2023年11月27日月曜日

東京都心部でイスカの群れ・未発表の記録はありませんか

  

  118日、午前10 時半ごろ、文京区小石川植物園での定期センサス調査を終え、仲間と鳥合わせをしていた時、頭上を10羽程度の小鳥の群れが飛びました。双眼鏡で追っていた時、数羽の羽色が“渋め”の赤色! 瞬間的に“イスカ!”と思いましたが、今まで数回しか見たことがなく、距離があったこと・飛んでいたことなどから確信は持てず、近くの林に飛び込んだこの鳥の正体を見定めようと努めましたが、10分ほどで飛び出した群れは一気に園外へ飛び去り、後ろ姿では確認はできませんでした。しかし、下記のことから、今秋同一の群れが都心部で飛び回っているのではないかと思っています。 

11月12日、同じく定期センサスを続けている港区の自然教育園から、園内での観察情報として、常連の入園者から1026日に園内で撮られたというイスカの写真が送られてきました【写真・イスカの雌雄・島田一氏撮影】 全部が写っているカットで確認すると雄5羽・雌2羽、性別判定不能1羽の8羽でした。 

イスカは北半球の北部に広く分布していますが、日本では少数飛来する冬鳥。東京本土部での記録は少なく、21世紀に入ってからは、200111月に青梅市御岳山で15羽、同年12月に檜原村三頭山で10羽、20021月に府中市多磨霊園で1羽、200411月に千代田区東御苑で5羽、御岳山では2007年・200811月に1羽と20羽、2010111羽が記録されています。島しょ部を含め、都内でのイスカの未発表の記録がありましたら、研究部宛にお知らせください。            〔川内博〕

2023年11月6日月曜日

東京都の鳥を知る 川上和人著『無人島、研究と冒険、半分半分』2023年9月・東京書籍・311pp.

  

   タイトル・表紙の絵とも“なんじゃコレは!”といった感じですが、読み進むうちにその意図がわかってきます。【表紙写真】 この本は、東京から1300㎞南下した、太平洋上に浮かぶ無人島「南硫黄島」(みなみいおうとう)での生物総合調査のようすを、専門の鳥類を中心に書かれているものです。この本の著者・川上和人さんは、『鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ』・『鳥肉以上、鳥学未満』など奇抜なタイトルの著作が多数あり、広く読者を獲得されています。本書も平易に書かれていて、研究の成果も“冒険の意味も知ることができます。
 南硫黄島は無人島で、東京都小笠原村に属し、そこの調査は1982(昭和57)年・2007(平成19)年・2017(平成29)年に行われていて、川上さんは2回目・3回目に鳥類担当者として上陸されています。3回目の調査にはNHKが同行し、放映されていますので、調査の様子はオンデマンドなどで観ることができます。本書に興味を持たれたら、その番組を観ると表紙の絵の意図も具体的に知ることができるでしょう。 

 ところで、その川上さんが千葉県我孫子市で開催されたジャパンバードフェスティバルで講演されるとのことで114日に聴講しました。チラシには「第33回鳥学講座」と記され、案内文も専門的なことが主でしたが、講演タイトルは「小笠原諸島の海鳥は、増えたり、減ったり、海を越えたり、超えなかったり」と川上流。話の内容は本と同じように、学術的に裏付けられたもので聞きごたえがありました。それは聴衆の皆さんがよく知っていて、開演1時間前から待っている人がいたとのこと。20分前に列に並んだ私は定員組(120名)に加われず、立ち見組30名でなんとか入れました。聞きごたえがあった証拠は、講演後の質問タイムで、手を挙げた人の多くが小学生から20代までの若者で、さまざまな角度からの「的確な質問」があり、話の内容がよく理解され、興味を持たれたことを物語っていました。                                 〔川内博〕



 


2023年10月24日火曜日

Zoom研究部例会・多摩川の鳥の「今と昔」を知ることができました

  


日本野鳥の会東京・研究部例会を、1022日(日)にZoomで実施しました。目的は『多摩川の鳥の今と昔』を知り・考えること。今回の講演タイトルは『「多摩川鳥類カウント」(20192021年)の調査結果について』 講師は調査報告書『多摩川鳥類カウント再現』のまとめをされた御手洗 望

内容は、1976(昭和51)年度と1986(昭和61)年度に実施された調査記録と今回(20192021年)の記録の3つを比べたもので、並べたグラフで、多摩川の“今と昔”を知ることができる鳥の出現状況を紹介。水鳥ではカモ類・カイツブリ類・カワウ・サギ類・クイナ類・シギ類・チドリ類・カモメ類・カワセミ、陸鳥では、ヒヨドリ・オオヨシキリ・セッカ・セキレイ類・ホオジロと多種多様。しかし、全体的には年を経るごとに生息数や生息期間が減少する鳥が目立ち、“多摩川の鳥が減った!”という日頃の実感をいまさらながら“再現”させられる内容でした。

減った鳥の代表はカモ類。その代表格はオナガガモ。次いでマガモ・コガモ。どこにでもいると思っていたカルガモも減少気味。他の水鳥でもカイツブリ・バン・シロチドリ・ゴイサギなども少なくなっています。逆に増えた代表格はオオバン。アオサギやダイサギ【写真】も増加。かつては記録がなかったカンムリカイツブリが今回の調査で登場。カワセミは数少ない復活組。

今回は全体で1時間20分程度ということで、変化への追及・解析などはありませんでしたが、まずは現状を知って次の一歩といったところです。御手洗さんに感謝。             〔研究部・川内〕

2023年10月4日水曜日

研究部例会・講演会「多摩川の鳥の今と昔」      10月22日午後4時からZoomで・お問い合わせください

  

  コロナ禍ため「研究部例会」はここのところ開催していませんでしたが、このたび「Zoom」で開催することになりました。その第1回として、2019年~2021年にかけて、多摩川河口(東京都大田区)~万年橋(同青梅市)で実施された「鳥類カウント調査」の報告を行います。【写真・南の国にわたり途中のノビタキ・2019年10月21日多摩川で撮影】

の調査は、約40年前に行われた調査〔1976(昭和51)年6月からの1年間と、1986(昭和61)年9月からの1年間、建設省京浜工事事務所からの委託で行われて実施〕と同じ場所・同じ方法で実施し、長い歳月を経て、多摩川の鳥にどのような変化があるか検証しようという試みです。その成果は『多摩川鳥類カウント再現』(A4判・259pp)という報告書〔本ブログ・2021年9月26日付をご覧ください〕にまとめられました。今回は、その調査と報告書のまとめにかかわられた御手洗望氏による講演会です。 

当初は1年間で終わる予定でしたが、コロナ禍や台風19号の影響で、足掛け3年かかった“難工事(調査)”となりました。今回は調査のようすや成果を広く知っていただくため、調査関係者以外の方にも参加できるようにと考えています。興味を持たれた方は下記〔※〕にメールでお問い合わせください。担当からご連絡します。

※:office@yacho-tokyo.org 日本野鳥の会東京・研究部・室内例会係あて  〔10月15日までに〕 

 講演会:多摩川の鳥の今と昔  講師:御手洗望氏(日本野鳥の会東京・研究部) 日時:2023年10月22日(日)午後4時~5時30分 Zoom利用     

                 〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2023年9月17日日曜日

東京都区内でのフクロウの近況・2

  

  東京都区内の猛禽類の繁殖調査を実施していますが、その中の「フクロウ」の繁殖が、葛飾区の水元公園で観察されました。確認したのは同公園を中心として自然観察・調査を続けている長谷川恵一さん。その報告は長谷川さんが所属する「みずもと自然観察クラブ」の会報『かいつぶり・361号』に載せられていました。 

水元公園は埼玉県三郷市と接していて、広大な水辺と森と広場があり、23区内でもっとも広い(96.ha)都立公園です【写真】。報告によると今年の716日に、あまりよく飛べない巣立ちビナを確認。近くに親鳥もいて給餌をしているような行動も観察されたとのこと。721日にも少し飛べるようになったヒナと親鳥の給餌が認められていますが30日には親鳥だけ、そして86日には親鳥もヒナも確認できなかったとのこと。同公園では2009年にも営巣が観察されているとのことです。

 

この公園には園内に水辺沿いにバードサンクチュアリがいくつもあり、カワウやサギのコロニーなどもあります。今年56月の研究部の現地調査ではキビタキやウグイスの囀りが各所で聞かれています。また、かつては同じフクロウ類のアオバズクの繁殖地としても知られている場所です。             〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2023年8月28日月曜日

大森ふるさとの浜辺公園のムナグロ

  

  8月中旬の大潮の日、大田区の大森ふるさとの浜辺公園に行ってみると、人工干潟の上でムナグロが採餌しており、最大で7羽を観察できました。距離が遠くて画像は不鮮明ですが3羽のムナグロが写っています【写真】。この公園は2007(平成19)年に、京浜急行の大森町駅や平和島駅からそれぞれ徒歩15分くらいの内川の河口部に造成された海浜公園です。公園には人工砂浜が設けられていて、特に夏は家族連れなどに大人気です。釣り船などの通る水路と人工砂浜の間には船の波を除けるための堤防があり、その周囲が干潟として造成されています。この干潟を利用するシギ・チドリはあまり多くないのですが、その中でムナグロは観察される頻度が高いようです。 

この場所では大田区都市基盤整備部によって四季を通じて鳥類、魚類、植生などの調査が行なわれており、私も鳥類調査の調査員として参加しています。調査の結果は環境調査報告書として毎年大田区より発行されます。この資料を使ってムナグロの観察頻度を定量的に調べてみました。季節は春(45月)、秋(810月)、冬(112月)を対象とし、夏(67月)はシギ・チドリが観察されないので除外しました。20195月から20231月までのほぼ4年間のデータでは、ムナグロが観察されたのは16/31回(調査3116回)で、季節ごとの内訳は春:2/8回、秋:9/12回、冬:5/11回となりました。春は少なく秋に多いのですが、冬にも4割以上の確率で出現しているのが注目されます。なお観察の最大羽数は春:1羽、秋:11羽、冬:3羽でした。 

上記のデータは近年の三番瀬探鳥会や谷津干潟探鳥会におけるムナグロ出現頻度よりも明らかに高く、「ムナグロを見るならふる浜へ」と言えなくもありません。ただし昨年はなぜか出現が1/7回と少なかったのが気になります。今年の秋、そして冬の状況に注意したいところです。                       〔川沢祥三〕

2023年8月19日土曜日

猛禽類の台頭で「東京の鳥相」はどう変わるのか

  

   今年の研究部の継続活動に「猛禽類の生態・繁殖調査」があります。とくに注目しているのは、人が大勢住み・働いている市街地の「鳥相」で、オオタカ・ツミ・チョウゲンボウ・アオバズクに加えてフクロウが繁殖種に加わり、かつての東京では考えられなかった“猛禽類繁栄”の時代となっています。 

今春、都内全域を対象にした『繁殖期2023』調査でも、市街地の緑地でのオオタカの繁殖・生息記録が目立ちました。なかにはオオタカが1つの緑地で2か所という例もありました。また、ツミやチョウゲンボウ、トビ、アオバズクの営巣も報告されました。とくに鳥類を主食とするオオタカ・ツミ・チョウゲンボウの台頭は、街なかに棲む野生鳥類に影響がないわけはありません。“コサギなどの小型のサギを見かけなくなった”・“シジュウカラの数が減った”などの観察や調査結果が耳に入ってきます。まだ、きちんとした裏付けるデータは少ないようですが、今後いろいろな情報・データが出されてくると思われます。【写真・洗足公園で水浴びをしていたツミの若鳥・川内博撮影】

前世紀末の19752000年にかけての四半世紀は、東京を中心とした首都圏の街は“カラス天国”でした。そのようすは銀座や渋谷、池袋など繁華街で見ることができました。しかし、1999年に当会が主催したシンポジウム「とうきょうのカラスをどうすべきか」を契機に、世情は一変し、東京都が行った「生ごみ対策」・「捕殺」という両面作戦が功を奏したのか、市街地におけるハシブトガラスの姿は急減しています。「鳥相」はどんな鳥がどのくらいいるのかを調べたもので、環境を現す指標の一つとなります。“カラス全盛”時の鳥相と“猛禽類台頭”の今とその違いを分析してみたいと思っています。〔日本野鳥の会東京・研究部〕