2022年8月17日水曜日

繁殖期2022・大田区内の公園でトビが繁殖

  

  大田区の多摩川沿いに位置する公園で、今年はトビが繁殖に成功しました。この公園ではトビがここ数年の間に何度か巣を作り、親鳥が抱卵しているのを観察しましたが、孵化には至りませんでした。今年は過去の失敗経験から学んだのか従来の営巣エリアよりも更に多摩川に近い斜面の松の木に営巣しました。

 抱卵開始は4月中~下旬ごろで、5月上~中旬は目立った動きはありませんでした。5月28日、巣のある松の木に雌雄が寄り添って止まり、擬交尾のような行動の後に雄は飛び去りました。雌は巣に戻りましたが抱卵姿勢には入りませんでした。この時点でヒナはおそらく孵化していたものと思われます。6月初めには巣の上に初めて灰白色のヒナを確認できました。

 ヒナが生まれてからは、親の1羽が巣から少し離れた樹上で見張りをし、もう1羽が魚を捕って運んでくる、というパターンが多く見られました。雌雄の協力態勢はしっかりしているようでした。6月27日には褐色のヒナ2羽が巣の上で動き、灰色頭のヒナも一瞬見えましたが、3羽目のヒナはその後確認されることはありませんでした。大きくなった2羽の幼鳥は7月8日には巣から出てすぐ横の枝に止まっていました【写真】。 7月16日の朝、1羽の幼鳥が親の見張っている枝まで飛んで親と合流し、もう1羽はまだ巣の横の枝に残っていました。親が見本を示すように飛び立ち、くるりと旋回して枝に戻りましたが、巣の横の幼鳥はなかなか飛び出す勇気が出ないようでした。その4日後の朝、多摩川の川岸から公園のほうを望むと、巣のある松の木から数十メートル離れた樹上に2羽の幼鳥が止まっているのが見えました。また親はエサを探して多摩川上空を飛翔していました。

 トビの繁殖の様子を観察していると、つがいや親子のメンタルの動きがわかるような気がすることが何度かありました。人の弁当を狙ったりして悪役イメージが固定しているトビですが、今回の観察で私には少し親しみの気持が湧いています。                                    〔川沢祥三〕

2022年8月1日月曜日

繁殖期2022・ぶじ終了しました・越冬期2022の調査結果紹介

  

繁殖期2022の調査終了しました

今年の5月~7月にかけて、本土部の東京都内全域を対象とした「繁殖期2022」調査は、予定通りで終了しました。調査者の皆さま・協力いただいた方々に感謝いたします。

調査結果については、当会会誌『ユリカモメ』で発表します。

 

越冬期2022の調査結果の紹介 (出典『ユリカモメ』No.798・799)

調査期間:2022年1月  調査場所:東京都内(本土部)

記録した鳥種:15目34科103種  調査者・団体:70名・5団体

『ユリカモメ』2022年8・9月号に掲載した「調査結果」【下図】

 


 調査場所紹介(23区・多摩区ごとの50音順)

【 23区 】〔足立区〕舎人公園 〔板橋区〕新河岸川/石神井川①/荒川生態園 〔江戸川区〕葛西海浜公園/新左近川 〔大田区〕東京港野鳥公園/多摩川丸子橋/池上吞川・森ケ崎の鼻干潟 〔葛飾区〕水元公園 〔北区〕浮間公園/石神井川➁ 〔江東区〕旧中川➁ 〔品川区〕大井埠頭中央海浜公園 〔渋谷区〕明治神宮 〔新宿区〕新宿御苑/外濠 〔杉並区〕善福寺公園/神田川/和田堀公園 〔墨田区〕旧中川① 〔世田谷区〕多摩川二子玉川付近 〔台東区〕不忍池 〔千代田区〕皇居外苑濠/日比谷公園 〔豊島区〕神田川 〔中野区〕江古田の森公園/哲学堂公園/神田川 〔練馬区〕石神井公園/光が丘公園 〔文京区〕六義園/小石川後楽園 〔港区〕お台場/自然教育園 〔目黒区〕碑文谷公園/目黒川①/➁ 〔東京港〕中央防波堤埋立地

【 多摩区 】〔昭島市〕多摩川昭和堰/多摩川多摩大橋 〔あきる野市〕秋川山田橋 〔稲城市〕三沢川矢野口橋 〔青梅市〕釜の淵公園 〔奥多摩町〕奥多摩湖 〔清瀬市〕金山調節池 〔国立市〕多摩川石田橋 〔小金井市〕野川 〔国分寺市〕武蔵国分寺公園/日立中央研究所池 〔小平市〕上水公園 〔狛江市〕多摩川宿河原堰 〔立川市〕昭和記念公園 〔多摩市〕多摩川大栗川合流点 〔調布市〕多摩川上河原堰 〔西東京市〕いこいの森公園 〔八王子市〕浅川大和田橋/高月浄水場 〔羽村市〕多摩川羽村堰 〔東久留米市〕落合川 〔東村山市〕空堀川野口橋 〔東大和市〕多摩湖 〔日野市〕浅川多摩川合流点/東豊田緑地保全地域 〔日の出町〕平井川町役場前 〔檜原村〕秋川渓谷和田橋 〔府中市〕多摩川市域 〔福生市〕多摩川多摩橋 〔町田市〕薬師池公園 〔瑞穂町〕狭山池公園 〔三鷹市〕井の頭公園 〔武蔵村山市〕野山北公園       ※コロナ禍のため、荒川区・中央区・武蔵野市での調査は中止しました。    

                  〔日本野の会東京・研究部〕                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

2022年7月16日土曜日

繁殖期2022・大田区内でのオオタカの繁殖

  

 

大田区北部の公園では今年オオタカが初めて営巣し、3羽の幼鳥を無事に巣立たせることに成功しました。その過程を観察しましたので報告します。

3月下旬、オオタカのケッケッケッの声が頻繁に聞こえ、雌雄が公園内の松の枝で仲良く寄り添う姿が見られました。4月上~中旬には松の木の高所に作られた巣上に雌の尾羽が見え、また目障りなカラスを雄が激しく追い回すシーンもありました。4月下旬になると目立つ声や行動が少なくなり、カラスもおとなしくなりました。5月上旬には雌が巣の横で伸びや羽繕いをする姿が見られ、5月10日に巣の方向からピーピーという細い声が聞こえました。これはふ化したヒナの声だったようです。6月1日には初めてヒナの白い頭が巣上に見えました。給餌は順調に行なわれ、6月22日に2羽の幼鳥が巣から10mほど離れた松の木まで飛びました。巣にはまだ頭に白い毛の混じった3番目のヒナが残っていて、雌が給餌に飛んで来ました。発育の差が大きくて心配でしたが、6月29日には成長の遅かったヒナも巣から出て近くの枝に止まり、ピエーピエーとしきりに声を出していました【写真1】。そして7月5日、3羽の幼鳥が松の枝にそろって立っているのが見られました【写真2】。幼鳥はその後も親から給餌されたエサを地上で食べる姿などが観察されています。

 今年この公園でのオオタカの営巣には散歩の人やバードウォッチャーなどかなりの人たちが気づいていましたが、繁殖行動の邪魔になるような状況にはならず、3羽の無事な巣立ちにつながりました。来年以降も人と鳥の良好な関係を保っていきたいと思います。    〔川沢祥三〕    


2022年5月31日火曜日

文献紹介 報告書『中野区北東部の野鳥記録 2005年~2020年』(森の学級発行)

  

  中野区は、東京23区の西部に位置し、新宿や池袋といった副都心に近い都心部の区で、人口密度の高い地域のひとつです。武蔵野台地上に位置していますが、公園や緑地は少なく、一人当たりの公園面積は23区内で22位とされています。池といえる水辺はなく、荒川水系支流の神田川・妙正寺川などが流れています。 

今回紹介する報告書の活動の場は区の北東部にあり、中野区内で唯一まとまった森が残る地域で、調査の中心は「江古田の森公園」(国立療養所中野病院跡地)や「哲学堂公園」(東京都指定名勝)、「平和の森公園」(中野刑務所跡地)といった緑地です。

「森の学級」はこれらの地で1999年から活動をされ、今回、中野区の環境変化を知る一つの資料として本報告書が発行されました【表紙写真】。 この地では、2005年~2020年までの間に92種が記録されていて、優占度はヒヨドリ・カワラバト(ドバト)・ハシブトガラス・スズメ・メジロ・シジュウカラ・・・といった順で、東京都心部の鳥相を知ることができます。なかには、コノドジロムシクイやオジロビタキなどの珍しい鳥も記録されています。[ 2022年2月発行・A4判・44ページ] 

                         〔日本野鳥の会東京・研究部〕

2022年4月30日土曜日

東京都本土部の全区市町村で繁殖期調査「繁殖期2022」を実施します

  

 

この1月に実施した冬期の調査「越冬期2022」に続いて、5月~7月にかけて、今度はどんな鳥が繁殖期に生息しているのかという調査「繁殖期2022」を、東京都の本土部56自治体で行います。

“東京”というと、「高層ビル」ばかりの人工的な街と思われがちですが、東京湾岸には「浜辺」があり、中心部には明治神宮や自然教育園などの「緑地」が点在し、また「住宅地」が広がっています。郊外には緑豊かな「丘陵地」、そして2000mを越す「山」もそびえています。さらに、不忍池や井の頭池、多摩湖・奥多摩湖、そして多摩川・荒川という大河が流れ、「水辺」も多いという、バラエティに富んだ環境です。【写真・明治神宮北池で子育てするカイツブリ】

今回、野鳥観察のベテランたちがボランティアで、それぞれ担当の調査地を2回踏査して、野鳥たちの「繁殖」を中心に調べることになりました。その成果を今後ここでも紹介します。ご期待ください。                〔日本野鳥の会東京・研究部〕

                                  

2022年3月30日水曜日

ドバトとキジバトが同じ場所で採食・都市生態系の一員に

  

 
  人からの給餌で暮らしていたドバトが、キジバトと同じ場所で採食している光景を見ることが多くなりました。【写真  左がドバト・右がキジバト 江東区の猿江公園にて】

ドバトは漢字では堂鳩または土鳩と書き、カワラバト由来の伝書バトやレースバトなどが野良化したものやその子孫です。一方、キジバトは漢字では雉鳩と書き、山鳩の愛称もある純粋の野生種です。街なかで見かける「鳩」はこの2種のどちらかです。一般にドバトは公園や駅前、神社・お寺など、人が多いところに群れでたむろしているのを見かけることが多い鳥です。それはお年寄りや親子連れ、観光客などが与えるパンや菓子などを主食としているからです。キジバトの主食は草の実や木の実、地中の小動物で、地面を歩きながらひとつ一つ啄んでいます。その違いのため、この2種がいっしょに採餌している姿を見かけることは、かつては少なかったのですが、ここのところ、公園やグラウンド、草地などを歩いていてよく見かけるようになりました.

東京都では、2000年ごろから“鳩や水鳥に餌をやらないで!”というキャンペーンを強化しています。その結果、台東区の浅草寺境内では2000羽を数えていたドバトが数十羽に減り、池袋や渋谷の駅前でのドバトへの餌やりは見かけなくなりました。また、水鳥のユリカモメ(百合鴎)も川の上流まで群れで飛んできていたのが激減しています。

人からの給餌が少なくなったドバトは活路を求めて、キジバトの餌場に進出してきているというのが、この2種を同じ場所で見るようになった真相です。“野良鳩”として、厄介者とされてきたドバトですが、この変化を見ると、いよいよ都市生態系の一員として認識しなければならない時期になってきたようです。                                            〔川内 博〕

2022年3月15日火曜日

新しい展開を見せだした東京「池袋西口」のムクドリのねぐら・続報

  

   昨年12月15日付の本ブログで「“駅前ねぐら”ではないムクドリのねぐら・2」というタイトルで、東京・池袋西口公園の事例を紹介しました。その後月2回のペースで状況を追っていますので、そのようすを紹介します。 

池袋西口公園には「東京芸術劇場」という日本有数のクラシック音楽の殿堂がある場所ですので行かれた方は多いでしょう。ムクドリのねぐらはその建物から50mも離れていない車道内のクスノキの大木で、ムクドリたちは近くのビル屋上のTVアンテナに群れで止まり、明るさが10ルクス程度になってから、薄暗いなかで一気にねぐら入りをします。前報では100羽程度としましたが、その後200羽程度であることがわかりました。また、同じ木の下で越冬しているウグイス2羽もその姿を確認しました。

1月、2月とムクドリのねぐらは同じ状況が続きました。しかし3月11日には状況が変わっていました。ひとつは、ねぐらに入る前に止まっていたTVアンテナの周りに工事用の囲いができ、ムクドリたちは別々のビルの屋上に分散していました。もう一つは、ムクドリのねぐら入りがいつもと違って、クスノキに一気に飛び込むのではなく、周辺を何度も旋回しました。数も200羽をはるかに超えていました。規模は小さいながらも“夏ねぐら”のそれを思い出させるような動きでした。写真に撮って数を数えたら500羽前後とわかりました。そのためかねぐら入りしてからの鳴き騒ぎ声も、今まで5分でおさまっていたのに、10分と延びていました。さて、そうなるとここは“冬ねぐら”ではおさまらず、春からも“駅前ねぐら”が続く可能性が出てきました。 〔日本野鳥の会東京・研究部〕