2021年10月31日日曜日

フラッグ付きのミヤコドリのゆくえ!「T6」の無事を祈る

  


  カムチャツカ半島で生まれ、脚にナンバーT6と記された足環をつけたミヤコドリが、東京湾の三番瀬(千葉県船橋市)で2019925日に発見されたことは、当ブログの同年1024日付けで紹介しました。2日後の927日には、同じ場所でいっしょに装着されたT7が伊勢湾の安濃川河口(三重県津市)で発見されています。この2羽の動きは追跡され、その年の冬にはどちらもその場に定住していることがわかりました。
 

T6は三番瀬や葛西海浜公園(東京都江戸川区)一帯を生活の場とし、2020年は越夏し、115日までは同地で観察されていましたが、1225日に、伊勢湾で野鳥を観察している久野正博さんから、「T6」が安濃川河口に来ているとの情報が寄せられました。東京湾と伊勢湾との距離は約260㎞。数千㎞の渡りをするこの鳥にとってはたいしたことではないかもしれません。2021年125日には三番瀬に戻ってきていることが確認されました。

一方T7は、翌年の春からのゆくえがわかりませんでしたが、2020715日~19日の間、北海道の道南、渡島半島の八雲町で観察されています(日本野鳥の会三重・『しろちどり』107号)。その「T7」が、20211023日に伊勢湾の雲出川河口に帰ってきたとのメールが、久野さんから寄せられました。【写真・「T7」の足環をつけたミヤコドリ・久野正博氏撮影】 

しかし「T6」の方は、125日に確認されて以来“ゆくえ不明”。「T6」発見者の田久保晴孝さんによると、ことし越夏した40羽の中にはいず、1025日に調査した時も、約400羽の群れの中に「足環付」の個体は見つけられなかったとのことでした。今回、久野さんからの続報に、この春「T6」が伊勢湾にいたと記されていました。

フラッグ(足環)個体の観察情報が集まる山階鳥類研究所に問い合わせたところ、「T6」は2月~5月まで伊勢湾で複数の観察者により確認されていて、5月に釣り糸で負傷をしたとの報告が最後とのことでした。詳細はわかりませんが、無事に再発見されることを祈っています。                                                                          〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2021年10月19日火曜日

知りたいことが記されていた報告書『新砂貯木場の鳥類調査報告』

  

   “新木場”は東京メトロ有楽町線・JR京葉線・りんかい線の駅が一か所につながった鉄路の要所です。かつて深川にあった“木場”が埋め立てられ、新しく造られた貯木場がある場所ということで東京港沿いに造られ、いくつもの貯木場があります。周囲を堤防で囲まれ、人が近づけない「貯木場」という水辺は、水鳥たちにとって楽園で、以前から休息・採餌・繁殖の地として、彼らは利用しています。それらの貯木場には、かつては輸入されてきた大きな材木が水面いっぱいに浮かべられていましたが、いまは輸出先で「木材」とされ日本に運ばれてきますので、“貯木場”の役割は小さくなっています。そのなかで、荒川につながっている「新砂貯木場」は、1990年代初めから、“ヨット・ボートの基地”「夢の島マリーナ」として、新しい展開をしています。 

 この貯木場には、たくさんの水鳥が生息していて、研究部は「カワウの新営巣地」として注目していた場所です。しかし、他の貯木場と同じように外部から全体を見通せるような場所はなく、かつては小船で水路から調べたこともありました。しかし、2010年代の調査はマリーナ側の岸辺から双眼鏡や望遠鏡で覗くことしかできていませんでした。今回送られてきた報告書には、これまで情報が不足していた2010年代の状況が満載されていますので、これからその内容を読み取る予定です。

 『新砂貯木場の鳥類調査報告(201410月~20175月)』〔A4判・60ページ+資料編73ページ・20216月刊〕【表紙写真】は、東京都下水道局砂町水再生センターの協力を得て、敷地内からの調査が行われ、より正確な情報が多数掲載されています。報告書は、「NPO法人 ネーチャーリーダー江東」のホームページからダウンロードして、全容を知ることができます。

担当された荒川洋一さんは、当会会員で、区内の「仙台堀川公園」の保全活動でも活動され、当会の会誌『ユリカモメ』にも寄稿されたことがあります。                                  [日本野鳥の会東京・研究部]