2025年7月7日月曜日

今シーズンはカッコウが少ない?・三鷹市周辺から

  


朝日が地面に影を作る午前5時。まだ人気の少ない住宅街に、カッコウののどかな声が響きます。声の出処は、住宅に囲まれてぽつんと残された農家の屋敷林です。ひときわ背の高いケヤキの頂にとまり、大きな口を開けて鳴く様子が、双眼鏡でもはっきりと見えます。

東京都三鷹市の住宅街では、例年5月下旬にカッコウが渡来し、7月半ばまでその姿や声を頻繁に見聞きすることができます。しかし、今シーズンはその状況に異変が起こっています。初認日は、例年よりやや遅い5月25日でしたが、その後は6月9日、6月18日と2回確認したのみで、毎朝声を聞くような状況ではありません。確認地点も例年とは異なり、6月の2日間はかなり遠方から声が聞かれました。総合すると、今シーズンは例年のように屋敷林をテリトリーする個体はいないようです。また当地以外でも、都内でカッコウの声を聞いていません。

三鷹市のカッコウに何があったのでしょうか。当地での主要な托卵鳥と考えられるオナガは、今年も屋敷林の周辺で繁殖しています。住宅地や屋敷林周辺にも、特に環境の変化はありません。1つ考えられることとして、餌となる昆虫の少なさがあります。上空を飛ぶトンボや、灯火に飛来する甲虫やガなど、身近で見られる昆虫が以前よりも明らかに減っています。ここ数年の昆虫の減少傾向は、梅雨時の異常な高温や、猛暑日の長期化とも関係しているのかもしれません。

北多摩の場合、カッコウの個体数は以前から多くはありませんでした。農耕地が点在する環境でのみ少数が見られていたことから、本種の生息にあまり適した環境ではなかったのかもしれません。それが、ここ数年の食資源の減少傾向により、ついに生息できない環境になってしまったのでしょうか。

興味深いことに、今シーズンは他の地域でもカッコウ科の鳥が少なかったそうです(NPO法人バードリサーチ 公式X https://x.com/BirdResearch/status/1939193511867490587)。皆様のフィールドでは、カッコウやホトトギスの動向はいかがですか。〔鈴木遼太郎

2025年4月29日火曜日

自然教育園で「オオタカの繁殖記録」を公開中

  

  港区の自然教育園では419日~76日の間で、企画展「自然教育園のオオタカ~都会に生きる空のハンター~」が開催されています。

 自然教育園では2017(平成29)年6月に、園路の真上でカラスの古巣を利用して、オオタカが営巣を始めました。翌年には巣立ちも記録され、その後、営巣場所を変えながら2024年までに19羽のヒナ(幼鳥)が巣立っています。そのようすは、営巣を始めた初期からビデオ撮影されていて、抱卵やヒナへの給餌、ヒナの成長のようすなどが克明に記録されています。なかには真夜中にハクビシンやアオダイショウに襲われるシーンなども撮影されています。それらのようすは大型モニターで見ることができます【写真左】。 

 今回の企画展では、これまでの繁殖の記録がパネルで展示され、短時間で全貌を知ることができます。ところで大都会の環境の中で彼らが何を餌にしていたのか興味深いところですが、キジバトやドバトが6割・クマネズミやドブネズミが1割などと円グラフでわかりやすく示されていています【写真右】。また、それらのようすを記録した「機材」も紹介されていました。                             

  自然教育園は65歳以上・高校生以下の方の入園料は無料ですので、年齢証明できるものをご持参ください。

2025年3月25日火曜日

鳥影が薄い今年の冬・2 “キガオヒヨドリ”の群れを見て考える

  

 



  今年の冬はツグミやシメの姿や声に接することが少ないことを2月の本ブログにアップしました。その後の情報では、全国的な傾向のようで、各地から“少ない”という声が聞こえています。「その理由」は残念ながらよくわからないようです。しかし、3月に入ると、各地でツグミの声や姿を見かけるようなりました。ただ、シメの方は相変わらず少数しか確認できていません。先日、練馬区の都立大泉中央公園や隣接する和光市の県営樹林公園で久しぶりにイカル【写真・上】の10数羽の群れを見かけました。 多摩地区では留鳥だったこの鳥は、近年は「冬鳥」となっているようです。同時期に文京区の小石川植物園でも見たとの情報があり、移動の動きがあったようです。 

その小石川植物園では“キガオヒヨドリ” 【写真・下】の群れを見かけました。もちろんそんな名前のヒヨドリがいるわけではなく、ツバキの花に顔を突っ込んで、その花粉を大量につけて顔が黄色くなったヒヨドリです。彼らの行動を見ていると花の蜜を吸うだけではなく、花びらを食べています。そのため大量の花粉が顔につくようです。かつてはどうだったかと思い起こすと、以前から嘴付近が黄色個体は見ていましたが、顔までは少なかったような気がします。いかがでしょうか。 

ところで、“ヒヨドリの行動が昔と違う” という話は以前からありますが、その実態はまだ詳しくは調べられていません。ヒヨドリはいま日本では一番の“普通種”といえる鳥ですが、世界的に見れば、その分布はほぼ日本だけといえるほどです。我が国での本格的な研究を行う必要がありそうです。しかし、なかなか手ごわそうですね。                    〔研究部・川内博〕

2025年2月21日金曜日

ツグミ・シメのいない冬・情報をお寄せください

  

 今年の冬はツグミの姿や声に接することが少なく、その理由を捜していますが、今のとことろよくわかりません。皆さんのフィールドではいかがでしょうか。昨冬も年末までは少なかったのですが、年明けには姿を見せはじめ、いつもと同じように5月の初めごろは、グラウンドにたくさん終結するようすを見ることができましたが。

見かけないのは同じ冬鳥のシメ。【写真】 いないわけではないのですが、フュールドで見かける回数が極端に少ないといった状況です。ツグミやシメだけでなく“全体に鳥影が薄い”と感じられている人は多いようです。下町の緑地、水元公園からの私信では、ここ数年冬場に飛来していたアカゲラがみられない、また湿地のアシが刈られて、クイナやヒクイナ、オオジュリが確認できていないとのことです。

逆に、それらを狙う「猛禽類」は、各地で出会います。身近なフィールドでツミの声や姿、ハイタカの飛ぶ姿、ノスリの舞い、オオタカはいくつもの森で健在のようです。また、フクロウが定着している森も多くなっているようです。

各地の“冬のようす”をお寄せください。〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2024年12月29日日曜日

越冬時期のツグミ類の情報を

  

  昨冬に続き、今冬もツグミの平地部への飛来が遅いようです。東京地方で初認は11月初めというのがこれまでの状況でしたが、昨冬は年を明けてからその姿が多くなり、1月中旬ごろに通常のようすになりましたが今冬はどうでしょうか。一般に大陸から渡来した個体は、まず山中の食糧事情がいいとそこに留まり、厳しくなると里に下りてくるようですが、今秋も山に食べ物が多いのでしょうか。

大型ツグミ類としてはシロハラの姿や声は、23区内の緑地でもよく見聞きしますが今冬はどうでしょうか。かつては冬鳥として普通種だったアカハラの減少は続いているようです。都心の緑も通過していくマミチャジナイは、秋にそれらしい声を聞きましたが、姿は確認できませんでした。越冬はしていないのでしょうか。数は少ないのですが、トラツグミ【写真・川内博氏撮影】も限定された場所で少数越冬しているようです。

一方小型のツグミ類、日本鳥類目録第8版では「ヒタキ科」として復活しましたが、ジョウビタキ10月末ごろから目立ちました。ルリビタキはいかがでしょうか。ここのところ姿が少なくなったような気がしますが。都内某所でオジロビタキがという噂も聞きますが。

彼らがいなくなった春に、それらの情報を、場所・年月日・報告者の氏名を記して、研究部あてお知らせください。           
                〔日本野鳥の会東京・研究部

2024年11月29日金曜日

東京都内でのガン類・ハクチョウ類の生息状況を調べています

  

  


 118日、フィールドとしている埼玉県の荒川ぞいの彩湖のようすを見に行った時、湖の西岸(さいたま市南区)でマガンの幼鳥を発見しました。岸辺の草むらに上がりイネ科の雑草を食べていました【写真】。近くの水上ではホシハジロが200羽、キンクロハジロ50羽、そして名物のカンムリカイツブリ10羽を認めました。マガンは盛んに草を食んでいて、警戒はしていましたが、逃げる様子はありませんでした。ただ、付近は親子連れが遊ぶ場所でしたので、短時間で観察は切り上げました。翌日、確認のために出向いたところ、同じ場所にいましたが、すぐに親子が水辺に近づいたため、マガンは水上へ逃げていきました。

9日は、超望遠レンズと三脚を携えた人が付近に多数たむろしていましたので、マガン情報が広まって集まった人かと思い話しかけたところ、当日、自衛隊の観閲式があり、ジェット機などが付近を飛ぶのを撮るためとのこと。野鳥撮影以外での「超望遠レンズの需要」を初めて知りました。その際、集まった人のなかの年配者の男性から、マガンは3日前からきているという情報を得ました。その後、1119日に出向いたときは見かけませんでした。

ところで、ネットで調べていたら1114日に観察したとの情報が載っていました。また、201510月に同じ場所と思われるところでの記録がアップされていました。

現在、東京都内でのガン類・ハクチョウ類の記録を調べています。「日本野鳥の会東京・研究部」あてにメールでお知らせください。

                    〔研究部・川内〕                                             

2024年10月20日日曜日

『2024年版 千葉県の鳥類目録』が発行されました

  

  千葉県野鳥の会(千葉県船橋市)で、その50周年を記念し、“今まで千葉県で記録された鳥をわかる限り”でまとめたと前書きに記されている『2024年版 千葉県の鳥類目録』【右図】が発行されました。A4判・192ページ・オールカラーのなかには、2375461種と外来種14種のデータが詰め込まれています。そのうち15種は1974年以降(ここ50年間)県内での記録がないとのこと。

  千葉県野鳥の会では創設時より県内50カ所近くの地区で一斉調査を年に3回実施してきたという実績があり、水鳥類の個体数の変化を示したグラフは、一見してその状況を知ることができ、とくにチドリ目の個体数の推移は日本列島の海岸線の変化を裏付ける貴重な資料となっています。掲載されているほとんどのグラフは右肩下がり(年を経るごとに個体数が減る)ですが、ミヤコドリやコブハクチョウ、カワウのように増加傾向が著しいものや、アオサギ・ダイサギなど大型のサギは増え、ゴイサギ・コサギなどの小型のサギは減るという実態を示したものもあります。今後さらに多面的な分析が待たれるところです。

 将来、この目録をベースに、さらに充実した「千葉県産鳥類目録」ができると思いますが、この本の内容はネットでは知ることができませんので現物を入手する必要があります。おもに会員へ頒布されていますが、一般の方も1500円+送料で購入できるとのことです。詳しくは千葉県野鳥の会事務局に問合わせてください〔電話・Fax047-407-0810                                                 〔研究部〕