きをされる方はご存じのとおりで、冬鳥として渡来しているアカウソが、日本より北から飛んできているのは、2月14日付のブログに書かれている通りだろうと思います。ですが今年が「例年以上に『アカウソ』が多い」というのは、にわかにそうだといえない気がします。たとえば、2006~7年にも関東南部にウソがたくさん渡来しましたがそのときもむしろ亜種ウソは少なかったのではないかと思います。〔写真:葛飾区水元公園にて・川内博氏提供〕
東京都→千葉県と移り住んできた私などもウソは基本的に夏山に登って見る鳥で、おのずと雄の腹が灰色の亜種ウソを見て、普通の冬は種ウソにはあまり出会わない生活をしています(あるいはそれは冬に山沿いや北のほうに出かけてまめにバードウォッチングしてないというだけかもしれませんが)。そのため亜種アカウソにはなじみがなかったのですが、亜種アカウソはもともと冬鳥としてはいたってありふれた鳥のようです。高野伸二さんは、亜種アカウソについて「冬期には本州以南でも普通に見られ」(野鳥識別ハンドブック, 1980)と書かれています。また、国立科学博物館名誉研究員の森岡弘之さんは、「An abundant winter visitor to Japan (日本ではたくさん渡来する冬鳥)」(「日本およびその周辺地域のウソの亜種」国立科学博物館専報25,1992 )と書かれています。
というわけで「例年以上に」の例年がくせもので、そもそも、例年は関東の平野部ではウソはあまり見られないということがあり、そのためもあって実際には、関東南部のバードウォッチャーは従来ウソの亜種にあまり敏感でなかったところ、昨今の写真ブログの隆盛と、それに付随して、識別点がインターネットで流布したことによって、アカウソの存在を気にする人が以前より増えてきたために、以前より多くなったように感じているという可能性も考慮する必要があると思います。ウソ1種をとっても今年の冬鳥の状況が日本国内だけの事情でないことは明らかだろうと思います。私の聞いているところでは韓国でも普段飛んでこないところにウソが見られているそうです。ヤマガラも韓国、中国で普段見られないところに飛来しているそうです。 (平岡
考)
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