2024年3月5日火曜日

東京23区の森にもアカゲラが・繁殖期にご注意を

  

  文京区の小石川植物園での定期センサスの前に、駅からやや遠回りをして占春園(大塚3丁目)に短時間ですがよく立ち寄っています。この地は江戸時代の大名屋敷に由来する庭園で、現在は筑波大学附属小学校の自然観察園となっていますが、一般の人も自由に入れる緑地です。常緑樹が主体の森となっていて、斜面下には池があり、林床にはササが生い茂りウグイスの笹鳴きの声をよく聞きます。

 32日の朝、そのウグイスのほか、ヒヨドリ・メジロ・シジュウカラ・コゲラ・キジバト・シロハラといった常連に加えて、池には久しぶりにカルガモが2羽池に浮いていました。そんな中で“キョ・キョ”というアカゲラの声が。ここでの記録は初めてですが、今冬は都心各地の緑地でその姿を見たという情報が流れています。【写真】

東京23区内でのこれまでのキツツキ類の生息は、コゲラが留鳥で普通種、アオゲラが数はごく少数ですが一部で留鳥。アカゲラは年によって冬期に少数飛来することがあるといった状況ですが、今冬は観察が多いようです。その理由のひとつには「ナラ枯れ病」の流行があると思われます。東京都の発表によると、都立公園のナラ枯れは2019年度に初めて約400本が確認され、22年度には21,600本に達したとのこと。都心の緑地でもその姿が目につきます。

 アカゲラが好むものが“枯れ木”ですので、そのことと関係していると思われます。「営巣」という状況まではいかないと思いますが、繁殖期になっても声が聞こえるようあればご注意ください。〔研究部・川内〕

2024年2月16日金曜日

越冬期2024③ 東村山市・空堀川の鳥

  

   武蔵野台地にある東村山市には大きな川や池がなく、唯一の川・空堀川の流域を調査しています。“からぼり”の名前が示すように、ふだん川には水が流れていないようです。調査は西武池袋線の秋津駅近くから、上流の浄水橋付近までの岸辺を歩きながら行っていますが、水鳥系の鳥は上流の西武新宿線の鉄橋から浄水橋あたりが中心で、その間の水溜まりのような水辺やその周辺で見かけました。【写真】

今冬の調査は1161019分から1259分までで、23種を記録しました。とくに目立つ鳥はいませんでしたが、カワセミを下流側で1羽、野口橋より上流で雄1羽見かけました。キセキレイを2か所で計2羽、コサギとセグロセキレイも2か所で2羽ずつ、ダイサギ1羽、カルガモ5羽、マガモの雌雄を1組・コガモの雌雄2組を確認しました。 

空堀川は武蔵村山市の野山北公園を水源とする川で、かつては水が流れていたようですが、河川改修などで川底の粘土層がはぎとられ、砂礫層がむき出しになったため、雨が降っても吸い込まれて水が流れるような状態にならないと聞きます。その他確認した鳥は、キジバト・シジュウカラ・ヒヨドリ・メジロ・オナガ・ハシボソガラス・ハシブトガラス・ムクドリ・ツグミ・ジョウビタキ・スズメ・ハクセキレイ・カワラヒワ・シメ・ドバト。      〔東村山市担当・川内桂子〕                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

2024年1月31日水曜日

越冬期20242② 柳瀬川・金山調節池〔清瀬市〕の今冬のようす

  

柳瀬川は、狭山丘陵の狭山湖に流入する大沢・金堀沢等を水源として、清瀬市と埼玉県所沢市との市境を流れ、新河岸川に合流する荒川水系の1級河川です。調査コースは、例年通り城前橋右岸から上流の清瀬橋に到り、同橋を渡って金山調節池を廻った後、左岸に広がる畑地や林を調査して城前橋に戻るという2時間のコースです。

柳瀬川は護岸工事が進捗し、石組みとコンクリートで固められた人工的な護岸に置き換えられてきました。都内でも有数のカワセミの繁殖地として知られる当地ですが、護岸工事がカワセミの繁殖にどう影響を与えるのか注視していきたいと思っています。工事で一時は姿を消していたセキレイ類は、イカルチドリ【写真】と共に、最近ようやく戻ってきています。

1994〔平成6〕年、洪水対策を目的として整備された金山調節池は、豊富な湧水が湿地を形成し、ヤナギや多様な湿地性植生の群落を支えて、鳥ばかりでなく、爬虫類、両生類、魚類、昆虫その他、多くの生き物を育むビオトープとなっています。池の中央に小さな島があり、カモが種ごとに上陸してのんびり休んでいます。時に一斉に池面に繰り出して落ち着かないことがありますが、このような時には、獲物を狙うオオタカが島の樹影に潜んでいることが多いものです。

クイナも毎年12羽が越冬しますが、今年のクイナは大変シャイで、人影を見ると直ぐに葦の茂みに身を隠します。年によっては、散策用の浮桟橋を平気で横切る個体もいて、種を構成する個体はそれぞれ個性的なものであることが理解されます。今年はツグミが多く、調節池の奥まった一画に、格好の水浴場所があって、4~6羽のツグミの小群が次々と現れ、ヒヨドリと共に水浴していました。  〔清瀬市担当・青木秀武 

2024年1月21日日曜日

越冬期2024①・水元公園〔葛飾区〕の鳥たち

  

   この1月、都内の全区市町村で1か所以上の場所で調査を実施している「越冬期2024」。下町のオアシス・水元公園(葛飾区)での調査を2日に実施しました。同公園は江戸時代に古利根川に由来のある小合溜(こあいだめ)を中心とした一帯で、96haという面積は都立公園のなかで最大の規模。「水郷公園」の異称のとおりメインは“水辺”。2時間程度での調査コースは園北西の「水元かわせみの里」から小合溜ぞいに南下して、旧都立水産試験場~ごんぱち池まで。記録した鳥は411730羽。昨年は32種でしたので、観察種が少し多かったのは調査者が2名だったためと思われます。

  出現種の構成はほぼ同じで、一番数が多かったのはホシハジロ869羽(昨年673羽以下同じ)【写真】、次いでヒドリガモ207羽(334羽)、ユリカモメ110羽(50羽)。その他カンムリカイツブリ9羽(6羽)、オオバン70羽(44羽)、カルガモ70羽(71羽)、カワセミ3羽(2羽)。ここのところ気にしているバンは2羽(1羽)。いつもいる旧水産試験場の蓮池に健在でした。繁殖期と違って嘴~額板の色はどす黒い赤。半年後、繁殖期に調査に訪れた時には真っ赤なくちばしとヒナ連れを期待したいところです。 

ところで、バードサンクチュアリあたりで20名近くのカメラマン・ウーマンと出会いました。皆望遠レンズを携え、上を見上げていました。その一人に目的を聞いたところ“キクイタダキ”とのこと。この冬は各地からその情報が届いていますので、イスカとともに『ユリカモメ』の「鳥信」が楽しみです。          【葛飾区担当・川内博】

2023年12月26日火曜日

東京原宿・神宮前交差点のムクドリのねぐらのようす

  



  東京でもっともおしゃれな街のひとつの「原宿」。ムクドリの群れのねぐらは、東京メトロ副都心線と千代田線が地下で交差する真上の「神宮前交差点」わきの表参道通りのケヤキの街路樹。ここに毎夕集まり、夜を過ごしています。この地に10月ごろからねぐらをつくり、ここ数年は12月初め、街路樹に取りつけられたイルミネーションの点灯時期には姿を消していました。【写真・上】 しかし、今年は1221日夜1720分に立ち寄った時も数百羽の声が響いていました。ムクドリがこの一帯でねぐらをとるようになって10年くらい経つようですが、あまり“話題”になったことがありません。

その理由は、まずムクドリのねぐらで問題となる「声」は、周りの車や飛行機の騒音と一体化し、特に目立つことはなく、また、空から降ってくる「糞」については、気づく人は避けていますが、ほとんどの観光客やエレベーターを待つ人は意識していないようです。足元の地面や手すりなどには結構な量の糞が落ちているのですが。

今冬、ムクドリたちが立ち去らない理由の一つは、“暖冬”のためかケヤキの葉がまだ落ちていないことが考えられます。【写真・下】  木枯らしが吹き、木々が裸になったらさすがにこの地からいずこかへ去ると思われますが、年末にまた立ち寄ってみたいと思っています。しかし、“いずこ”はどこなのか、興味を持って調べているのですが、今のところ見当がつきません。                                                                 〔川内 博〕

2023年11月27日月曜日

東京都心部でイスカの群れ・未発表の記録はありませんか

  

  118日、午前10 時半ごろ、文京区小石川植物園での定期センサス調査を終え、仲間と鳥合わせをしていた時、頭上を10羽程度の小鳥の群れが飛びました。双眼鏡で追っていた時、数羽の羽色が“渋め”の赤色! 瞬間的に“イスカ!”と思いましたが、今まで数回しか見たことがなく、距離があったこと・飛んでいたことなどから確信は持てず、近くの林に飛び込んだこの鳥の正体を見定めようと努めましたが、10分ほどで飛び出した群れは一気に園外へ飛び去り、後ろ姿では確認はできませんでした。しかし、下記のことから、今秋同一の群れが都心部で飛び回っているのではないかと思っています。 

11月12日、同じく定期センサスを続けている港区の自然教育園から、園内での観察情報として、常連の入園者から1026日に園内で撮られたというイスカの写真が送られてきました【写真・イスカの雌雄・島田一氏撮影】 全部が写っているカットで確認すると雄5羽・雌2羽、性別判定不能1羽の8羽でした。 

イスカは北半球の北部に広く分布していますが、日本では少数飛来する冬鳥。東京本土部での記録は少なく、21世紀に入ってからは、200111月に青梅市御岳山で15羽、同年12月に檜原村三頭山で10羽、20021月に府中市多磨霊園で1羽、200411月に千代田区東御苑で5羽、御岳山では2007年・200811月に1羽と20羽、2010111羽が記録されています。島しょ部を含め、都内でのイスカの未発表の記録がありましたら、研究部宛にお知らせください。            〔川内博〕

2023年11月6日月曜日

東京都の鳥を知る 川上和人著『無人島、研究と冒険、半分半分』2023年9月・東京書籍・311pp.

  

   タイトル・表紙の絵とも“なんじゃコレは!”といった感じですが、読み進むうちにその意図がわかってきます。【表紙写真】 この本は、東京から1300㎞南下した、太平洋上に浮かぶ無人島「南硫黄島」(みなみいおうとう)での生物総合調査のようすを、専門の鳥類を中心に書かれているものです。この本の著者・川上和人さんは、『鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ』・『鳥肉以上、鳥学未満』など奇抜なタイトルの著作が多数あり、広く読者を獲得されています。本書も平易に書かれていて、研究の成果も“冒険の意味も知ることができます。
 南硫黄島は無人島で、東京都小笠原村に属し、そこの調査は1982(昭和57)年・2007(平成19)年・2017(平成29)年に行われていて、川上さんは2回目・3回目に鳥類担当者として上陸されています。3回目の調査にはNHKが同行し、放映されていますので、調査の様子はオンデマンドなどで観ることができます。本書に興味を持たれたら、その番組を観ると表紙の絵の意図も具体的に知ることができるでしょう。 

 ところで、その川上さんが千葉県我孫子市で開催されたジャパンバードフェスティバルで講演されるとのことで114日に聴講しました。チラシには「第33回鳥学講座」と記され、案内文も専門的なことが主でしたが、講演タイトルは「小笠原諸島の海鳥は、増えたり、減ったり、海を越えたり、超えなかったり」と川上流。話の内容は本と同じように、学術的に裏付けられたもので聞きごたえがありました。それは聴衆の皆さんがよく知っていて、開演1時間前から待っている人がいたとのこと。20分前に列に並んだ私は定員組(120名)に加われず、立ち見組30名でなんとか入れました。聞きごたえがあった証拠は、講演後の質問タイムで、手を挙げた人の多くが小学生から20代までの若者で、さまざまな角度からの「的確な質問」があり、話の内容がよく理解され、興味を持たれたことを物語っていました。                                 〔川内博〕