2023年5月16日火曜日

東京都レッドデータブック2023〔本土部〕の発行

  

  10年ごとに改訂されているレッドデータブックの最新版『東京都レッドデータブック2023・本土部』【写真】が発行されました。冊子版は、A4判・879ページ・フルカラーという大作です。

都のホームページによると、これまでとの違いは、ポイント1・種ごとの解説を充実。これまでの写真だけでなく、種ごとの減少要因のほか、分布図やレッドリスト、カテゴリーの変遷などもわかるように掲載した。 ポイント2東京の自然の状況を掲載、東京の自然の特徴を知ってもらうための情報を掲載 ≪東京の保護上重要な自然環境≫ 希少種保全や自然再生事例の紹介 ≪東京にゆかりのある野生生物種など≫とのことです。 

鳥類部門をみると、前回の『レッドデータブック東京2013』との違いは、種ごとに分布地図がついたことと、カテゴリーが4つの地域〔区部・北多摩・南多摩・西多摩〕ごとにされていたのが、今回はそれに加えて「本土部」という項目が作られ、本土部全体での評価を知ることができるようになっていることです。 

冊子は、東京都庁の都民情報ルーム(第一庁舎3階南側)で購入できるとのことです〔15,156円〕。ただし重量が約2.5㎏ありますので、片手でパラパラとページをめくるということはできません。その点ご留意ください。ネット版は下記のサイトで冊子原稿PDFデータを見ることができます。              〔日本野鳥の会東京・研究部〕 

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/red_data_book/400100a20230424184941875.html

 

2023年4月24日月曜日

東京23区山の手でサギのコロニー発見・「繫殖期2023」調査を始めます

  

  東京23区の下町にサギのコロニーがあることは知られていますが、山の手地区でもアオサギ・ゴイサギ・コサギが営巣するコロニーが見つかりました。アオサギの巣ではヒナ4羽が大きく育っていて、岸辺からもそのようすを見ることができます【写真・川内博氏撮影】。アオサギは日本最大級の大型の魚食性の水鳥で、全国的にも繁殖分布が広がっています。このコロニーで興味深いのはアオサギのほかに、減少が著しい小型種のゴイサギコサギも営巣していることです。両種とも全国的に減少傾向がみられていて、都内でも同様です。この2種はオオタカに狙われることが多く、最近の個体数減少の一つの原因とも考えられています。そのオオタカは、23区内での営巣地は増えるばかりで、この場所でもその鳴声が響いていました。〔現時点ではいつからこのコロニーができたかはわかっていません〕 

研究部では昨年に引き続き、5月~6月にかけて、どんな鳥がどこで繁殖期に生息しているのかを知るため「繁殖期2023調査を、本土部の全区市町村で実施を予定しています。この調査はおもに昼行性の鳥が対象ですので、フクロウアオバズクコノハズクヨタカなどの「夜に目立つ鳥」の情報が不足しています。身近な場所で声や姿を確認したらお知らせください。         〔日本野鳥の会東京・研究部〕      

                 

2023年3月13日月曜日

『越冬期2023』調査・あれこれ・3 ミヤマガラスの件での訂正・他

  

  2月22日付の本ブログで誤りがありました。タイトルで“ミヤマガラスの「都内初記録」”と記しましたが、初記録はもっと前にありました。以下のように訂正し、お詫び申し上げます。 

現時点での知見では、ミヤマガラスの「都内初記録」は、清棲幸保著『日本鳥類大図鑑 Ⅰ』に記されている「足立区千住 1877:Ⅱ・1886」がもっとも古い記録となります。

最近の例では、20151129日に府中の多磨霊園で6羽が記録されています(『ユリカモメ』№727)。また、島しょ部では、八丈島で2003年以降断続的に記録され、20102011年にも観察されています(『ユリカモメ』№726)。他にも記録等ありましたら、お知らせください。 

ところで、近年このミヤマガラスが冬鳥として全国各地に多数飛来していることが話題となっていますが、東京の近くでも多数渡来している地域があります。都市鳥研究会のホームページのブログ「都市鳥最新情報」(2023310日付)〔※〕によると、昨年12月に、埼玉県越谷市内で地元の野鳥グループがカラスの集団塒で個体数調査をおこなったところ、ハシボソガラス・ハシブトガラス・ミヤマガラス・コクマルガラスの4種で3,000羽余を記録したとのこと。その中で、2割はミヤマガラスではないかと推定されています。また、隣接する吉川市での昼間の調査では、ミヤマガラス462羽・コクマルガラス29羽が観察されたとのことです。ちなみに、昨年2月に私が越谷市久伊豆神社のねぐら入りを視察した時は、神社周辺の電線に鈴なりなっているミヤマガラスの多さにびっくりしました。【写真】     〔日本野鳥の会東京・研究部・川内〕

    都市鳥研究会のブログには、本HPトップの「リンク」から入ることができます。

2023年2月28日火曜日

『越冬期2023』調査・あれこれ・2 コハクチョウの亜種間交雑個体ほか

  


 

この1月に本土部の都内を対象に実施した「越冬期2023」調査結果では、検討事項がありました。府中市~国立市の多摩川で越冬した2羽のコハクチョウの亜種問題。1羽はくちばしの模様からアメリカコハクチョウ(Cygnus columbianus columbianus)〔都内初記録〕と判定できました。もう1羽は亜種コハクチョウ(Cygnus c. jankowskyi)と思われました。【写真上・渡来したコハクチョウ2羽・中島徹也氏撮影】

東京都内でのハクチョウの観察は多くなく、本土部のコハクチョウの記録は、2001年以降は、2002年に江戸川区葛西臨海公園と府中市多摩川、2004年は杉並区善福寺公園、2005年は世田谷区・調布市・府中市の多摩川と武蔵村山市、2006年は日野市~調布市多摩川と杉並区・昭島市、2007年は昭島市、2011年は調布市多摩川、2012年は中野区・青梅市、2013年は府中市・多摩市多摩川、そして20221月には昭島市多摩川での記録がありました。〔※〕

 さて、問題の亜種コハクチョウと思われた個体については、くちばしがよく見える写真【写真下・1月12日・宮島明氏撮影】をもとに、当会野鳥記録委員会で、国内外の図鑑や文献(村瀬.1994)などを参考に検討して、上記2亜種の交雑個体ではないかと判定しました。ご協力いただきました、中島徹也様、宮島明様、橋本和司様、府中野鳥クラブ様に感謝いたします。

  ところで、本ブログの昨年1229日付で、“冬鳥ツグミの本隊はいつ”というタイトルで、いつもは11月には渡来していたツグミが少ないことを報じましたが、その後1月中旬ごろから少なめですが例年通りの状況になりました。     〔日本野鳥の会東京・研究部〕 

※:これらの観察記録に該当しない情報、また、コハクチョウの亜種間交雑個体についての知見をお持ちの方は、日本野鳥の会東京(研究部)あてにメールでお知らせください。

2023年2月22日水曜日

『越冬期2023』調査・あれこれ・1 ミヤマガラスの都内初記録ほか

  


   今冬1月に東京都の本土部全自治体を対象とした調査『越冬期
2023はほぼ予定通りで終了しました。ボランティアで参加いただいた調査員の皆様に感謝いたします。また、この調査にご協力いただきました団体に謝意を表します。 

この調査は昨年実施しました『越冬期2022』に続くもので、昨冬は103種を記録しましたが、今冬は仮集計段階ですが110種となっています。その中には、東京都初記録のミヤマガラスヒメハジロの雄などが含まれています。そのほか、中央防波堤埋立地ではツクシガモ、クロツラヘラサギ、セイタカシギ、ソリハシセイタカシギなどの珍鳥が観察され、多摩川からはビロードキンクロ、荒川からはコミミズクの情報が届いています。近年越冬地が広がっているコハクチョウの記録も、昨冬に続き2羽の渡来が多摩川から寄せられています。都内でも安定して飛来するようになるのでしょうか。 

一方、今年の調査で記録されなかった鳥にオシドリがいます。かつては、上野不忍池・皇居濠・自然教育園・明治神宮・新宿御苑・井の頭公園・・・など都内各地の池に群れで、飛来し越冬していたものですが、次々と消滅し、最後の砦となっていた新宿御苑も調査日には見られなかったとのこと。この地では今冬も調査日以外の日には観察されていますが、年々その数は減ってきています。彼らが好んでいる、上の池の休息場所のブッシュが刈り込まれたことが原因のひとつと考えられます。華麗なこの鳥の姿を消すことのないように植栽の管理をしてほしいところです。

『越冬期2023』調査終了後の2月5日、長年オシドリの越冬地として知られていた明治神宮の南地と北池を訪れてみました。南地はカイツブリが1羽浮かんでいるだけでしたが、北池にはマガモ13羽、カルガモ2羽、ホシハジロ2羽、キンクロハジロ1羽、ハシビロガモ1羽の5種類19羽が泳ぎ回り、採食していました。“オシドリ復活”も夢ではなさそうです。【写真】

本調査の概要は『ユリカモメ』4/5月号の「研究部レポート」で発表します。                    〔日本野鳥の会東京・研究部・川内〕 



2023年1月21日土曜日

東京・池袋西口のムクドリのねぐらの近況

  

  昨年の315日にアップした「東京・池袋西口のムクドリのねぐら」の続報です。報告した後も半月ごとにチェックしていましたが、2022年は4月30日に約200羽のねぐら入りを観察した後、51431日、61530日とも飛来は認めず、「冬ねぐら」は5月初めには解消したことがわかりました。その間、公園の並木にはカワラヒワが100羽以上ねぐらをとっているという新発見が得られました。 

その後は月1回程度でチェックしていましたが、昨年の初記録とほぼ同じ時期の122日に約50羽の飛来を確認しました。半月後の1216日には、昨年と同じ約250羽に増え、年末30日にも同数を確認しました。ところが今年初めて観察を117日に行ったところ、上空を旋回する群れが大きくなっていました。写真に撮って11羽を数えたところ3倍増の850羽。【写真】 

 このねぐら地は、道路のなかの小さな空地に植えられたクスノキの巨木で、真下を人が通ることはなく、規模も小さく、ねぐら入りするときに10分程度鳴き騒ぐ程度で、バスを待つ人、通勤通学などですぐ近くを通る人も「ねぐら」があること自体気づいていないと思われる状況です。

 しかし、各地で迷惑がられ、さまざま方法で追い出されているムクドリですので、今後この“安全の地”にさらに集まってくる可能性がありそうです。今後どのような展開になるか、興味を持って観察しているところです。
   ところで、同地でウグイスが越冬していると報告しましたが、今のところその声・姿は確認できていません。〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2022年12月29日木曜日

冬鳥ツグミの本隊はいつ・冬の調査「越冬期2023」・「猛禽類のようす」

  

  今年の冬は寂しい! そのわけはツグミ【写真】・シメなどの渡来数の多い冬の小鳥たちの声や姿が極端に少ないからです。ツグミは11月のはじめ前後には第一陣の声が聞こえるのが例年のことです。シメもツグミと同じころに金属的な地鳴きが聞こえてきて、冬の到来が近いことを知るシグナルとなっています。それが12月の末になっても声も姿も出会うことが少なくなぜ?” とささやかれています。

研究部では「越冬期2023」調査と「猛禽類のようす」調査をこの冬に行います。 

越冬期2023」は昨年に引き続いての調査で、冬鳥やカモなど水鳥類のようすを重視したもので、東京湾岸から上野不忍池、皇居濠、多摩川、奥多摩湖など80か所以上で、1月中に実施します。調査地の多くは日頃から探鳥会や観察会が行われているところで、調査に携わる方は、探鳥会や自然観察会のリーダーが中心で、レベルの高いデータが期待できます。

猛禽類のようす」調査は、最近、市街地でも見ることの多くなったタカ類(オオタカ・ハイタカ・ノスリ・トビなど)やハヤブサ類(ハヤブサ・チョウゲンボウ)、最近皇居で繁殖していることがわかったフクロウ【写真】、逆に最近見かけることが少なくなったフクロウ類(コミミズク・トラフズクなど)などの猛禽類の冬期間の生息状況を調べるものです。

いずれも高い専門性を必要とする調査で、野鳥の会や自然観察会の皆さんにボランティアで参加いただいています。                                                                                                     〔日本野鳥の会東京・研究部〕