2023年8月28日月曜日

大森ふるさとの浜辺公園のムナグロ

  

  8月中旬の大潮の日、大田区の大森ふるさとの浜辺公園に行ってみると、人工干潟の上でムナグロが採餌しており、最大で7羽を観察できました。距離が遠くて画像は不鮮明ですが3羽のムナグロが写っています【写真】。この公園は2007(平成19)年に、京浜急行の大森町駅や平和島駅からそれぞれ徒歩15分くらいの内川の河口部に造成された海浜公園です。公園には人工砂浜が設けられていて、特に夏は家族連れなどに大人気です。釣り船などの通る水路と人工砂浜の間には船の波を除けるための堤防があり、その周囲が干潟として造成されています。この干潟を利用するシギ・チドリはあまり多くないのですが、その中でムナグロは観察される頻度が高いようです。 

この場所では大田区都市基盤整備部によって四季を通じて鳥類、魚類、植生などの調査が行なわれており、私も鳥類調査の調査員として参加しています。調査の結果は環境調査報告書として毎年大田区より発行されます。この資料を使ってムナグロの観察頻度を定量的に調べてみました。季節は春(45月)、秋(810月)、冬(112月)を対象とし、夏(67月)はシギ・チドリが観察されないので除外しました。20195月から20231月までのほぼ4年間のデータでは、ムナグロが観察されたのは16/31回(調査3116回)で、季節ごとの内訳は春:2/8回、秋:9/12回、冬:5/11回となりました。春は少なく秋に多いのですが、冬にも4割以上の確率で出現しているのが注目されます。なお観察の最大羽数は春:1羽、秋:11羽、冬:3羽でした。 

上記のデータは近年の三番瀬探鳥会や谷津干潟探鳥会におけるムナグロ出現頻度よりも明らかに高く、「ムナグロを見るならふる浜へ」と言えなくもありません。ただし昨年はなぜか出現が1/7回と少なかったのが気になります。今年の秋、そして冬の状況に注意したいところです。                       〔川沢祥三〕

2023年8月19日土曜日

猛禽類の台頭で「東京の鳥相」はどう変わるのか

  

   今年の研究部の継続活動に「猛禽類の生態・繁殖調査」があります。とくに注目しているのは、人が大勢住み・働いている市街地の「鳥相」で、オオタカ・ツミ・チョウゲンボウ・アオバズクに加えてフクロウが繁殖種に加わり、かつての東京では考えられなかった“猛禽類繁栄”の時代となっています。 

今春、都内全域を対象にした『繁殖期2023』調査でも、市街地の緑地でのオオタカの繁殖・生息記録が目立ちました。なかにはオオタカが1つの緑地で2か所という例もありました。また、ツミやチョウゲンボウ、トビ、アオバズクの営巣も報告されました。とくに鳥類を主食とするオオタカ・ツミ・チョウゲンボウの台頭は、街なかに棲む野生鳥類に影響がないわけはありません。“コサギなどの小型のサギを見かけなくなった”・“シジュウカラの数が減った”などの観察や調査結果が耳に入ってきます。まだ、きちんとした裏付けるデータは少ないようですが、今後いろいろな情報・データが出されてくると思われます。【写真・洗足公園で水浴びをしていたツミの若鳥・川内博撮影】

前世紀末の19752000年にかけての四半世紀は、東京を中心とした首都圏の街は“カラス天国”でした。そのようすは銀座や渋谷、池袋など繁華街で見ることができました。しかし、1999年に当会が主催したシンポジウム「とうきょうのカラスをどうすべきか」を契機に、世情は一変し、東京都が行った「生ごみ対策」・「捕殺」という両面作戦が功を奏したのか、市街地におけるハシブトガラスの姿は急減しています。「鳥相」はどんな鳥がどのくらいいるのかを調べたもので、環境を現す指標の一つとなります。“カラス全盛”時の鳥相と“猛禽類台頭”の今とその違いを分析してみたいと思っています。〔日本野鳥の会東京・研究部〕                    

 

2023年8月4日金曜日

東京都区内でのフクロウの近況

  

77日付東京新聞の「生きいき生き物」のコーナーに、武蔵野市・井の頭自然文化園で撮ったというフクロウの写真が載っていました。研究部が都内で行っている「フクロウ類調査」は道半ばで、記録を地名入りでは発表していませんが、今回の記事には撮影場所が載っていましたので、ここでその状況を少し紹介します(というより、現時点ではここまでしか情報がありませんが)。 

新聞発行日の約3週間前の6月20日、井の頭公園(三鷹市)でのオオバンの繁殖状況を見に行ったついでに、井の頭自然文化園を一周していた時、望遠レンズを構えている複数の人を見かけました。何を撮っているのか尋ねたところ「フクロウ」とのこと。樹上8メートルあたりに、2羽のフクロウを確認できました【写真・川内】。 

武蔵野市では今までフクロウの記録は文献上にはありません〔『東京都産鳥類目録2000』〕。また、約20年ごとの繁殖状況が載っている地図を見ると、西多摩地区(奥多摩)から南多摩・北多摩地区へと徐々に繁殖分布を広げていることがわかりますが、まだ武蔵野市までは届いていないように見えます『東京都鳥類繁殖分布調査報告 2016-2021』(2021年刊)。ネット上でこのフクロウについて追ってみると、数年前から付近で観察されているようで、2羽定着ということであれば、繁殖も期待できるところです。 

フクロウの区内での繁殖は、すでに千代田区の皇居と赤坂御用地での事例が公表されていますが、他の「緑島」でも可能性が高まっています。なお、市街地での「夜の鳥」の観察・調査は“不審者”扱いで通報されることがありますのでご注意ください。            〔研究部・川内博〕