2009年7月2日木曜日

ツバメのお宿はアパート? 繁殖期の伊豆諸島その4

           

 繁殖期の伊豆諸島の旅も最後は大島。ご協力いただくのは、ずっと以前からお名前だけは存じ上げていた野鳥の会のベテラン・望月英夫さん。いただいた資料によると、在島40年余で確認種は174種を記録とのこと。春・秋の渡りの時期には多数の鳥が見られることや、冬にはハギマシコが100羽単位で飛来し、三原山の山腹で越冬すること、また、昨年はクロツラヘラサギ1羽が海岸に現われたことなど、大島や利島の環境変化などを交えての話を、ご自宅でお聞きしました。庭のまわりは自家菜園の畑とか。キジやウグイスが朝からうるさくて、寝ていられない!と笑いながら、そんな贅沢な悩みも語られました。
 朝からの雨が昼過ぎにはあがったので、岡田港へ送っていただく途中で、二子山(619m)山腹の林道を探索。原生林中心の静かな山道で、オオルリやイイジマムシクイ、ウグイスが囀っていました。また、大島公園の動物園に立ち寄りました。規模は大きくはありませんが、各種の動物が飼育されていて、オジロワシの繁殖に成功し、ペアへの表彰状が飾ってありました。その動物園の入口の管理舎の軒先には、ツバメの巣が5巣あり、2つ以上で子育てをしていました。
 ところでツバメといえば、前日の29日(月)、夕方に大島・元町港に着いて、観光協会で宿を決めて、一歩外へ出たところで、たくさんのツバメの乱舞に出会いました。よく見ると真向かいの3階建てのビル・(株)山田回漕店に、多数の巣があるのが見え、さかんに出入りしていました〔写真〕。実際使っているか否かは調べませんでしたが、1階に10巣以上、2階に5巣以上と、まるでコロニー状態。最近、“益鳥・ツバメ”の神通力がなくなって、平気で巣を落とす人が増えていて、また、新築建造物にはあまり造りたがらず、営巣場所が限られるような傾向があります。もちろん、多数のツバメが営巣しているのは、このお店の人たちが大事にしているのが一番でしょうが、古めの建物が減っていることも一因と思いました。
 今回の一連の旅で気づいたこととのひとつに、島でのツバメの営巣状態。大島・式根島・神津島・三宅島ではツバメの営巣を確認しましたが、八丈島では成鳥の姿すら見かけませんでした。八丈島協力者の岩崎由美さんにお聞きしたところ、ほとんど営巣しないとのこと。しからば父島・母島ではと調べようとすると、メグロや海鳥については詳しい文献も、ツバメについては1,2行と素っ気いない記載ばかりで、実態は読み取れない状態です。今回の鳥類目録では、普通種にも目を向けての作成が必要と感じました。
 大島から東京・竹芝までジェット船では約1時間半。行きの大型船の客の少なさに比べ、帰りに乗った高速船の込み具合を比較し、時代の流れをも感じた旅でした。(川内博)
 
 

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